ポスティングシステム(入札制度)を利用し、米メジャー入りを目指していた楽天岩隈久志投手(29)の来季の残留が22日、確実となった。独占交渉権を得たアスレチックスと岩隈側との交渉は同日までに不調に終わった。ア軍との独占交渉期間は日本時間の12月8日午後2時までだが、今後、両者が再交渉する可能性は極めて低くなった。岩隈は仙台市内で「完全に決まってないと思う。僕自身は、お金の問題じゃない」と戸惑いの表情。夢のメジャーへと向かっていた日本のエースは、入札制度に翻弄(ほんろう)された。

 いつもの穏やかな顔と口ぶりの中に、やるせなさがありありとにじんだ。独占交渉期間を2週間以上も残し、アスレチックスとの交渉が暗礁に乗り上げた。Kスタ宮城でトレーニングを終えた岩隈は、置かれた現実について胸の内を吐いた。

 岩隈

 考えられないことだけど…。ビジネス的なことは代理人に任せている。自分が交渉に入っているわけじゃないんで、何とも言えません。

 メジャーへのあこがれを球団に訴え、配慮と理解をもらい、1日の入札解禁日に申請してもらった。日本一の制球力を誇る右腕に見合う金額で入札は来た。球団は快く受諾し独占交渉期間がスタート。だが順調に踏んできたメジャー移籍への道程は、突如として崩れた。ふたを開ければ、「交渉」とは言い難いア軍の強固な態度があった。

 あえて入札制度を利用してまでメジャーに思いをはせた。厳然とした矜持(きょうじ)が岩隈の中にはあった。

 岩隈

 僕自身は、お金の問題じゃないです。(ア軍との交渉が)これで終わってしまうなら、必要とされていないのかと思ってしまう。

 交渉するために大金を投じた球団が、交渉テーブルでは一転してシビアな姿勢を打ち出す。ポスティングシステムの持つ矛盾が、さまざま憶測を呼び、同時に岩隈の純粋な気持ちを踏みにじった。ア軍との交渉期間は十分残っているが、期待が大きかった分だけ喪失感も大きかった。代理人の団野村氏に、交渉再開を強く訴えるアクションを起こす可能性は極めて低い。

 周囲には楽天残留の意向を漏らしている。近日中に球団幹部と話し合いを持ち経緯を説明する。来季も楽天のエースとして腕を振るい、自由に球団と契約できる1年後の海外FAを待つ。【宮下敬至】