iPhoneを「脱獄」させるためにiOSが抱えるゼロデイ脆弱性を使用していることは、すべてのiOSデバイスが危険にさらされていることを意味する。この脆弱性を介した攻撃が起きる可能性は高いため、一問一答方式で問題を整理してみた。
Q これはいったいどういうことなのか?
A 訪問するだけで、iPhoneやiPadのJailbreak(脱獄)が行える、「jailbreakme.com」という名のサイトに関する問題だ。
Q 問題は何なのか?
A 問題は、同サイトがデバイス上でコードを実行するために、ゼロデイ脆弱性を使用していることにある。
Q その脆弱性はどのように機能するのか?
A 実際のところこれは2つの脆弱性だ。第1の脆弱性は、PDFファイルに埋め込まれた破損したフォントを使用してコードを実行するもので、第2のものはカーネルにある脆弱性を試用して、サンドボックスされていないルートにコードの実行を拡大する。
Q このエクスプロイトを作成するのは、どの程度難しかったのか?
A 非常に難しい。
Q 現在流布している同エクスプロイトを誰かが修正するのは、どの程度難しいのだろうか?
A かなり簡単だ。
Q これは責任ある開示ではなかったのか。
A その通りだ。Appleは同脆弱性について知らされていなかった。
Q このエクスプロイトを作成したのは誰か?
A 「jailbreakme.com」のクレジットは以下の通りだ:「Jailbreak by comex, Website by westbaer and chpwn. Special thanks go out to BigBoss, chronic, DHowett, MuscleNerd, planetbeing, posixninja, and saurik.」
Q ではこれはiPhoneの問題なのか?
A いや、これはiOSの問題だ。すなわち、これはiPhone、iPadおよびiPodに影響する。
Q iPodも?
A そう、iPod touchは影響を受ける。iPhoneのように見えるiPodだ。
Q iPhone、iPad、iPod touchのどのバージョンが影響を受けるのか?
A すべてだ。
Q では、これは世界中のiPhoneユーザーに影響を与えるのか?
A その通りだ。
Q でも、JailbreakしたiPhoneのみが危険にさらされているのかと思っていたのだが。
A あなたは混乱している。ごく普通のiPhoneを含め、すべてのiOSデバイスが危険にさらされているのだ。
Q パッチは入手できるのか?
A いいえ。
Q えっ。ではパッチは公開されるのか?
A Appleが、できる限りすぐに公開することが期待されている。
Q それは確認されているのか?
A 確認されている。Appleは2つの理由で、パッチを当てることを望んでいる。1つは、人々が自分のデバイスをJailbreakしないようにするため、そしてもう1つはカスタマーを潜在的な攻撃から守るためだ。
Q PDF脆弱性はAdobe PDF Readerに影響するか?
A いや。Windowsやほかのプラットフォーム上のAdobe PDF Readerは、この脆弱性から影響を受けることはない。
Q わたしのiPhoneのPDFリーダーはAdobe製のものか?
A いや、これはApple製だ。そして独立したReaderアプリケーションはなく、PDFサポートはOSに組み込まれている。
Q AppleとAdobeの戦い(Flashに関する)を考えると、これは少々皮肉な事態ではないだろうか?
A ええ。
Q ほかのアプリケーションは脆弱か?
A Foxit Readerの幾つかのバージョンとFreeType2ライブラリにその可能性がある。ここを参照してほしい。
Q いままでに、この脆弱性を使用した悪意ある攻撃をどれくらい目撃したか?
A ゼロだ。
Q ということは、危険はない?
A 現時点では危険はない。しかし、危険の可能性は大きい。
Q この脆弱性を介して、iPhoneワームが広がることになるのは、いつごろだと予測しているか?
A 1、2週間以内だろう。
Q このようなワームがわたしの電話に侵入するとしたら、どのような方法だろうか?
A デバイスに悪意あるPDFファイルを開かせることが可能な、あらゆるメカニズムを通じてだ。われわれは先日の記事で例を挙げている。
Q では、悪意あるWebページも原因となり得るのか?
A そうだ。あるいはメールの悪意あるPDF添付ファイル。Webリンクを含むテキストメッセージも。またTwitterやFacebookフィードのリンクなど、iPhoneでリンクをクリックすればそうなる。
Q MMSメッセージを介して侵入する可能性は?
A ありがたいことにノーだ。PDF添付ファイルは、iPhone MMSメッセージでは機能しないためだ。これは、非互換によるセキュリティとしても知られている。
Q このようなワームは、どのように複製されていくのか?
A 例えば、あなたの電話から、電話帳に記載されている全員あてに、それ自身をテキストメッセージとして送信することで、さらに複製されることになる。
Q このようなワームはわたしの電話で何をするのか?
A 何でもだ。このワームは、皆さんが自分の電話でできることは何でも実行できる。だから、電話上の全データを破壊したり、盗んだりできる。あなたの居場所を追跡することも。あなたの友人にスパムを送信することも。電話での会話を聞くことも。世界中のすべての国々の大統領に電話することも。何でもだ。そして、皆さんは発生するすべての料金を支払うことにもなる。
Q では、iPhoneユーザーが身を守るためにすべきことは?
A 慎重になることだ。そして公開されたらすぐに、パッチをインストールすること。
Q iPhone上でアンチウイルスソフトを動作させるべきだろうか?
A そうすべきだ。しかしそうすることはできない。
Q できない? 何故できないのか?
A なぜなら、iPhone用のアンチウイルスプログラムは存在しないからだ。
Q 何だって?
A iPhone用のアンチウイルスは存在しない。どのベンダーからも入手できない。
Q 何故?
A われわれはAppleの援助なしには、アンチウイルスを製作できないからだ。
Q ほかにできることはあるだろうか?
A もしあなたのiPhoneがJailbreakされているなら、Chronic Dev Teamが製作した「PDF Loading Warner」アプリをインストールすることを考慮することも可能だ。われわれは同ツールを推奨してはいないが、助けにはなるだろう。
Q そのツールはどのようなものか?
A 同ツールは、WebページがPDFファイルをロードしようとするたびに、有害か否かを警告する。
Q 「PDF Loading Warner」アプリはどこで入手できるのか?
A ここを参照してほしい。
Q つまり、わたしの電話をJailbreakし、PDF Warnerをインストールする方が、より安全だということだろうか?
A そう、言ってみればそうだ。
Q でも、Jailbreakすると、わたしの電話をほかのセキュリティ上の危険にさらすことにならないのか?
A そう、そういうことになる。われわれはいかなる理由であれ、自分たちのデバイスをJailbreakすることを推奨しない。例えば、これまでにわれわれが目撃した唯一のiPhoneワームは、Jailbreakしたデバイスにのみ感染した。これらは、SSHサーバをインストールする必要があり、デバイスの持ち主がルートパスワードを変更していないと仮定する必要があったのだが。
Q ではあなたはわたしのiPhoneのルートパスワードを知っているのか?
A もしあなたが変更していないのなら、それは「alpine」だ。
Q ということは、変更した方がよいのだろうか?
A そうだ。これはjailbreakme脆弱性とは関係ないのだが。やり方は、2009年の記事を参照してほしい。
Q ほかに何かできることはあるだろうか?
A ニュースに注意することだ。この脆弱性を介した攻撃が起きた場合には、われわれは皆さんに、防御のためのより具体的なインストラクションを提示することができるだろう。「News from the Lab」ブログおよびわれわれのTwitterフィードに注目していてほしい。
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