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精神科医師のブログ。
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胃ろうの適応とアドバンストディレクティブ

2011年11月18日 | Weblog

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胃ろう造設、医療従事者の影響大きく- 全国老施協が特養入所者調査(キャリアブレイン)


「特別養護老人ホームにおける胃ろう等による経管栄養に関する実態調査」は今年7-8月、全国の特養2000施設を対象に実施。回答があった1230施設で胃ろうを造設している入所者7005人の状況を分析した。対象者の平均年齢は85.1歳、平均要介護度は4.8だった。

 調査結果によると、胃ろうを造設する際に最も影響を与えた要因を尋ねた設問では、「医療従事者からの説明」の37.8%と、「家族の希望」の34.2%が上位を占め、これに「施設からの説明」の2.5%などが続いた=グラフ=。「本人の希望」で胃ろうの造設に踏み切っていたケースは0.3%だった。

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胃ろうの適応についてはいつも悩みますね。
可逆的な病態か、本人の意向(確認できれば)、周囲の人、特に家族の意向や状況などを鑑みながら悩みつつ複数の選択肢を提示して、本人、家族とともに決めていくというのが現状です。


この調査では病態がどうなのかが含まれていません。
とくに可逆的な病態なのか、どのくらいなら食べられるのかなどの評価が大切なのですが・・。
病態の判断については主に医師の仕事となりますがこれを丁寧にきちんとできる人は少ないと思います。
言語聴覚士や栄養士、歯科衛生士、歯科医師、リハビリ科医師などなどと連携しながら評価をおこなうことが必要です。
また、経口摂取への試みは胃ろう増設前でも胃ろう増設後でも続けられることも前提だと思います。

これらのことはどうであったのかも調査に入れてほしかったと思います。

本人の希望での増設は(自分も経験ありますが)0.3%とのことですが、調査対象者は意思表示ができない状態の人たちなのでしょうか。
本人の意思表示が得られ、希望が得られれば絶対適応なことには誰も異論はないと思います。

問題は本人の希望が分からない時です。
胃ろうなどのバイパス栄養などの延命処置をやれるのにやらないということは理屈上呼吸器はずしと同じことになり、「消極的安楽死」にあたります。
医療従事者は「殺人罪」に問われる可能性があります。

いまのところ医療者を守ってくれる法律はありません。

本人、医療者、家族を守るためにオーストラリアでは、50歳を過ぎたら、①遺言、②代理人、③後見人、④アドバンス・ディレクティブ(事前指示書)を用意することが推奨されているそうです。
日本でもこういうことも必要なのではないかとも思います。
自分が認知症などをテーマに講演する機会をいただいた際にはこの話題にも触れるようにしています。

食べることと生きること。

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