ブラジル7.5%成長 2010年、24年ぶり7%台
実質GDP 過熱には警戒感
ブラジル地理統計院(IBGE)が3日発表した2010年の実質国内総生産(GDP)は前年比7.5%増となり、1986年(7.5%)以来、24年ぶりに7%台となった。中低所得層の底上げによる消費拡大と、それに対応するための投資がけん引した。10~12月の四半期では前期比0.7%増(季節調整済み)となり、5四半期ぶりに増加幅が拡大に転じた。物価上昇など景気過熱に対する警戒感が再び強まっている。
10年10~12月期の成長率は年率換算で、3.0%程度になる。需要別の動向を見ると、GDP全体の6割を占める消費が前期比2.5%増となり、8四半期連続で拡大。7~9月期(前期比1.8%増)と比べて加速した。
■設備投資がけん引
企業の設備投資など固定資産投資は0.7%増。伸び率は5四半期連続で縮小したが、10年通年で見ると09年比21.8%増と景気回復をけん引した。輸出は10~12月期に前期比3.6%増だったが、好調な消費を背景に輸入も同3.9%増となった。
産業別ではサービス業のうち住宅や自動車向け融資の拡大などが続く金融が2.5%増。鉱工業は鉄鉱石輸出が好調な鉱業が2.5%増になったものの、加工業が2期連続減少したことが響いて0.3%減になった。
好調な景気を背景に企業業績も堅調に推移している。小売最大手ポンジアスカルの10~12月期、既存店売上高が前年同期比12%増。同期の決算は純利益が同145%増となった。所得の底上げで従来はバスを利用していた中低所得層の航空機利用が広がり、航空最大手TAMの10~12月期の売上高は同29%増になった。
■人材不足も表面化
ブラジルでは好調な景気を背景に人材の確保が難しくなっているほか、肉類などの食品の物価上昇も目立っている。政府は国際的な商品価格上昇に加え、国内景気も物価上昇の背景と分析。政府支出の削減を表明しているほか、中央銀行も自動車などを対象とした長期融資の規制を強化している。
交通インフラや製造業の能力の限界から、ブラジルでは5%程度が過熱感を伴わない成長の限界とされている。金融機関による11年の成長率予想は10年比4.3%増と「巡航速度」を見込んでいる。
(サンパウロ=檀上誠)