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社会

『立ち上がれ、高齢者のみなさん。私はあなたたちの味方です』(1)
社会
2011年2月22日 12:05
大山 眞人(ノンフィクション作家)

 とうとうこんなことになってしまった。
 今から3年前の夏、埼玉県所沢市にある県営住宅の集会所を借りて、「幸福亭」を立ち上げた。「幸福亭」とは、高齢(独居)者が気軽に立ち寄れる居場所のこと。目的はズバリ、「孤独死の回避」である。
幸福亭オープンから遡ること3年前... 幸福亭オープンから遡ること3年前、この団地で2件の孤独死が発生した。男性は3日で発見されたが、女性は3週間後、異臭がするという隣人の通報で警察が入り、居間で発見された。遺体は腐敗し、特殊清掃業者がクリーニングしたものの、畳に残された影のような人型は、決して消えることがなかったという。当時自治会の役員をしていた私は、亡くなった女性が住む部屋の新聞受けのふたを開けて、中を覗いた。その瞬間、もの凄い異臭で立ちくらみがした。「孤独死の匂い」としか表現のしようがない。
 当時の自治会長に、「孤独死は団地の恥」と提言したものの、「人間の死は役所と坊さんの領域」ととりつく島さえなかった。義憤を感じて上梓したのが『団地が死んでいく』(平凡社新書)だった。当時の担当編集者に、「大山さん、地元に根付くジャーナリストも面白いと思いますよ」と意味深な言葉を投げかけられ、幸福亭を立ち上げたのである。

 オープン初日、来亭者は2名。スタッフは私ともうひとりの男性ふたり。ここにくれば友だちができ、失った絆(結―ゆい―)が生まれ、高齢者に有益なセーフティネットの内容を知ることができる。結果的に孤独死を回避できる。
 ところが、「孤独死」という言葉が住民に嫌われた。耳慣れない言葉以上に、「辛気くさい」「自分とは無縁」という気持ちがそうさせたのだろう。困惑しているとき、「さわやか福祉財団」(堀田力理事長)と知己を得て、地域で高齢者を支える「居場所」作りにシフトしていった。「居場所」というのは、自分らしくいられる場所、自分が必要とされていることを実感できる場所をいう。「幸福亭」を所沢市並木地区の「居場所」のひとつにしようと目論んだのである。

 高齢者の目線で必要な提案を関係部署にし続けた。「幸福亭」は高齢者が利用する居場所であると同時に、高齢者を守る運動体でもある。行政のいいなりにはならない。発言しつづけるのが我々の使命だと思うからだ。代表的「提言」を5つ挙げてみる。

 (1) 空き家、空き室、空き店舗を利用して「居場所」作りを推進させる。
 (2) 冷蔵庫大作戦=「あんしんカード」(掛かり付けの医者名、病院名、服用薬名、連絡先などを明記した用紙)を筒に入れ、それを冷蔵庫に保管。救急隊がそれを開け、書かれた内容を参考に、ピンポイントに搬送する。
 (3) 高齢者を狙う「悪徳商法(とくに振り込め詐欺)」の撃退。携帯電話を使った「振り込め詐欺」は、ほぼ100パーセント撃退可能。秘策があります。
 (4) 市営の合葬墓地を造成する。無縁仏(孤独死などで)だけではなく、希望する市民にも開放する。みんなで入れば寂しくない。
 (5) 「孤独死」を防ぐには「見まもり」が必須。県内にある県営住宅は約300カ所。高齢住民への安否確認作業は「幸福亭」をサテライト化して、迅速性を増す。

 残念ながら、どれも実現には至っていない。

大山 眞人 氏 現在、全国の独居高齢者は380万人。これが20年後には700万人にまで増える。これは65歳以上の高齢者の実に40パーセントにあたる。データはやや古いが、内閣府(06年)調査で、独居高齢者の63パーセントが「心配事がある」と答え、30パーセントは、「頼れる人がいない」と答えている。完全に高齢化社会なのだ。でも、埼玉県・所沢市は他県(市)と比較しても対応が鈍い。他市での講演を通して実感する。
 前述した5つの提言の大半は私のオリジナルではない。(1)は横浜市栄区で、(2)は小樽市で、(4)は小平市で実施済みである。「大山はパクリの天才」とよくいわれる。私は誉め言葉だと受け取っている。実証済みのいいものは、遠慮なくいただけばいい。金をあまりかけなくとも、頭を使えばいくらでも解決法はあると思う。
 問題は、「何故私の提言を実施していただけないのか」ということだ。知り合いの市議経験者に聞いた。答えは「大山さんはその世界では名が知れているかも知れないが、所沢では一般市民。実現は難しい」「市議なら可能だ」だった。市議関係者に話をしてみると、「孤独死を含む高齢者問題だけでは票にならない」という返事。近づく市議はいない。
 このまま地道に運動をつづけていくのか、それとも市議になるかの二者択一しか選択肢が見つからなかった。たまたま別地域の推薦もあり、後者を選択した。年末だった。時間がない。
 訴える内容はすぐにできた。「幸福亭」で実践し、そこで生まれた問題をそのまま俎上に載せればいい。ひと言でいえば「高齢者の問題に特化する」ということだ。これなら得意分野だから難しくはない。それも、実現不可能な、でも「見栄えのいい」ものは敢えて省いた。必要以上に金のかかるものも省いた。結果、内容は地味だが、無縁(高齢)社会では無視できないものばかりとなった。それを列挙してみる。

1.無縁社会の中で高齢者が安心して生活できる地域づくりを目ざします。
 ・「孤独死」を許しません。
 ・ひとり暮らしの高齢者の見まもりの充実。
 ・高層住宅に住む高齢者の安全と生活を守る。
 ・認知症になっても安心して暮らせるまちづくりを目ざす。
 ・「空き家」「空き店舗」を利用して高齢者が気軽に利用できる「居場所」作り。
 ・健常者も身障者も仲良く暮らせるまちづくり。
 ・街中にベンチ1,000個設置を目標に、仲間を集う。

2.高齢者の健康と命を守ります。
 ・地域包括支援センターの充実。
 ・介護保険を利用者の目線で見直す。
 ・公務員の一律削減に反対。公的なサービスの低下を招くから。
 ・「悪徳商法」(とくに「振り込め詐欺」)から高齢者を守る。
 ・「高齢(独居)者緊急システム」などのセーフティネットの充実。
 ・「無料低額診療制度」を応援。

3.「居場所」を拠点とした高齢者の生き方を支援します。
 ・毎日通えるサロン(居場所)を通して仲間を作り、絆(結―ゆい―)を深める。
 ・高齢者の知恵と経験を生かした「子育て支援」など、若いお母さんを応援。
 ・ITを駆使した情報網を確立させ、高齢者のためのネットワーク作り。
 ・買い物難民、生活難民など、高齢者や障害者の日常を支援。
 ・「お達者会議」(仮称)を組織して、高齢者の声を議会に反映。

 背伸びをしない、実現可能なものばかりだと思う。とくに、空き家、空き店舗を利用した「居場所」のいくつかをNPO法人化して、高齢者に仕事を斡旋しようという目論見がある。仕事があり、それに伴う収入(少ないが)を得られれば、モチベーションがアップする。ボランティアでも「有償」にすれば、責任の持ち方も違ってくる。ボランティアは公務員の肩代わりではない。

 所沢市の人口は約34万人。東京市民が圧倒的に多い。地元民と新住民との意識の格差は依然として存在する。先日、所沢市の当初予算案が発表された。一般会計は873億円。前年度比4.3%増である。主な歳入は、個人と法人の市民税で8.3億円(1.6%増)を見込んでいる。重点事業として、子ども医療費の助成対象を中3まで拡大し(7.4億円)、ヒブ(インフルエンザ菌b型)・肺炎球菌・子宮けいがんワクチンなどの予防接種の助成(6億円)。ほかに所沢飛行場開設100周年記念事業などに800万円。高齢者関係予算が特段に増えたという感じはしない。
 市は保健所を隣接する市に移し、保育園や学童保育所の民営化(企業の参加)を進める。また、昨年、NHK「のど自慢」を実施し、出費の不透明さを指摘された。耳にする限り、市長の評判は芳しいとはいえない。
 私は個人的に市長とは面識がある。4年前の出馬は民主党(当選後、無所属)からだった。マニフェストも総花的な感じはしたものの、「地域で高齢者を見守る」姿勢に共感して一票を投じた。その本家民主党が、「マニフェスト崩壊」を突きつけられ、右往左往している。

 高齢者は社会の厄介者ですか? 大人しくしていなくてはならないのですか? 冗談じゃない。当然だが、生きてきた人生の知恵と経験は未経験者の比ではない。年寄りを大切にするということは、一方的に世話をすることではなく、社会の仕組みに中に敢然と取り込むことである。仕事をさせ、利用することである。私は高齢(独居)者が見捨てられないように、しっかりと声を発し続けるつもりである。

<大山 眞人>
 昭和19年山形市生まれ。早稲田大学第一文学部史学科国史専修卒。学習研究社で女性雑誌、音楽雑誌編集。退社後、ノンフィクション作家。
 著書に「S病院老人病棟の仲間たち」(文藝春秋・テレビドラマ化)、「ちんどん菊乃家の人びと」(河出書房新社)、「老いてこそ二人で生きたい」(大和書房)、「悪徳商法」(文春新書)、「団地が死んでいく」(平凡社新書)、「楽の匠」(音楽之友社)など多数。
 「報道2001 老人漂流」(フジテレビ 08年7月 コメンテーター)などテレビ・ラジオに出演。高齢者問題を中心に発言。
[連絡先]
 住所:〒359-0042 埼玉県所沢市並木8-7 県営武蔵野団地6-1205
 電話・FAX:04-2996-5050
 携帯電話:080-2268-2400
 メールアドレス:majin@garnet.broba.cc


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