シートン俗物記

非才無能の俗物オッサンが適当なことを書きます

孫正義さんに教えてあげたい自然エネルギー関連技術

前回の続きです。自然エネルギー開発を進めようという孫さんに敬意を表して、自然エネルギー関連技術で私が個人的に注目しているものを取り上げます。よかったら参考にしてね。

まず、自然エネルギーを使うにせよ、エネルギーを生む技術、効率的に使う技術、削減する技術、といろいろあります。最初は発電の技術から。

太陽光発電

太陽光発電は可動部分が無い、という点でメンテナンス性に優れてますが、効率が問題です。今後を考えるなら、効率向上とコスト削減は課題ですね。まずは効率向上の技術。
利用する太陽光の波長に合わせた太陽電池を積層する多接合(タンデム)型の研究です。


太陽電池セルで世界最高変換効率35.8%を達成
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/091022-a.html


太陽電池の世界記録を更新、集光型用でセル変換効率43.5%を達成
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1104/18/news108.html


効率が40%超というのは凄いですね。これは集光した場合ですけど。現在の効率から考えれば2倍以上です。


東大、量子ドット太陽電池の理論変換効率75%に
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0720110425eaao.html


これは理論的な変換効率ですが、半導体関係でいいのは理論的に可能なものはほぼ実現できる、ということ。ま、コストの点は判りませんが、そこは頑張ってもらいましょう。


表面入射光の反射削減には表面の屈折率が断続的に変化するのを防ぐのが有効です。そのための技術が表面微細加工。そのための技術がナノインプリントです。


ナノインプリント技術の最前線★徹底解説
http://www.electronicjournal.co.jp/t_seminar/802.html


太陽電池の効率を上げるため、配線の導電率を上げることも有効です。


第3回:「太陽電池」――グラフェンが変換効率大幅アップの切り札に《訂正あり》
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20110119/188843/

効率を上げて高価になった電池を安価に運用するにはどうしたらいいのか?集光型では高価な太陽電池が小面積でも発電量を増やすことが出来ます。


集光式太陽光発電システムの研究
http://www.daidometal.com/technology/solar.html


追尾式が複雑なシステムというなら、こういうのはどうでしょう?


太陽光利用技術
http://www.hikari-energy.jp/research/taiyoukou/taiyoukou.htm


非追尾型集光太陽電池モジュール用三次元レンズに関する研究
http://ci.nii.ac.jp/naid/10002018223


集光した場合、太陽電池が加熱されてしまいます。放熱が欠かせませんが、それを逆に利用する方法もあります。


寒冷地における太陽光/熱ハイブリッドパネルの. 集熱性能の向上に関する研究
http://www.crc.kitami-it.ac.jp/publication%20of%20Center/PDF/sasaki2.pdf


太陽光利用にはまだまだ判る範囲だけでも大きな可能性があります。「山手線の内側〜」とかいう連中は技術トレンドが全然判っていません。

風力発電

風力はどうでしょう。風力は世界的には最もリーズナブルな自然エネルギーだと云われています。
大型の方が効率がいいため、世界的には巨大な風車が増えています。


1基で7メガワットの発電量を誇る世界最大の風車「Enercon E-126」
http://gigazine.net/news/20080205_enercon_e126/


こんな巨大な風車、日本には置くところが無い?では、海の上ならいかが?


低動揺型洋上風力発電浮体を開発 〜東京大学との共同研究で動揺低減に成功〜
http://www.ihi.co.jp/ihi/press/2011/2011-4-19/index.html


大型の風力発電機には日本企業の技術がてんこ盛り。発電機で重要なのが増速機。そこには日本企業が大きな地位を占めています。


環境に貢献するエコ商品の開発 - NTN Corporation
http://www.ntn.co.jp/japan/investors/annual/pdf/2010/12.pdf


効率的な発電には頑丈で軽量で耐久性に優れた羽が必要。その素材の有力な候補としてCNT(カーボンナノチューブ)分散熱可塑性樹脂があります。


カーボンナノチューブ複合化による機能性高分子材料の開発
http://www.fitc.pref.fukuoka.jp/kenkyu/report/h16/h16-10.pdf


http://www.mech.titech.ac.jp/~seikei/.../ohtake.CNT2.html


さらには、CNTは導電性にも優れているので、もしかしたら銅に替わって導線として利用されるかもしれません。


「新たな素材開発の鍵となるカーボンナノチューブ
http://www.mcip.hokudai.ac.jp/TLO/pdf/11-02_hokudai01.pdf


蓄電材料としても大活躍。


カーボンナノチューブキャパシタ開発 プロジェクト」
http://www.nedo.go.jp/content/100096632.pdf


そのCNTを大量生産する研究も日本発です。


ナノチューブ応用研究センター スーパーグロースCNTチーム
http://www.nanocarbon.jp/

火力発電

火力だって無視することは出来ません。火力発電の最新型の効率は50%を越えます。実はこの点では東電は頑張っていたんですけどね。原子力なんてくだらないものはやめときゃよかったのに。


コンバインドサイクル(複合ガスタービン)型 コンバインドサイクル発電(CC発電)
http://www.tepco.co.jp/tp/howto_h/cc/index-j.html


石炭は確かに温暖化ガスを多量に排出しますが、石炭ガス化してコンバインドサイクル型で利用すれば、現状よりも温暖化ガス排出も抑える事が出来ます。


IGCC(石炭ガス化複合発電)の特徴
http://www.ccpower.co.jp/igcc/dimension.html


さらに効率を上げるための研究も進んでいます。燃焼温度が高いほど効率が上がるので、耐熱温度を上げたガスタービン用材料が開発されています。現在では1300℃ほどまで利用可能。さらに1700℃が視野に入っています。


Ni基耐熱超合金 1700℃ガスタービン
http://www.nims.go.jp/jpn/nimsnow/Vol09/No08/pageindices/index6.html


もっと効率を上げよう、という材料開発も。


「界面機能化に基づくMoSi2基Brittle/Brittle 複相単結晶超耐熱材料の開発」
http://imc.mtl.kyoto-u.ac.jp/ALCA.html


SOFC(固体酸化物型燃料電池)と組み合わせることの可能なマイクロガスタービン用のTiAl金属間化合物も開発されています。
SOFCの廃熱は1000℃近いため、ガスタービンと組み合わせることで、70%を越える発電効率が狙えます。


世界初!TiAl合金製精密鋳造部品
http://www.daido.co.jp/frontier/d37/37.html


ちなみに原子力は、蒸気タービンなので、こうした高効率にはなりえません。こうした技術も生かせない。

燃料電池

SOFC(固体酸化物型燃料電池)は面白いことになってきました。最新鋭火力発電所並みの発電効率を家庭サイズで実現。電気と併せて高温の湯も利用できるのが特徴です。


エネオスエネファーム(京セラ製)〜世界初となるSOFC型を10月に販売予定〜
http://www.noe.jx-group.co.jp/newsrelease/2010/20110224_01_0794529.html


えっ、もうできちゃったのかSOFC、となると燃料電池車の運命やいかに
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/TOPCOL/20110301/189987/


Solid Oxide Fuel Cells
http://www.bloomenergy.com/products/solid-oxide-fuel-cell/


これらはセル材料として実績のあるYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を利用していますが、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)や、より低温で高い酸素イオン伝導度を持つランタンガレート系、セリア系も研究が進んでいます。


マイクロチューブ型固体酸化物形燃料電池(SOFC)を集積したコンパクトで低温運転可能な燃料電池モジュールを開発
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2009/pr20090910_2/pr20090910_2.html


このジャンルでは日本の材料関係(特にセラミックス関係)は突出しています。優れた政策があれば、強力な産業に育つんですけどね。ここでも、海外(特にドイツ勢)が伸長してきています。

地熱発電

地熱も少し取り上げましょう。熱水や蒸気を汲み上げるのは環境的にも優れているとは言い難い。でも、大丈夫。ゼーベック素子(熱電変換素子)を利用する手があります。


工業排熱でエコ発電 〜熱電変換、車載や地熱向けも〜
http://www.osaka-sandai.ac.jp/cgi-bin/cms/media.cgi?page=top&media_cd=pr7tlUeCC5


熱電変換素子は効率が低いのが問題ですが、このへんも基礎的技術では結構良いものが登場しています。
   

−希少・毒性金属を含まない安価・簡便な熱電材料創製に新たな道−
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20101117/index.html

蓄電技術

電気を蓄える方も、自然エネルギーを利用するなら欠かせない技術ですね。その中でも蓄電能力の高いLiイオンバッテリーの究極型とも云えるのがこれ、


金属触媒を使わないグラフェン空気極を用いたリチウム-空気電池
http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20110426/nr20110426.html


溶媒や正極材、負極材の選択によっては、高価なリチウムより豊富で安価なナトリウムが利用できるかもしれません。


リチウムを超えるナトリウム2次電池住友電工が開発
http://eetimes.jp/ee/articles/1103/04/news120.html


世界初となる新型電池の開発に成功
http://www.sei.co.jp/news/press/11/prs894_s.html


ナトリウム電池なら大型の蓄電設備に利用されるNaS電池もあります。


NAS電池 日本ガイシ
http://www.ngk.co.jp/product/insulator/nas/index.html


先に述べたCNTキャパシタも、急速充放電が可能という特徴があります。キャパシタ*1は高出力の電池と組み合わせて利用されるでしょう。
物理的にエネルギーを蓄える方法もあります。


ハイブリッド形発電貯蔵システム
http://www.nipponflywheel.jp/nature/


この方法、結構単純な構成で効果的だと思います。他にも高圧空気を蓄えるとか、ゼンマイの高性能版とか、いろいろ思いつく事があるかも。

省エネルギー技術

ちょっと省エネルギー関係も書いておきましょうか。一般家庭やオフィスでの電気需要の大半が空調ですが、その空調の効率を上げようと思ったら、建物の断熱は欠かせない。そこで、こんな断熱材も登場。


家電-現代家電の基礎用語--第42回:断熱材とは
http://kaden.watch.impress.co.jp/docs/word/20090410_110534.html


クラボウ | 住宅建材分野 > 真空断熱(VIP) > クランパック[ウレタン芯材]
http://www.kurabo.co.jp/division/chem/zyu06/clanpack.html


1m2当たり3000円の真空断熱材|日経BP社 ケンプラッツ
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20100618/541856/


壁に比べて、さらに熱を逃しやすい窓ガラスにもこんなものが。


真空ガラス スペーシア
http://shinku-glass.jp/


NEDOのプロジェクト研究にも、こうした研究がありました。


マルチセラミックス構造を用いた超断熱材料の開発
http://www.jfcc.or.jp/25_press/r10_4.html


空調だけでなく、照明だってこのとおり。


3M^(TM) 太陽光採光システム、ビジネス活動を本格化 演色性に優れた独自の高性能反射材を利用
http://www.mmm.co.jp/news/2011/info/20110303.html


こうしたシステムを応用することで、動力を使わず自然の風光だけで快適な住環境を得るのがパッシブ(受動的空調)住宅と呼ばれます。


パッシブ住宅・建築シンポジウム2011
http://special.nikkeibp.co.jp/ts/article/aa0c/108540/


自然環境を無視して機械力に頼るのではなく、自然環境の原理を理解し、その流れを巧く利用してやる事、それが今後の生き方の基本となるでしょう。


参考:パーマカルチャーとは
http://www.pccj.net/aboutpc/aboutpc/


Holmgren Design Serveces
http://www.holmgren.com.au/


Centre for Alternative Technology
http://www.cat.org.uk/


では。

*1:電極間誘電体の分極を利用して電荷を蓄えるのをキャパシタと呼ぶが、日本では小型ものをコンデンサ、大型のものをキャパシタと区別している