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ノート・スタイルの基本/ノート術企画第四回

倉下忠憲
ノートについての基本を一つ一つ確認しているこの企画。今回はノート・スタイルについて。ノート・スタイルとはノートの組み合わせ方のことです。すこし大げさな表現を使えばノートセット・マネジメントと言えるかもしれません。

世の中にはさまざまな種類のノートが存在しています。その中には機能に特化したようなノートもあります。一つのノートにこだわることもできますし、それぞれのノートの特徴を生かした組み合わせ方を考えることもできるでしょう。

今回は、その「組み合わせ」の基本について考えてみたいと思います。


「何でも」ノート

ズバリこれは「組み合わせない」という方法です。スタイルとしては一番シンプルなものですね。奥野宣之さんの『情報は1冊のノートにまとめなさい』がこの方法論では有名かと思います。

とにかく一冊のノートに情報を集約する。「何を書くか」「書かないか」は一切気にしない。こういったノートの使い方です。

情報が散らばる心配はありません。また、「見返す」という作業も自然にできます。ただし、一冊のノートを書き終えた段階で牽引を作っておかないと情報の再利用が難しくなるという点だけはおさえておいたほうが良いでしょう。その辺はデジタルツールとの組み合わせで解決できると思います。

このスタイルは仕事に関してオンとオフがあまりないようなパターン、あるいは日常的にネタ集めをするような方に適しているのではないかと思います。逆に考えると、仕事中もプライベートも同じノートを持ち歩くことになるので気持ちの切り替えが難しいというデメリットもあります。

「メモ+ノート」スタイル

ノートの組み合わせではこれが一番スタンダードかもしれません。日常的に持ち歩く小型のメモと一冊のノートの組み合わせです。

思いついたことをすぐに書き留めておく「メモノート」とそれをあとで整理する「まとめノート」の二種類を運用していきます。この場合のメモはロディアのようなちぎり取れるタイプのメモが使いやすいと思います。

美崎栄一郎さんの『結果を出す人はノートに何を書いているのか』ではこの「まとめノート」は「母艦ノート」と呼ばれています。呼び方はなんでも構いませんが、日常的に取り回しやすいノートと情報を保管しておくノートを別に持つというのがこのスタイルのポイントです。パソコンでいえば、デスクトップとスマートフォンに近い関係性があるでしょう。

必要な情報が厳選されて残されているので、「まとめノート」は情報密度の高いノートになると思います。

一番始めやすい形だと思いますが、メモノートからまとめノートに移し替える作業を忘れてしまいがち、というのが一番の難点です。できれば一日の作業予定の最後のほうにでもこれらの作業を「タスク」として設定しておくのがよいと思います。

「役割」ノート

「役割」というのは大雑把に言えば、「仕事」「プライベート」のような分類です。もうすこし突っ込めば「役職」「夫」「娘」「勉強会の主催者」「主婦」「患者」・・・と限りなく上げることができますが、そこまで厳密に考える必要はないでしょう。

仕事用に一冊、プライベート用に一冊あたりが基本になると思います。それ以外にNPOの仕事を手伝っているならばそれ用に一冊、という感じでに基本に入りきらないようなものを増やしていけばよいでしょう。

このスタイルのポイントは、役割に関する情報が一覧できること。はじめから書き込むノートを選んでいるので、特に整理しなくても「特定の役割」に関する情報をすぐに見返すことができます。

もう一点ポイントを挙げるとすれば、気持ちの切り替えがやりやすいこと。役割ごとにノートを変えておくと、そのノートを開いたら自然とスイッチが切り替わりやすくなります。こういう場合は、なるべく役割ごとに見た目の異なったノートを割り当てておくのがよいかと思います。

「テーマ」ノート

役割は情報を記入する人の立場に沿ったノートであるとするならば、こちらは書かれる情報の種類によって分類するタイプのノートです。

一番わかり易いのが、学生の科目別のノートでしょうか。ビジネスパーソンの方ならば、「業務日誌」「会議・商談ノート」「読書ノート」といった感じでノートを分けるスタイルです。

私の経験則だとこのタイプのノートスタイルはテーマが増えすぎて書き込むのが面倒になり、知らない間に破綻するというパターンが起きやすいと思います。もしこのタイプのノートにするならば、特に関心の高い分野のノート1冊から始めたほうがよいと思います。それと「何でも」ノート1冊を組み合わせるスタイルです。

例えば仕事術に関心があるならば、「何でも」ノート+「仕事術」ノートを作る、ということです。これぐらいならば運用はそれほど難しくありません。同時に複数のテーマノートをつくり始めると持ち運ぶのも面倒になり、書き込むのも面倒になってきます。

面倒さというのは何かを継続する上では最大の障害とも呼べるものなので、できる限りスタート時にはその障害は低く設定していおいたほうがよいでしょう。

まとめ

今回はノートの「組み合わせ」について考えてみました。紹介したものは本当に基本的なものばかりです。この基本をアレンジすることもできます。例えば「メモ・まとめ」ノートスタイルに「役割」ノートを組み合わせる、といったことです。この場合、日常的にメモノートを持ち歩いて、そこからの転記先は「役割」ごとのノート、といった使い方ができます。

ノートの使い方にはそれぞれ一長一短あります。万能なノート・スタイルはありません。しかし、自分の情報運用環境にあったノート・スタイルというのは必ずあると思います。それはどこかから見つけてくるというよりも、自分で作り出すタイプのものです。

皆様も自分なりのノート・スタイルをぜひ構築してみてください。

▼参考文献:

その名の通り、情報を一冊のノートの集約するための具体的な方法論が解説されています。


3冊のノートを使い分ける、ビジネスパーソンのためのノート術の本。


▼関連エントリー:

ノートの種類と選び方のコツ/ノート術企画第一回 
見返しやすいノート作りのポイント/ノート術企画第二回 
ノートの役割とは何か/ノート術企画第三回 

▼今週の一冊:

最近資料集めのために昔の本を再読中なので、新しい本はあまり読めていないのです。が、そんな中で読んだ本がこの一冊。すごいタイトルですが、あの本田宗一郎氏ならば読みたくもなってきます。

第一感で感じられるのがドラッカーとの親和性です。本田さんが経営の基盤においているものと、ドラッカーが企業のマネジメントに求めているものはほとんど同じといっていいでしょう。つまり、「高度な技術で社会に貢献できる製品を作り」、「従業員を材料のようには扱わない」ということです。もう少し突き詰めて考えると、それは「信頼」という言葉に置き換えられるかもしれません。社会と企業の間の信頼感。従業員と経営者の間の信頼感。こういうものを基板にしないと「事業継続性」というのは著しく危ういものになってしまう、ということなのかもしれません。

現代の企業論としても面白く読めますし、フリーランサーの方でも十分有用な箴言が詰まっています。


▼編集後記:
倉下忠憲
新しいMacBookAirに非常に心を動かされております。

ちょうどノートPCを買い換えようと思っていたのですが、当初の候補はMacBookPro。でも日常的に持ち歩いて使うので、どうにもあの重さはちょっとな・・・と考えていたのでタイミング的にはベスト。あとはバッテリーが若干短い点をどう評価するのか、という事ですね。悩ましい限りです。


▼倉下忠憲:

新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。