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富川ギター教室

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奏法論

ギター奏法論第一章第1部

構えについての疑問点

エレキギター、フォークギターと種類を問わず、ギターというものは左手で弦を押さえ、右手で弦をはじく(弾弦の方法は指先またはピックが一般的)楽器である。もちろん利き腕が左である場合は左右の役割が逆になることもある(ジミ・ヘンドリクスのように)。 クラシックギターも然り、左手で押弦し、右手で弾弦する。そこで、もし手持ちであれば、クラシックギターの教本(入門書)を見てもらいたい。おそらく、そこの最初のページの方に、「ギターの構え方」なる部分があるはずである。椅子に座り、左足は「足台」と呼ばれる器具の上に置かれているはずだ。親切な教本になると「御婦人用」の構え方なるものがあって(現在はあまり見ないが)「女性用の構え」まで写真を使って、親切に解説してある(フェミニストが見たら、あれこれ理由づけしてくれるだろう)。 ここで、いくつかの疑問点があがらないだろうか?。そこで、私なりに考えた疑問点について以下検討していこうと思う。なお以下ギターという用語をクラシックギターということに限定して文章を進めていくので誤解のないように。

ギターの構えへの疑問@>何故座るのか?

結論から言えば、楽だからである。長時間の作業の時は誰でも座って仕事をする方が楽である。「私は浪人時代、受験勉強を全て立ってした。椅子に座り、勉強したことがない」というような奇特なひとは除いて、ほとんどの人が長時間の作業の時は、足の疲れ、腰の疲れを考慮すれば、椅子に座った方が楽であると考える。フォークギター、エレキギターの奏者は、立姿で演奏することも多いが、これは見た目上の問題が大きいようで、やはりレコーディングや、イベントなどでの長丁場の場合、座り姿勢で右足などにギターを載せて弾く方が多い(もちろん、ギターを始めた時からストラップをつけて立って練習していたので、そうじゃないと録音も調子がでない、というギタリストもいるのだが)。 まあ、とりあえず、家では譜面を睨みながら悩み、弾けないところを反復練習せねばならず、そしてステージでは衆目監視のなか前半後半の各40分を独奏で演奏し続けなければならない場合もあるクラシックギタリストにとって、座って演奏する方が楽である、ということ。 さて、その場合、「楽に座る」ということが大切である。「楽に座る」=「正しく座る」ということである。「正しい座り方ぐらい分かってらい!」という研究熱心な方は以下は読み飛ばして下さって結構です。私個人の意見を言わせてもらうと、ほとんどの人が「正しい(自然な)座り方」を理解していないと思います(特にギターを弾いている人は!)。多くの人は、ただ「座っている」だけであって、「正しく座っている」訳ではないのです。「ギターを弾くために座るんだ」という考え方を捨てること。これが「楽に座る」ことの第一歩になります。そしてギターも自然に演奏することができる基本ともなります。

ギターの構えへの疑問A>正しい座り方とは?

ギターに構える際によく「椅子には浅めに腰掛ける」という説明を教本でよく見ます。いったいこの説明は椅子の座り方として「正しい」のでしょうか?。結論は「正しくない、又は誤解されやすく誤った座り方を導く可能性がある」、です。おそらくこのような説明を教本に書く人は先輩ギタリスト、自分の師事した教師の教えをそのまま引用しているという場合がほとんどでしょう。教本で「何故浅めに腰掛けねばならないのか」を説明しているものはほとんどありません。理由らしきものがあるとしても、それは「正しく座る」という行為にとっては些細な問題点としかならないものであったりします。例えば、ギターを左右の足の上に配置した時にギターのボディーが椅子に当たらないように、という理由(つまりギターの下部が椅子の座面にあたることを避ける)。または、左右の足が開いたり閉じたり自由に動かすことが出来るように、という理由。後者は実に理に適っているとも言えます。実際、演奏時にギターの位置を移動させる子とは多くの奏者によって行われています。それによって、ハイポジションが弾きやすくなったり、左手の押弦が楽になるのです。又、右手のタッチのアングルが変化するので音色変化のために左右の足が自由に動かせるように留意している奏者もいます(このような技術に関しては後述します)。 しかし、以上の演奏上の問題は正しく座るという段階をクリアしてから、考えるべき問題であると思います。最初に戻って、「浅めに腰掛けるべき」という記述の問題点を論じていきましょう。「椅子に浅めに」という記述がもたらす問題点とは、「両足(両太股)が座面から完全に出てしまう」という座り方をイメージさせるということなのです。 一般に考えられている「座る」という行為は、上半身の体重を座骨で受けるという動作です。分かり難いですか?。つまり、座面に接地しているお尻全体か上半身の重さを支えている、というイメージでしょうか。しかしながら、その臀部だけで上半身全体の重さを支えきれるはずもなく、左右太股も、体上方からくる重みを支える助けとなり、さらに太股に伝えられた重さ(力の伝わり)が両足を伝わり、足裏を通って地面に吸収されるイメージ、と言えるのです(言葉では非常に説明しづらいですが、こんな感じです)。つまり、座っている時、両足は休んでいるのではなく、上半身全体の(背骨全体の)重さをがっしりと受けとめ、人間の体全体が受けている重力を地面に伝えてやらねばならないのです。 つまり、両太股には、座面に与えられた上半身の重さを分割担当して、足へと伝導する 役目があるのです。よって、太股は出来る得る限り、座面に接しているのが理想的なのです。臀部には上半身の重さに耐え切れるだけのパワーはありません。体の重さを支えるのは脚部であり、左右の体のバランスをとるのも足なのです。 結論は、「太股は出来る得る限り座面の接していること」ということ。そして、これが正しい座り方の第一歩。両足で体全体の体重を支えている感覚を得られるようになったら、あなたは「正しい座り方」をしていることになります。そう考えて見ると、「立つ事」も「座る事」も同じ体の使い方をします。では、「座る」という行為が何故「楽」なのか?。この問いに関する答えは、「椅子の脚」にあります。そう、この「椅子の脚」が、文字どおりあなたの体の重さを支えてくれるからです。それだけ、あなたの両足に伝わる力(体の重さによる)は少なくなっているはずです。椅子に座れば、あなたは「6本の足で地面に立っている(4本足のいすならね)」という状態にあるのです。そして、それだけの足があれば、前後左右に、自由に体を自由に動かせる事ができる、ともいえます。 そして、足は、肩幅ぐらいに開いて座るのが良いでしょう。そうする事によって、体の右半身、左半身のバランスをうまくとることができます。 さて、以上の事を考慮すれば「正しい座り方」ができるのでしょうか?。答えは、いやまだまだ、です(もうしばらくの辛抱!)。もうひとつの議論するべき大事な点は、背骨と足との関係です。思い出して下さい、小学校の体育の授業。「体育座り」というのがありましたね。あれを、今やってみましょう。地面に座って、膝を曲げて、その膝のところに手を回すという座り方です。この「手を回す」というのがポイントで、この手の引っ掛かりがなかったら、後ろに倒れそうになりますよね?。それと、背骨は決してまっすぐにはなっていないはずです。では、そのまま手を放して、地面なり、床なりに仰向けになってみましょう(足は膝を頂点に山形になっているままで)。これでやっと、背骨は楽になります。腰部の緊張もなくなったはずです。椅子に座る時も、この背骨全体と足の角度が大体の目安となります。このような背骨全体(上半身全体)と足との関係の状態を「姿勢@」とでもしておきましょうか。この仰向けの姿勢で、太股を体に近づけていって、おおよそ、地面に(床面に)垂直な角度になるようにします。そうすると、また、背骨は丸くなり、腰部に圧迫感を感じることでしょう(これを姿勢Aとしましょう)。そして、呼吸も楽でなくなるはずです。それは、腹部が圧迫されているからです。さて、前述の「姿勢@」に戻して(足の角度を)、その姿勢から足をピンとまっすぐに伸ばしてしまいます。そうするとどうでしょうか、背骨のほうに「海老反り」とでもいうべき感覚が起こりませんか?。この「海老反り」姿勢は、本来、まっすぐなはずの背骨の形状を保っていないのです。背中や、脚部に緊張が生まれます。 つまり、背骨がまっすぐになっている状態は、姿勢@の状態です。これが、もっとも背骨がリラックスできる姿勢です。そして、リラックスした背骨だけが、体の重さを支えることができます。さて、胴体と太股がほぼ直角である姿勢Aは、まさに普段私たちが思い描いている「椅子の座り方」です。ほとんどの椅子が座面が床に対して平行であり、胴体と太股が90度になるような座り方になってしまいます。この姿勢を保とうとすると、腹部の圧迫感を感じ、それを避けるため、自然に背骨中央は後方に移動し湾曲する形となります。これが、多くのギタリストの演奏姿勢です。湾曲した背骨は、体全体、特に頭部の重さを支えきれるはずがないのです!。これが、肩の痛み(肩凝りなども)、背中の痛み(頭部の重みを直接背骨が受けるために起こります)、腰部の痛みなどの、ギター演奏家特有の障害を生み出すのです。 よって、上記の姿勢@の胴体と足の角度を、椅子に座る時も保つ事に留意する事が大切です。つまり、「足の付け根から膝にかけて、床の方向にすこし傾斜するように座る事」に注意を払って下さい。つまり、横から座った姿勢を見た場合に、床から見て太股がおよそ60度ぐらいの角度で座るという事です。 結論として、座面が床と水平の椅子に座るという事は、「体の自然な流れに反した姿勢を引き起こす可能性が高い」のです。経験上、そのコンサートホールの椅子も、そのような椅子です。日常生活で使われている椅子もほとんどがこのタイプです。特注で、斜めに傾斜した座面をもつ椅子を作らせるのも一考かと思いますが、お金も馬鹿になりません。 そこで、上記のことを、全て踏まえた上で、私個人が考えた解決法を以下に書いておきます。
  1. 椅子に太股半分ぐらいまでの深さで腰掛ける。
  2. 背骨をまっすぐな状態にして、つま先を肩幅ぐらいに開く。
  3. 椅子の高さを少し高めに設定する(胴体と太股のアングルを90度より広くとる)。
  4. 上半身全体をすこしだけ後方に(胸を開くようなイメージ)。
  5. 足裏で地面を捉えて、足全体で上半身全体を突き放すような感覚を得る(体の力の流れを感じるため、そして体の重みを脚部全体で支えている感覚を得るため)
以上のプロセスをひとつひとつ丁寧に経ていけば、誰でも「正しい座り方」ができるのですが、「正しい体の力の流れ」の感覚や、「まっすぐな背骨」の感覚を、1人で得るのは難しいと思います。細かい部分は適切な指導者のもとで、個人個人の体格に合わせて「正しい座り方」は「学ばれるべきもの」です。「正しい座り方」はギターという楽器を奏するうえで、まずは「基礎」となるべきものです。この「基礎」を習得することが、ギター上達の鍵になると思います。また、ギターを弾く上で起こりうる障害を事前に予防する方法でもあります。 以上の説明を読んでも、「椅子には浅く(不安定に!)」、「足と胴体の角度は直角に(腰が曲がるよー!)」座りたい人は、どうぞ御勝手に。「自分の体のことは自分がよく知っている。私は私の座り方が正しい」という人は、まず「自分は体の自然な状態(=最大の自由さをもって動ける状態)をほんとに知っているだろうか?」を自問自答してみてください。本当に自分に問い掛けた事がある人は別にして、多分、多くの人が先人の意見を鵜呑みにして「これは正しい」と思ってるだけだと思います。ある教本には「ギターを弾くための正しい姿勢を維持するためには、それなりの筋力をつける努力が必要である」と書いてあった(無責任!)。「そういうものなんだな」と鵜呑みにする人も多いはずである。「筋肉補強が必要のない姿勢」を何故見つけようとしないのか。それが私の最大の疑問である。実際、医学関係、スポーツ医学関係の本を読めば「足と胴体の角度を直角にして座る」ことは「かなりの筋力トレーニングが必要」と言う事が分かる。言い換えれば「正しい座り方をすれば(正しい胴体と足の角度を理解していれば)普通の筋肉さえついていれば、楽に、そして自然に座れる」ということである。

ギターの構えへの疑問B>何故足台を使うのか?

さて、今度は足台について考えていこう。一般的に左足をのせて使うのが「足台」である。この「足台」なるもの、必要であるのか?。結論は「必要な人には必要」である。とりあえず先例として、多くのプロギタリストが使ってきた道具であるので、多分何らかの利点が奏法上あるのであろうとは察しがつく。左足をのせる事から考えてみれば、多分左足か左手に関係がありそう。そこで、また再び何でもいいから「ギター入門書」をみてみよう。そこにはどのように書いてありますか?。多くの本には「とりあえず足台は使うものである」というようなニュアンスで「足台」の必要性を説いています。そして「ギターのヘッド部分が肩の高さになること」という説明があります。どうやらギターを斜めにするために(ヘッド側をサウンドホール側より上に位置させるために)足台は必要なようです。結論から言えば、ギターがこのような角度になればどのような方法を採ろうが良いわけです。 実際にディオニシオ・アグアドDionisio Aguado(1784―1849)は「トリポディソン」というギター固定器具を発明し、実際にそれを使って演奏していました(「トリポディソンで固定されたギターを弾くための教本Metodo Para Tocar La Guitarra en El TRIPODISON」参照)。一種の三脚のようなもので、彼がこの器具を使用したのは主に音響上の理由でしたが、どちらにしても足台を使わなくとも良いということが分かります。同時代の名演奏家、作曲家であったフェルナンド・ソルFernando Sorも足台を使っていませんでした。ソルはギターのボディーの12フレット下部にあたる部分を机の角に置いて演奏するという野が最良の方法という結論に至っていました。彼の場合は楽器の安定を主眼においていたようです。 現在の奏者たちも、左足の上におくクッション型の支持具など、様々な足台に代わるギター固定器具が市場に出ています。その全てが、「ギターのヘッド側を上に向ける」ために考案されたものです。また、特殊な例として、支持具も足台も使わないフランツ・ハラーのような例(ギターのヘッドをほとんど真上に向け、両腿の上に載せる)、ギターにエンドピンをつける(チェロのような)ポール・ガルブレイスのような例もあります。 では、何故多くの人が「足台」を使うのか?。いろいろな答えが見つかりますが、おおよそ以下の理由からでしょう。
  1. 皆使っているから(先生に薦められた)。
  2. 店でそれしか売っていなかった(ギターレストなどが売っていなかった)。
  3. 他のギター支持具が高かった。
  4. ギターに傷をつけたくない(ギターにとって「異物」である支持具を装着するのは嫌)。
  5. 昔からの伝統だから。
他にも色々思い付きますが、大体が以上のような理由でしょうか。@とDのような理由が多分ほとんど。審美上、歴史上(上述のアグアド、ソルの例を考えればそうも言えないのですが)の理由です。確かに、一昔前のギタリストのポートレートを見れば、ターレガ以降のギタリストのほとんどが、東西を問わず足台を使っています。確かに、片足を足台に乗せ、ギターを慈しむように弾いているターレガのポートレートは何ともいえない風情があります(典型的なギタリストのイメージですね)。そのイメージがやはりギターを弾く人達のなかで強いのです。わたしは、この「審美上、歴史上の理由」を否定しません。やはり、私も、名演奏家達が足台にギターを置く優美な姿(この印象も刷り込みかな?)にあこがれて、ギターを弾いていた時期もあるのですから。あと、上記の理由のCについて少し話しておきましょう。例えば他人の楽器を弾かせてもらう時に(楽器屋で試奏する時も)、自分が使っている器具をそのギターに装着することを、その楽器のオーナーは多分嫌がるでしょう。楽器を傷つけないように細心の注意を払ってメーカの方は設計しています。ですが、やはり、大事な愛器にとって、直接ギターに固定されるような支持具は「異物」なのです。その気持ちはとても良く分かります。 では、何故、最近ギタリストで、足台を使わない人が増えてきたのでしょうか?。それは、左足だけをあげる姿勢が体に与える悪影響があるからです。それは「体のねじれ」です。つまり座った姿勢で足台に左足をのせることにより、「左右非対称の体の動き」が生み出す緊張があるのです。よって、私は足台を使いません。体の不必要な緊張を生み出す姿勢をつくりだす器具を使うことは「不健康への道=障害への道」です。足台を無理に使って体の不自然な姿勢を保ちながら演奏をこれからの長いギター人生を続けれるほどの「根性」も「体力」もないので、私は足台を使わない選択をしました。現在私が使っている支持具は「ギターサポート」というものです。吸盤でギターの下部に装着し、羽根のように開いてギターを傾ける装置です。別に私はこの装置こそが絶対、と言っているわけではありません。ただ、「体の自然な動き」を考慮し、「足台使用によってもたらされる人体への悪影響」を事前に避けるために、この器具を使っているだけです。現実の世界では、足台の悪影響により(もちろん足台だけが原因であるとは言えませんが)自分の体に障害を持ってしまった人が使用し始めることの方が多いようです。そのようなトラブルを避けるためにも、「足台使用が体に与える影響」を是非とも理解して下さい。足台をどうしても利用したい人は、自分の体がどのように機能しているかを理解したうえで、「合理的に」足台との共存(?)への道を辿れるはずです。実際に多くのプロギタリストが試行錯誤の上で、様々なスタイルを(演奏姿勢に関して)採用しています。その全てを羅列しても意味はありませんが、できるだけ多くのスタイルについて検討して見ることが、大切なことでしょう。そのひとつとして「足台使用の影響」を、ここで論じているだけです。プロのギタリストであるなら(特に人に教えている立場である音楽教師であるなら)このようなことに関してちゃんと考えたことがある、というのが私の願いであるのです。「ギターを弾くときには足台というものを使用する」という前提から始まって、「足台は必要」又は「足台は不必要」という結論にいたるのは、「帰納的」であると言えるでしょう。「足台は人体に悪影響を与える」という立場から論を進めていって、「足台は不必要」または「足台は必要悪」または「足台との共存の道(これは大いにある可能性であると、個人的に思います)」であるという結論にいたるのが「演繹的」思考であるのでしょう。私自身、ギター教師としての立場からすれば、どちらか一方の立場からのみ生徒に教えているものではありません。大事なのは「両者のバランス」です。例えば、まったくの「初心者」に以上のようなことを説明しても頭でっかちになるだけです。彼らが教師に望んでいるのは「ギターを弾いてみたい!」なのだから、とりあえずは足台に左足をのっけさせ音を出させるのが優先事項でしょう。しかるべき段階を経た後に、少しづつ以上のような足台に関する検証を行っていくのが良き教師であると思います(できない人は生徒をとる資格はなし!)。
注:2004年11月現在、私は演奏活動においてもレッスン中も「足台」を使用しています。これまで、 ほとんど全てのギター支持具を購入、使用してきましたが、理想的なポジションにギターを固定することができません でした。ギターサポートを主に使用しておりましたが、演奏中にギターの位置を 微調整するときに(ギターのネックのアングルを変化させたいときなど)、吸盤が外れたりと演奏に集中 できないということが数回起こりました。吸盤が外れないようにとテープを使って固定したりしましたが、 やはりこのようなトラブルが続きましたので、結局現在「足台」を使っています。とはいっても、上記に述べた 「体の自由を大切にする」という点のみは、やはり重視し、足の接地面などには気を使い、腰周りをニュートラル 状態に保つようにできるだけの努力をしています。(2004年11月10日)

ギターの構えへの疑問C>足台が体に与える悪影響とは?

前述の「ギターの構えへの疑問A>正しい座り方とは?」の部分を読んでない人は、じっくり読み直して下さい。そうすれば、いかに左足だけを持ち上げて、ずっと長時間維持する姿勢が体の自然な動きに反しているか、想像がつくはずです。つまり、左足を太股と背骨が自然にまっすぐになる角度より小さくしようとすれば、左半身だけが屈曲しようという指向が働きます。その状態で背骨をまっすぐに保とうと思えば、上半身全体をねじらねばなりません(つまり、右半身を左方向に)。どちらにしても、そのような状態では、左半身の背中の筋肉はその姿勢を保とうとするために必要以上の筋肉を働かせることになり、緊張状態になります。無理に背骨を真っ直ぐに保とうと思えば、それもかなりの筋力を必要とします。そして、たとえ、かなりの筋力トレーニングを積んだ後で、背筋をまっすぐに保つことができたとしても、内臓は圧迫され、自然に呼吸することも不可能。呼吸もままならない状態で、最大のパワーを引き出した演奏は不可能です。では、上半身全体をひねった状態で演奏を続けることは可能でしょうか?。これも、答えは「否」です。つまり、この姿勢は、徒競走の「ヨーイ、ドン!」の「ヨーイ」の時にとる姿勢に似ています。または、普段歩いている時に、左足を踏みだそうとしている(又は、踏み出した)瞬間にも似ているでしょう。このような状態を、ギターを弾くという「運動」にとっては「準備」の段階であり、したがってこの姿勢はギター演奏に適していると考えるギタリストもいます。しかし、運動を起こす前段階である「ニュートラル(リラックス状態)」な姿勢から、演奏をスタートする方が利に適っていると言えるのではないでしょうか?。 ニュートラル状態→運動準備の姿勢(緊張の発生)→動作(緊張度のマックス状態) →動作の終了(緊張の緩和)=ニュートラル状態、という段階が、人間があらゆる動作を行う際において自然な流れなのです。どのような動作を行う際も筋肉の緊張は生じます。しかし、その緊張は必ず「緩和」されなければなりません。恒常的な「緊張」には人間の体は耐えられるように設計されていません。このような状態が長時間に渡って続けば、体の筋肉は疲弊してしまうでしょう。前述の「体をねじった状態」で運動を行い、そしてまた基本姿勢である「体をねじった状態」に戻っていく一連の動作には、ニュートラル状態がありません。ずーと、走り続けているランナーの状態です。体は常に緊張状態です。しかも、最大の欠陥が、少し前に比喩したように、「ヨーイ、ドン」のヨーイ状態ですから、体はひとつの運動の方向性しか持ちません。つまり、歩く動作で喩えるならば、左足を踏み出し、右手を前に振ろうという動作の方向性しか持たないのです。人間の動作を振り子のようなものです。左右、前後に自在に動作出来る状態を準備してやれば、最小限の筋力で、最大のパワーを引き出すことができるのです。 こう考えてみた上で、以下のような結論が導き出せます。「できるだけ」、「リラックスして座った状態で、背骨の真っ直ぐな状態を壊さずに」且つ「ギターを必要な角度に傾けること」です。言い換えれば、以下のようになります。
  1. 左足だけを上げないこと(体をねじらない)。
  2. ギターを斜めにできる方法を探す
この@だけを考えると、どうも「足台」という器具は「不自然な体の動き」を誘発する道具であるようです。Aの条件はどうやら、支持具(ギターサポートやギターレスト、ダイナレット)で解決できそうである。又は、座った姿勢でただ足におけば指板が正面からみて斜めになるような楽器を使用することです。これは、冗談ではなく、実際にそういうギターを使用しているギタリストもいるようです(例えば、3角形のギターとか)。この辺になると、ギターの形状に関する審美上の問題となってくるので、この「奏法論」中ではこの点は、これ以上追求しないことにしておこう。あくまでも、この論は既存の(若干のディテールの違いはあれ)ちゃんと腰のくびれた”クラシックギター”をどう奏するか、を論じていくものとして、このギターの形状による解決法を議論することは”棚上げ”しておこう。 さて、ここまでで、足台という存在はとりあえず明らかになったと思う。そして、後は、「何故、ギターを傾けねばならないのか」、そして「どのように傾けるのか」という本来なら最初にするべき問題が当然持ち上がってくる。これは、右手、左手の動きを解明することから始めねばなるまい。
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