【ねこまたぎ通信】

Σ(゜◇゜;)  たちぶく~~ Σ(゜◇゜;)

 特許強制使用許諾問題

どこもかしこも貧乏人から金をむしり取ることしか考えていない.欧米のためのグローバリズムなど糞喰らえであって,まったく別個の市場経済を創出するという点で先頃世銀とIMF*1からの脱退を宣言したチャベス*2を私は支持する.
この問題だってそう.

クリントン元米大統領、タイの特許強制使用許諾を支持

http://thaina.seesaa.net/article/41277226.html


現在アメリカ訪問中のモンコン公共保健大臣は9日朝ch3で放送された番組の中で行われた電話インタビューの中で、ビル・クリントン財団を主催するクリント元米大統領と面会した際に、同氏の口からタイが特許強制使用許諾(CL)を行使してアメリカの民間会社が特許権を持つエイズ治療薬や心臓病治療薬の製造に乗り出す方針を決定した事に対して支持と必要な支援を提供する意向が語られ、その後共同で公式記者発表が行われた事を明らかにしました。
モンコン公共保健大臣によると、仮にCLを行使しタイ国内で治療薬の製造に乗り出した場合、製造開始から2-3ヶ月以内に現行より50%以下の薬価で必要とする患者に良質な治療薬を提供する事ができる見通しであるとのこと。

確認参照:
キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!! - 【ねこまたぎ通信】
国境なき医師団「特許より患者優先を」 - 【ねこまたぎ通信】


知的財産権・医薬品アクセス : グローバル・エイズ・アップデート
TRIPS 協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)と医薬品アクセス
医薬品アクセス問題
http://www.msf.or.jp/2002/10/20/5047/post.php
http://www.msf.or.jp/news/essential5.html
API-Net エイズ予防情報ネット | 404 File Not Found「URLで指定されたファイルまたはディレクトリが存在しません」
WTO・TRIPS協定に関する最近の議論 | 経済産業省 特許庁
治療薬開発の新たな方向
DNDi - Drugs for Neglected Diseases initiative - DNDi

現代の強制実施権問題

http://www.oit.ac.jp/ip/ishii/MEMO/index8f.htm


アフリカにおけるHIVエイズの問題は深刻であるらしい.部落全部が無人となってしまったり、国全体のエイズ患者比率が30%を越えたりしているという報道を目にする.不治の病であるとして深刻に問題視されたエイズ疾患であるが、最近ではかなり有力な医薬も開発され、米国あたりではその死亡率も急速に低下しつつあるようだ.そうなるとその医薬を入手できるか否かが問題となる.残念であるがアフリカに輸入されるエイズ特効薬の価格は高く、とうてい貧しいエイズ患者には届かない.なぜエイズ特効薬が高価であるかといえば、そこに特許権の存在がある。
数年前に米国シアトルでWTO閣僚会議が開催された時、WTOに象徴されるグローバリゼーションに反対する大暴動が発生した.この時のデモ隊のスローガンの中に医薬特許反対、というのがあったと聞く.
このシアトルの暴動は関係者に大きなショックを与えた.これを受けて2001年の11月にドーハで開催されたWTO閣僚会議では「TRIPS条約と公衆衛生に関する宣言」がまとめられた。貧しい発展途上国における医薬と特許の問題を正面から取り上げた閣僚宣言であって、今後に与えるインパクトはまことに大きい.
閣僚宣言では全部で7項目が述べられている.まず?貧しい発展途上国におけるエイズHIV結核マラリアなど伝染病の深刻な問題をWTO閣僚会議は認識していること、次いで?TRIPS条約はこうした問題の解決に対応していくべきこと、その場合に、?知的財産の保護が新医薬の開発に重要であって、他方、知的財産の保護が価格に関連していることを閣僚会議は認識していることを明らかにしている.
こうした認識の上で、?閣僚会議はTRIPS条約がWTOメンバー国の公衆衛生の問題解決を阻害しないことに同意すること、そして?TRIPS条約は各メンバー国において一定の条件で強制実施権を設定することが可能なこと、その条件としてエイズHIV結核マラリアなどの伝染病による公衆衛生の危機が含まれること。その場合に?医薬産業が不充分かあるいは存在しない場合に強制実施権を有効に機能させる方法はTRIPSの委員会にその検討を委ね、2002年末までにその報告を求めること、最後に?TRIPS条約に規定されるとおり、発展途上国への技術移転を推進していくこと.
現在、この宣言のうちの第?項にある医薬産業が不充分かあるいは存在しない場合の強制実施権を有効に機能させる方法が検討され、各国から様々な提案・意見が提出されている.現行のTRIPS条約においては強制実施権の制度が取りこまれている.
TRIPS条約の第30条が特許権の排他権例外の規定である。すなわち「加盟国は、第三者の正当な利益を考慮し、特許により与えられる排他的権利について限定的な例外を定めることができる.ただし、特許の通常の実施を不当に妨げず、かつ、特許権者の正当な利益を不当に害さないことを条件とする」。
そして次の第31条で強制実施権が規定されている。「加盟国の国内法令により、特許権者の許諾を得ていない特許の対象の他の使用を認める場合には、次の規定を尊重する」として、例えば「他の使用は、他の使用に先立ち、使用者となろうとする者が合理的な商業上の条件の下で特許権者から許諾を得る努力を行って、合理的な期間内にその努力が成功しなかった場合に限り、認めることができる」とし、その例外として「加盟国は、国家緊急自体その他の極度の緊急事態の場合又は公的な非商業的使用の場合には、そのような要求を免除することができる」としている。
閣僚宣言のポイントはTRIPS第31条の(b)「加盟国は、国家緊急自体その他の極度の緊急自体の場合又は公的な非商業的使用の場合には、そのような要件を免除することができる」という規定を、エイズHIV等の病気の蔓延とそれに対する医薬特許のような場合に適用することを確認したところにある.
誰が考えてみてもエイズの問題はアフリカで深刻であって、この問題からみて国家緊急自体とすることは異存はないに違いない.ところがもう一つのポイントがあった。第31条の(f)である。(f)は「他の使用は、主として当該他の使用を許諾する加盟国の国内市場への供給のために許諾される」という規定であった.表現がいかにも難解なのであるが、要するに医薬特許などを強制的に特許権者以外の者に使用許諾する場合、特許権者以外の使用はあくまでもその者の国内市場への供給に限られるというものである.
特許の長い歴史の中で強制実施権の設定という場合、ある特定の国において特許権者は外国にあり、その国内の者がその特許権の使用を強く望み、その要請が一定の法的要件を満たした時に、強制実施権が設定され、その使用によりその特定国の市場需要を満たす、というものが通常であった.
問題はアフリカにおけるエイズHIV問題においては、アフリカの多くの国では医薬産業はほとんど無く、自らその特許権の使用をすることはできないこと、結局、他の国においてエイズ医薬の特許の使用を認めてもらい、その生産した医薬を安価に輸入するより他にない.しかしこうした特許使用までもTRIPS第31条は認めているか、といえば簡単に答えられない.
まさにこれがドーハにおける閣僚会議の最大の議論であって、その結果が前回にみた宣言の第6項に結実したということとなる.医薬産業の無い国などでは、強制実施権によって設定された特許の医薬品を外国で生産し、それを輸入するというところまで認めようというものである.そしてその具体的なルールは2002年中に決めるというものであった.
ここでモデルを用意しよう.A国のA企業,B国,C国のC企業がある。A企業はエイズ特効薬を開発した企業で各国に特許権を保有する.B国は極貧発展途上国エイズが蔓延している.C企業はC国にありAが開発したエイズ特効薬を生産でき、B国に輸出を希望している.
まずB国であるが、ここにおいてA企業が特許権を保有するエイズ特効薬の輸入は問題が無いことは明らかである.それというのも世界に49ある極貧発展途上国においてはTRIPS条約の医薬特許の義務を2006年まで猶予されていたし、さらに10年間、2016年まで猶予されている。したがってそもそもアフリカなど極貧発展途上国ではエイズ特効薬の特許が存在しないである.
問題はこのエイズ特効薬を生産し輸出するC国のC企業である.エイズ特効薬の開発者で特許権者であるA企業からすれば、C企業が安価で大量に特許された医薬品を市場に提供されるのは困るに違いない.
なにより現在のTRIPS条約、なかでも31条(f)の規定を前提として、こうしたC国のC企業の行為をどのように認めるかである.既に発展途上国からはTRIPSの事務局に、現行のTRIPS条約第31条は全面的に改正を必要とすること、少なくとも(f)項は削除を必要とする、と言う提案がされている.
果たして極貧途上国向け医薬産業が国際的に成立し、強制実施権の利益を享受しつつ、安価な特許医薬を生産し、輸出すると言う図式が現実化するものか、なおみていかなければならない.

いかに無視するかが問題であるわけです.無視すれば当然報復があるので,欧米による制裁を忌避し,新自由主義経済から脱却する枠組みをどうやって作るかそこが問題なのだな.
もう譲歩する必要はない.どうせ暴力でしか対抗できない野蛮人たち*3とは仲良くしなくてもいいのよ.搾取される側は資源に満ちあふれているんだし.


世界の貿易にひと言


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