アニメや漫画のバトルロイヤルを考える - たまには卑怯な主人公がいてもいいじゃない!

 

 
今期のアニメは、魔法少女まどか☆マギカがえらい話題になっているようで。
自分も勿論、観ているんですが、それにしたって気になるのは今後の展開。ネットやtwitterでのレビューや感想を見ていると、このまま魔法少女同志のバトルロイヤル的な展開になるのではないか? という予想が多く出ているようですね。
  
自分の認識では、ライダー同士の潰し合い、殺し合いを描いた仮面ライダー龍騎以降にアニメや漫画で頻繁に目にするようになった気がする、この「バトルロイヤル」という概念とシチュエーション。コレがですね、昔から色々と思うところがあったんですよ。
 
なもんで、今回はアニメや漫画に出てくる「バトルロイヤル」に対する私見をアレやコレやと書いてみたいと思います!
 
 

■そもそも、「バトルロイヤル」とは何か?

先ず、初めに「バトルロイヤル」とは一体何ぞや? という話から始めてみたいと思います。そもそものこの言葉の出自自体までは、ちょっと分からないのですが、大のプロレスファンである自分にとって、「バトルロイヤル」といえば真っ先に思い浮かぶのは、やっぱりプロレス。四角いリングの上で、屈強なプロレスラーが多数入り乱れて争っている光景だったりします。
  
■Wikipedia - バトルロイヤル
 
Wikipediaの項目を見てみても、見出しに「バトルロイヤル(Battle Royal)とは、プロレスなどで見られる試合形式の1つ。」と書いてあります。これなんかを見てみても、やはり「『バトルロイヤル』という言葉が使われるメインのフィールドはプロレス」というイメージが、割と大多数の人の中で共有されていることが分かりますね。
そして、そんな「バトルロイヤル」の概要は、物凄く簡潔に言って、以下のようにまとめられると思います。
 

1.一度に沢山のファイターが出てきて戦う
2.自分以外のファイターは全員敵
3.最後まで生き残ったファイターが勝者となる

 
改めて、こうやって整理して考えてみると、ルールは恐ろしいくらい単純明快でシンプル。ワンマッチの連続であるリーグ戦やトーナメント戦とは違い、参加者が一度に試合に行い、たった一人の勝者を決める特別な試合形式、それが「バトルロイヤル」。最後に残った者は、ウィナーでありサヴァイヴァー
競技性と共に、エンターテインメント性も強く感じる試合形式ですよね。「周りは全て敵、勝者はたった一人だけ」というシビアな条件に加えて、ショー的な要素も多分に孕んでいる、そんな希少性のある特別な存在なんでしょう。
 
さて、そんなバトルロイヤルではありますが、もうちょっと細かく分類することが可能です。具体的に言うと、参加者が試合に入るタイミング。一度に全員が試合を始める場合と、参加者が一定の間隔を置いて時間差で登場する場合、二種類のスタイルに分けることができると思うんです。
これまたプロレスの文脈の上で、もう少しデティールをハッキリさせておくと、後者は「時間差バトルロイヤル」というのが正しい名称にあたると思います。
そして、この時間差バトルロイヤルという試合形式で、最も有名かつ長い歴史を持つイベントが、アメリカの世界最大手のプロレス団体WWEが行っているロイヤルランブルです。
 
 

ロイヤルランブルとは何か? - そのルールと醍醐味

ロイヤルランブルは、WWEが年に一度行う大規模なバトルロイヤルのイベント。先ず、2人の選手がリングに上がって試合を始め、以降は60秒が経過するごとに選手が一人づつリングインし試合に参加、最終的に30人以上の選手がリングの中で試合を行い、最後に生き残った、たった一人のプロレスラーが優勝者となるというイベントです。
この辺は、仮面ライダー龍騎」のライダーバトルローゼンメイデン」のアリスゲームなんかと同じですよね。アレだって、バトルロイヤルに参戦する仮面ライダーローゼンメイデンが全員揃った上で「いっせ〜の!」で一度にドンパチを始めるわけではない。その戦いの場に、他の参加者が一人ずつ登場をしてくる、時間差を置いた「時間差バトルロイヤル」「ロイヤルランブル」なんですよ。
 

 
余談ですが、アニメ化もされた小林尽先生のSchool Rumbleのタイトルもこの「ロイヤルランブル」から取られている。登場人物が次々に登場し、複雑に絡み合う恋愛模様の中で、最終的に一組のカップルが生き残る。一遍に全選手が登場する「バトルロイヤル」じゃないんですよね。徐々に、キャラクターが出てくるから「ロイヤルランブル」に倣って「School Rumble。大のプロレスファンである小林先生らしい目線とこだわりが見えるネーミングセンスです。
 
閑話休題。では、そんなロイヤルランブル(時間差バトルロイヤル)のおもしろさのポイントはどこにあるかと言うと、ズバリ言ってそのゲーム性の高さです。
一対一の個人戦あるいは団体戦ではなく、沢山の選手と一度に戦わなければならないわけですから、当然「実力=勝利」とはならない。むしろ、実力者は他の参加者にマークされ、袋叩きに会い早々と退場してしまうなんてことが、このイベントの中では頻繁にあります。
 
ですが、逆を言えば弱い選手でも戦略的なプランを練る知力と運があれば、勝ち残るチャンスがあるということです。
 
他の参加者と共闘をして、自分よりも格上の選手を排除した後に、共闘した相手を即裏切る。リングインしても、ひたすら逃げ回り続け、頭数が減ってきたところでようやく試合に参加する。言ってしまえば、「ズルい」「セコい」方法を使って生き残ろう、優勝しようという選手が毎年必ず出てきます。
でも、この手の時間差バトルロイヤルって、それが許される試合形式だし、そういう参加者同士の駆け引きが最大の醍醐味なんです。
 


 
例えば、昨年行われたロイヤルランブルでは、怪我による長期欠場の為に、当初は参加者のリストにすら入っていなかったエッジが、このロイヤルランブルの最中に突如乱入&復帰。他のレスラーを次々と失格に追い込み、最終的には勝ち残って優勝。コレで勢いをつけたエッジは、そのまま王座を狙うトップ・コンテンダーとなり、現在ではWWEのチャンピオンベルトを腰に巻く王者となっています。
 

昨年のロイヤルランブルで、「時間差バトルロイヤル」という試合形式のルールを最大限に活かし、インパクト抜群の復帰と優勝を果たしたエッジ。
 
決して正攻法じゃなくても勝てる。そして、ゲーム性の強いルールの中で、勝つための戦略を練るセンスも重用視される。それが、こういう時間差バトルロイヤル…ロイヤルランブルの魅力なんです。
 
 

■アニメ、漫画における時間差バトルロイヤル


 
ここでようやく話は、「仮面ライダー龍騎」や「ローゼンメイデン」あるいは「未来日記」といった時間差バトルロイヤルを描いたアニメや漫画(「魔法少女まどか☆マギカ」も、これからそうなるんでしょうかね…)に戻るんですが、こういった作品だと多くの場合は正攻法の戦い方を貫く主人公像が描かれますよね。
 
つまり、自分以外は全員が敵という過酷な状況の中、襲いかかってくる敵と次々に戦う。時間差バトルロイヤルという形式をとってはいますが、その設定は前述したプロレスの世界におけるゲーム性、戦略性とはまた違った…仮面ライダーやドールや魔法少女が殺し合いをするというショッキングなシチュエーションと戦いの激しさを演出するためにそのパワーが向けられているように思います。
 
そもそも、この手のバトルロイヤルって、理屈としては一番最初に入場してきた選手が一番不利なんです。当たり前ですが、体力的な部分もそうですし、より多くの敵を戦わなければならなくなる。ですから、バトルロイヤルものの漫画やアニメの主人公って、物凄く不利なんですよ。だって、主人公は最初から出ずっぱりなんだから。
でも、他の参戦選手に比べて不利な状況にあっても、仮面ライダー龍騎も真紅も、正義とか仲間とか…それぞれのモチベーションを胸に、最初から最後まで次々に襲い掛かってくる敵と戦い続けます。その姿っていうのは、勿論カッコいいです。熱くなれるし、感動もします。
でも、ロイヤルランブルや時間差バトルロイヤルを見続けてきたプロレスファンの自分は、同時にこんなことも思うんです。
 
時間差バトルロイヤルのゲーム性や戦略性を全面に出した作品や、卑怯な手を使ってでも生き残ろうとする策略家の主人公がいてもいいんじゃないかなって。
 
勿論、プロレスとアニメ、漫画は(似ているところもありますが)異なるジャンルなので、同じ物差しで物事を語るのはおかしな話ですし、コレって「あはは、仮面ライダーは真正面から怪人とぶつかってばかりで馬鹿だなぁ。遠くからミサイルとか打ち込んでやっつけちゃえばいいのに」みたいな無粋な意見だっていうのも理解しているつもりなんですが、アニメや漫画に出てくるバトルロイヤルって割とシチュエーション先行のイメージがありまして、本来の醍醐味であるゲーム性、戦略性のエッセンスっていうのをもっと加えてもいいんじゃないかなぁ〜なんて昔からずっと思っていたんです。
 
前述したように、裏切りとか、ひたすら逃げまくってチャンスを窺うとか、そういう狡賢い主人公を使って、バトルロイヤルの持ち味である戦略性を描く作品がたまにはあってもいいと思うんです。全部が全部そんな感じじゃ流石に困りものですが、「たまには」位の頻度と感覚で、そういうのを観てみたい、読んでみたいと私は思います。
「バトルロイヤル」のルールを逆手にとって暗躍するダークヒーロー。そんな想像力があっても許されると思うんですよね。だって、おもしろいんですもの。悪知恵や運も勝敗を分ける重要な要素になるうるバトルロイヤルって試合形式は。その中で、もっと色々なタイプの主人公像が表現されても、おもしろいと思うんです。
 
 

■まとめ

「バトルロイヤル」とは何か? 「ロイヤルランブル」とは何か? そして、そんなバトルロイヤルを描いたアニメや漫画の中で、自分が観たいドラマとは何か? なんてことについて色々と。
 
最後に、再び「魔法少女まどか☆マギカ」の話に戻るんですが、このまま大方の予想通り、魔法少女同士の殺し合い、バトルロイヤル的な展開になったとして、気になるのが主人公のまどかがいつ変身をするのか、ということ。自分なんかは、この辺に物凄く興味のウェイトを置いて観ているんですよね。時間差バトルロイヤルの入場順が一番最初じゃない主人公なんて、それだけでも珍しいですからね。
作品のテーマとかは別の次元で、単純な興味として、その「勝敗」の結果は気になり過ぎます!
 
 
 
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