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Lancet誌から
AD/HDの約半数は食物誘発性か、除去食で症状が軽減

 摂取する食品の種類を減らし、アレルギー誘発性の低い食物を選んで与える除去食が、小児注意欠損/多動性障害AD/HD)患者の64%の症状を有意に軽減するという研究結果が、Lancet誌2011年2月5日号に掲載された。

 欧米には、10年以上前から、食物は小児の湿疹や喘息、消化管症状を誘発するだけでなく、脳にも影響を与えて行動を変化させるのではないか、と考える研究者が存在する。AD/HDについても、除去食の有効性を調べる研究が行われてきた。

 今回の論文の著者であるオランダAD/HD Research CentreのLidy M Peisser氏らは、先に、食物に対する過敏症がAD/HDの症状を引き起こすと仮定して、小児患者を対象とする小規模な無作為化試験を行い、AD/HDと、AD/HDに合併する反抗挑戦性障害ODD)と食物の間に有意な関係があることを示す結果を得ていた。

 食物が原因でAD/HDが起きるなら、AD/HDはアレルギー性の疾患に分類できるだろう。著者らは、食物アレルギーの中でも遅延型の反応を示すIgG抗体によるアレルギー(食物不耐症ともいわれる)がAD/HDの症状発現に関係するのではないかと考えた。そこで今回、この仮説の検証も試みるために、特に選別しない小児AD/HD患者を対象に、食事と行動の関係を調べる無作為化試験を行った。

 オランダとベルギーで08年11月4日から09年9月29日まで、4~8歳のあらゆるサブタイプのAD/HD患者で薬物療法や行動療法を受けていない小児100人を登録。採血して、総IgE値と、個々の食品(鶏卵、ピーナッツ、大豆、牛乳、魚、小麦など)に対するIgE値を測定し、さらに、総IgG値と270種類の食品に対するIgG値を調べた。

 試験の第1段階として、100人の患者を無作為に除去食(介入群、50人平均年齢は6.8歳、男児が44人)または健康的な食事(対照群、50人、7.0歳、男児が42人)に割り付け、5週間継続した。除去食は、摂取する食品の種類を減らし、アレルギー誘発性の低い食物(米、七面鳥、子羊、特定の野菜、梨、水など)を選んで与えることを原則とし、患者ごとにジャガイモ、果物、小麦などといった特定の食品の摂取も許可した。除去食開始から2週間経っても行動に変化が見られない場合には、原則通りの食事の内容に近付けるよう指示した。

 第2段階は、介入群のうち臨床的な反応が見られた、すなわちADHD評価スケール(ARS、0~54ポイントでスコアが高いほど重症)において40%以上の改善を示した患者を対象とした、4週間のクロスオーバー試験だ。患者ごとにIgG高値を示す食品3つまたは低値を示す食品3つを選び、いずれかを除去食に加えた食事をそれぞれ2週間ずつ与えた。患者は、IgG高値食品を先に加えるグループと、低値食品を先に加えるグループに無作為に割り付けた。

 主要エンドポイントは、ARSスコアの変化に設定、ベースラインから第1段階終了時までの変化と、第1段階終了時から第2段階終了時までの変化を介入群と対照群の間で比較した。同様に、患者の親が評価したコナーズの簡略化尺度(ACS)のスコアの変化も調べた。第1段階の分析はintention-to-treatで、第2段階はper-protocolで行った。

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