Transnational History(国家の正史を越えて)、李忠成選手について、など。
え〜と更新は滞っていますが、ワープアとしてなんとか生きています(^^
ところで、Blogの名前ですが「Transnational History」に変えてみました。トランスナショナルヒストリー、意味としては「国家(国民国家)の歴史(正史)を越えて」といったところでしょうか。
なんで変更したの? 最近、「国民国家」やそれを主体に構成されたナショナル・ヒストリーが引く「境界線」によって無視されたり単純化されてしまっている部分の重要性を強く感じることがいくつもあったからです。
ひとつは、「国民が一体化」できるような歴史観から抜け落ちてしまっている視点についての問題意識です。これについては、龍馬伝にみられような、いわゆる”元気がでる歴史”のような物語が持つ危なっかしさも含めてね。
もうひとつは、「包摂」と「排除」のどちらにもグロテクスな「抑圧」の問題があるのですが、サッカー日本代表でAFCアジア・カップで決勝ゴールを決めたLEEチュンソンこと李忠成(Tadanari LEE)選手に関して見られる、あいかわらずな「日本人」の反応です。
こちらにLEEチュンソンこと李忠成選手が韓国のテレビ番組に出演したときのインタビュー動画があります。
Long
이충성
Short
李忠成の告白 「韓国人は在日を仲間とは思ってない」 【サッカー日本】
http://www.youtube.com/watch?v=FmT5JlY7s0Q
動画のなかで李忠成選手は、U-19で韓国代表として招集されて韓国へ行き、そこで、言葉の壁もあり上手くコミュニケーションがとれなく、「なんで在日のヤツが来たんだ」「半チョッパリ」といった差別的な言葉を投げつけられたそうです。心が痛くなるほどのショックを受けて、自分が思い描いていた「世界観が壊れた」と語っています。
自身のBlog*1では、「僕にとっての祖国は日本・韓国の2つです。」「(韓国と)試合をする事があれば、韓国を尊敬し敬意をはらった上で、1人のサッカー選手 李忠成 として試合にのぞみたいと思います。」と、複雑な心境を告白しています。
で、どういった思考回路なら、この動画を見て、
「韓国人というのは、いかにに冷淡で差別的なのかがわかった」
とか、
「世界的に見て日本は差別が少ない国です」
いやいや、アンタ、民族差別を認識できていない時点で「差別うんぬん以前」の問題かと。
「日本人の胸に飛び込んで来いよ!一緒に頑張ればいいじゃないか!真面目に生きる人間を日本人は歓迎するぞ!李という名前を名乗るのもやめて日本人になれよ!」
周回遅れな愛国オナニーの道具に、マイノリティを利用するのやめましょうよ。
『<日本人>の境界』p350
- ナショナリズムというのは国民国家への「強制された同胞愛forced fraternity」 1938年 ヴァージニア・ウルフ
『在日の経験から 日本における多文化共生とは何か』p220
- (沖縄の復帰直前)「沖縄人のままで日本人になることを許さない日本であるならば、わたくしはイヤだ。そのような日本人にはなりたくない。」「逆にどういう日本人になりたいという注文をつけてもよいと考えている」 1972年 儀間(ぎま)進
『<日本人>の境界』p659
こうした問題意識からBlog名を変えてみました。
今年は複雑で多様なものを、できるだけそのまま理解し、普遍的な問いへとリンクさせていけるようなエントリーを書いていければいいなぁ…と思っています。
■付記
昨日(2011.1.31)のNEWS ZEROに李忠成選手が出演していましたが、「鄭大世(チョン・テセ)選手のように韓国籍をとって『北朝鮮代表』となった選手もいます」が、ぼくは(日本代表として)「在日朝鮮人の後輩たちへの道を示していきたい。」と語っていました。
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