装丁からして角ハイボールや高級な洋酒を連想する凝った大人の為の洗練されたデザインで
期待値増で飾っておいても良い位です。チビチビとゆっくり味わいたい一冊の気配。
中身は愚直なまでに7類型の家族構成についてタイプ別に地域別に特徴を説明して
おり家族から社会、国家まで語れてしまい鮮やかな手際の良さで呆気にとられます。
まだ読み進めている最中ですが、面喰い独特ですが名著の予感があります。
日本では都市化の進行による核家族や単身世帯の増加が顕著であり今後の社会の構造
変化に注視する必要があるかと思います。自殺率なども家族形態で語れて
しまう辺りが凄いところです。PCリテラシーやSNS使用率といった広義の識字率の上昇や
ネットでの炎上、魔女狩りとステージが変化しても類似していたりして恐い見方も出来たり…。
英仏米のあまりに個人主義とロマンティックラブの核家族のステレオタイプの見方しか
今まで見れていなかっただけに目から鱗で価値観がおおいに揺さぶられました。
叩き台や元ネタ本として有効です。自分の浅さが分かります。今では介護までアウトソージング
されてゆりかごから墓場まで賄える悲しい現状になってしまいました。
スマホ片手にウォークマン聴きながら、ニヤニヤなど言語道断である種の末期状態である
ことを悟った昨今であります。都会のミームは捨て難し…。ドラマ「三人家族」の歌で
幸せはあなただけ~がリフレインしそうな勢いで失笑です。『イトコたちの共和国』や
『五つの資本主義』も包括しているようで後で読みたい一冊です。
やはりいくら表面的な現象を追っても出てきそうもない結論で骨組みである
社会の基盤、インフラ層の分析やマクロ的見地からの大局観により初めて出てくるもの
であり、圧巻で野心的な作品です。
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世界の多様性 家族構造と近代性 単行本 – 2008/9/20
エマニュエル・トッド
(著),
荻野文隆
(翻訳)
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エマニュエル・トッドの主著、革命的著作!
弱冠32歳で世に問うた衝撃の書。
コミュニズム、ナチズム、リベラリズム、イスラム原理主義……すべては家族構造から説明し得る。「家族構成」と「社会の上部構造(政治・経済・文化)」の連関を鮮やかに示し、全く新しい世界像と歴史観を提示!
弱冠32歳で世に問うた衝撃の書。
コミュニズム、ナチズム、リベラリズム、イスラム原理主義……すべては家族構造から説明し得る。「家族構成」と「社会の上部構造(政治・経済・文化)」の連関を鮮やかに示し、全く新しい世界像と歴史観を提示!
- ISBN-104894346486
- ISBN-13978-4894346482
- 出版社藤原書店
- 発売日2008/9/20
- 言語日本語
- 本の長さ560ページ
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商品の説明
著者について
■マニュエル・トッド(Emmanuel TODD)
1951年生。歴史人口学者・家族人類学者。フランス国立人口統計学研究所(INED)に所属。作家のポール・ニザンを祖父に持つ。L・アンリの著書を通じて歴史人口学に出会い、E・ル=ロワ=ラデュリの勧めでケンブリッジ大学に入学。家族制度研究の第一人者P・ラスレットの指導で、76年に博士論文『工業化以前のヨーロッパの7つの農民共同体』を提出。
同年、『最後の転落』で、弱冠25歳にして乳児死亡率の上昇を論拠に旧ソ連の崩壊を断言。その後の『第三惑星――家族構造とイデオロギー・システム』と『世界の幼少期――家族構造と成長』(99年に2作は『世界の多様性 』 (荻野文隆訳)として合本化)において、各地域における「家族構造」と「社会の上部構造(政治・経済・文化)」の連関を鮮やかに示す、全く新しい歴史観と世界像を提示。
『新ヨーロッパ大全 』I ・II (石崎晴己・東松秀雄訳)(90年)では多様性に満ちた新しいヨーロッパ像を提示、『移民の運命 』〔同化か隔離か〕 (石崎晴巳・東松英雄訳)(94年)では家族構造が各国の移民問題に決定的な影響を与えていることを分析し、『経済幻想 』 (平野泰朗訳)(98年)では家族構造に基づく経済構造の多様性の認識から、アングロ・サクソン型個人主義的資本主義を唯一の規範とするグローバリズムを批判し、金融に過剰依存するアメリカ経済の脆弱さをいち早く指摘。
「9・11テロ」から1年後、対イラク戦争開始前の02年9月に発表された『帝国以後 』〔アメリカ・システムの崩壊〕 (石崎晴己訳)では、「米国は唯一の超大国」といった世界の一般的な対米認識に反して、「アメリカの問題は、その強さにではなく、むしろその弱さにこそある」と、アメリカの衰退、とりわけその経済力の衰退を指摘し、アフガニスタン攻撃に始まる米国の軍事行動を、自らの覇権を演劇的に世界に誇示するための「演劇的小規模軍事行動」と断定。28カ国以上で翻訳され、世界的大ベストセラーとなり、とりわけ独仏を中心とする、対イラク戦争反対の理論的支柱となった。
『文明の接近 』〔「イスラームvs西洋」の虚構〕 E・トッド+Y・クルバージュ (石崎晴己訳)(07年)では、『帝国以後 』でのイスラム圏分析をさらに深化させ、出生率の下降と識字率の上昇を論拠に、「イスラム原理主義」の表層的現象ばかりに目を奪われる欧米のイスラム脅威論に反して、着実に進むイスラム圏の近代化を指摘。
『デモクラシー以後 』〔協調的「保護主義」の提唱 〕(石崎晴己 訳=解説)(09年)では、サルコジ大統領誕生に体現されたフランス社会とデモクラシーの危機を分析し、「エリートが自由貿易体制に疑義を呈さないことが格差拡大、金融危機につながっている」と、需要を掘り起こし、ヨーロッパのデモクラシーを守る最後の手段として、均衡のとれた保護主義を提唱している。
1951年生。歴史人口学者・家族人類学者。フランス国立人口統計学研究所(INED)に所属。作家のポール・ニザンを祖父に持つ。L・アンリの著書を通じて歴史人口学に出会い、E・ル=ロワ=ラデュリの勧めでケンブリッジ大学に入学。家族制度研究の第一人者P・ラスレットの指導で、76年に博士論文『工業化以前のヨーロッパの7つの農民共同体』を提出。
同年、『最後の転落』で、弱冠25歳にして乳児死亡率の上昇を論拠に旧ソ連の崩壊を断言。その後の『第三惑星――家族構造とイデオロギー・システム』と『世界の幼少期――家族構造と成長』(99年に2作は『世界の多様性 』 (荻野文隆訳)として合本化)において、各地域における「家族構造」と「社会の上部構造(政治・経済・文化)」の連関を鮮やかに示す、全く新しい歴史観と世界像を提示。
『新ヨーロッパ大全 』I ・II (石崎晴己・東松秀雄訳)(90年)では多様性に満ちた新しいヨーロッパ像を提示、『移民の運命 』〔同化か隔離か〕 (石崎晴巳・東松英雄訳)(94年)では家族構造が各国の移民問題に決定的な影響を与えていることを分析し、『経済幻想 』 (平野泰朗訳)(98年)では家族構造に基づく経済構造の多様性の認識から、アングロ・サクソン型個人主義的資本主義を唯一の規範とするグローバリズムを批判し、金融に過剰依存するアメリカ経済の脆弱さをいち早く指摘。
「9・11テロ」から1年後、対イラク戦争開始前の02年9月に発表された『帝国以後 』〔アメリカ・システムの崩壊〕 (石崎晴己訳)では、「米国は唯一の超大国」といった世界の一般的な対米認識に反して、「アメリカの問題は、その強さにではなく、むしろその弱さにこそある」と、アメリカの衰退、とりわけその経済力の衰退を指摘し、アフガニスタン攻撃に始まる米国の軍事行動を、自らの覇権を演劇的に世界に誇示するための「演劇的小規模軍事行動」と断定。28カ国以上で翻訳され、世界的大ベストセラーとなり、とりわけ独仏を中心とする、対イラク戦争反対の理論的支柱となった。
『文明の接近 』〔「イスラームvs西洋」の虚構〕 E・トッド+Y・クルバージュ (石崎晴己訳)(07年)では、『帝国以後 』でのイスラム圏分析をさらに深化させ、出生率の下降と識字率の上昇を論拠に、「イスラム原理主義」の表層的現象ばかりに目を奪われる欧米のイスラム脅威論に反して、着実に進むイスラム圏の近代化を指摘。
『デモクラシー以後 』〔協調的「保護主義」の提唱 〕(石崎晴己 訳=解説)(09年)では、サルコジ大統領誕生に体現されたフランス社会とデモクラシーの危機を分析し、「エリートが自由貿易体制に疑義を呈さないことが格差拡大、金融危機につながっている」と、需要を掘り起こし、ヨーロッパのデモクラシーを守る最後の手段として、均衡のとれた保護主義を提唱している。
登録情報
- 出版社 : 藤原書店 (2008/9/20)
- 発売日 : 2008/9/20
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 560ページ
- ISBN-10 : 4894346486
- ISBN-13 : 978-4894346482
- Amazon 売れ筋ランキング: - 98,212位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,337位社会一般関連書籍
- - 2,052位社会学概論
- - 23,252位ノンフィクション (本)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2021年8月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
三つ子の魂、百までを感得できる。nation stateを見ずに、先ずはpeopleを。
2015年4月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
これからの日本の最重要課題として増田氏を中心として「地方消滅」や「人口減少社会」が問題提起され始めているが、
「人口動態」と言うキーワードで思い出されたのが昔読んだトッド氏の「帝国以後」だ。
そこでは「識字率向上と出生率低下の正の相関」や「乳児死亡率と男性平均寿命」、「殺人率」、「自殺率」が
その国の状態や特性を表す動かぬ指標となるという話だった。そして、帝国主義→普遍主義→価値観→家族構造という連鎖で
最終的に家族構造に行きつくという論を展開していた。
そのような状況下で最近「ニッポン”空き家列島”の衝撃」という番組で「日本では実家が空き家になっている場合が多い」という
報告に対してデイブ・スペクターが”アメリカには実家という概念がないので何とも言いようがない”と返していたシーンに接した。
ただちに、これは正にトッド氏の言うところの「家族構造」の話が意図せずポロリと出た結果だと確信し、
トッド氏の著作で家族構造の話をもっと詳しく述べている本が読みたくなり本書に行きついた。
「日本には実家という概念があるがアメリカに実家という概念がない」のはなぜなのかを説明したのが本書であると極言しても
許されるであろう。我々は世界中で社会の基本構成要素として「家族」があるのを自明のこととして認めるであろうが、
その家族の内容あるいは特性が世界では同じではないことはわかっていない。普段別居している息子や娘(息子夫婦や娘夫婦)が
正月に実家に帰って新年のお祝いをするのは日本ではごく当たり前のことであるが、これはトッド氏に言わせると、日本の家族構造が
権威主義型家族(縦型家族)のタイプだからであり、これはご先祖様への崇拝や、はたまた万世一系という概念までへも連なること
なのだ。一方で実家という概念がないアメリカなどのアングロサクソン系の家族のタイプは「絶対核家族」と言うことになる。
トッド氏は家族構造は、「夫と妻の関係」と「親と子の関係およびその間の財産相続形態」の2つで決まると言う。そして、それは
政治イデオロギーである「自由と平等の尊重」などの価値観の起源となるのだと言う。また、共産主義が受け入れらるのは家族構造が
外婚制共同体家族の国であることを分析してみせる。
なるほどである。世の中で行われていることを単一の原理原則で説明しようとして、それができているのであるから、
これは科学と言えるだろう。
そして、この原理原則をもって既存の経済発展論者や政治論者の論を一刀両断してしまうのだから実に知的興奮をおぼえる。
かつての「世界標準」や現在の「グローバル化」というキーワードで語られる事柄は、実はアングロサクソン系家族の価値観の
押し付けでしかないことに注意を払う必要があるだろう。世界はそれほど単純で均質ではないことを本書は教えてくれる。
本書の訴求する世界の相対化こそ真の知のグローバル化と言えるだろう。これらの点について関心のある方には必読の書だと思う。
「人口動態」と言うキーワードで思い出されたのが昔読んだトッド氏の「帝国以後」だ。
そこでは「識字率向上と出生率低下の正の相関」や「乳児死亡率と男性平均寿命」、「殺人率」、「自殺率」が
その国の状態や特性を表す動かぬ指標となるという話だった。そして、帝国主義→普遍主義→価値観→家族構造という連鎖で
最終的に家族構造に行きつくという論を展開していた。
そのような状況下で最近「ニッポン”空き家列島”の衝撃」という番組で「日本では実家が空き家になっている場合が多い」という
報告に対してデイブ・スペクターが”アメリカには実家という概念がないので何とも言いようがない”と返していたシーンに接した。
ただちに、これは正にトッド氏の言うところの「家族構造」の話が意図せずポロリと出た結果だと確信し、
トッド氏の著作で家族構造の話をもっと詳しく述べている本が読みたくなり本書に行きついた。
「日本には実家という概念があるがアメリカに実家という概念がない」のはなぜなのかを説明したのが本書であると極言しても
許されるであろう。我々は世界中で社会の基本構成要素として「家族」があるのを自明のこととして認めるであろうが、
その家族の内容あるいは特性が世界では同じではないことはわかっていない。普段別居している息子や娘(息子夫婦や娘夫婦)が
正月に実家に帰って新年のお祝いをするのは日本ではごく当たり前のことであるが、これはトッド氏に言わせると、日本の家族構造が
権威主義型家族(縦型家族)のタイプだからであり、これはご先祖様への崇拝や、はたまた万世一系という概念までへも連なること
なのだ。一方で実家という概念がないアメリカなどのアングロサクソン系の家族のタイプは「絶対核家族」と言うことになる。
トッド氏は家族構造は、「夫と妻の関係」と「親と子の関係およびその間の財産相続形態」の2つで決まると言う。そして、それは
政治イデオロギーである「自由と平等の尊重」などの価値観の起源となるのだと言う。また、共産主義が受け入れらるのは家族構造が
外婚制共同体家族の国であることを分析してみせる。
なるほどである。世の中で行われていることを単一の原理原則で説明しようとして、それができているのであるから、
これは科学と言えるだろう。
そして、この原理原則をもって既存の経済発展論者や政治論者の論を一刀両断してしまうのだから実に知的興奮をおぼえる。
かつての「世界標準」や現在の「グローバル化」というキーワードで語られる事柄は、実はアングロサクソン系家族の価値観の
押し付けでしかないことに注意を払う必要があるだろう。世界はそれほど単純で均質ではないことを本書は教えてくれる。
本書の訴求する世界の相対化こそ真の知のグローバル化と言えるだろう。これらの点について関心のある方には必読の書だと思う。
2011年8月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
『新ヨーロッパ大全』でも有名な社会人類学者、社会学者エマニュエル・トッド
の著作である。原著は1999年に発表されており、既刊の『第三惑星』(1983)と
『世界の幼少期』(1984)の2つをまとめたものである。序文では、トッドが後の
研究と関連付けて本書の位置づけについて述べており、発表当時どのような批判
があったのか、あるいは研究を振り返っての思いが語られている。
『第三惑星』、『世界の幼少期』で著者が主張することは、簡単に言えば「家族
構造が政治・文化・経済の様相を規定する」ということである。家族構造決定論
と言ってしまってもいいだろう。
『第三惑星』では、特に政治的イデオロギーと特定の家族構造の一致について指
摘する。なぜ、コミュニズムは特定の地域で受容されたにもかかわらず、その他
の地域では多数の支持者を得られなかったのか。逆に、リベラリズムを拒否する
のはどういったことからなのか。トッドは、世界の家族類型それぞれが無意識の
うちに含んでいる価値システム、それが受容する政治的なイデオロギーを決めて
いるからだと主張する。
アングロ・サクソンの自由な親子の結び付きと不平等な兄弟・姉妹関係を特徴と
する絶対核家族はリベラリズムと対応する。また、ドイツや北欧諸国そして日本、
韓国・朝鮮の子に対する父親の権威と不平等な兄弟・姉妹関係を特徴とする権威
主義家族は社会民主主義に親和的な家族構造なのだという。さらにコミュニズム
は、ロシアや中国などの外婚制共同体家族の地域で受容されている。
こうした家族類型とイデオロギーの一致について各章で細かく述べている。確か
に、複数の家族類型が入り混じる地域もあり、例外もある。しかし、そうした例
外についてのエクスキューズも念入りで、非常に丁寧な説明がなされていると感
じた。
続く『世界の幼少期』では、家族構造が政治的のみならず、経済レベルあるいは
人口動態の規定要因であることを示そうとする。その場合に変数間をつなぐのは、
識字率という媒介変数である。識字率は知識のリソースへアクセスできる人々が
多いことをあらわしていて、「文化的な潜在力」の指標としてトッドは扱ってい
る。また、家族構造は女性(母親)の地位を決めており、それが「教育的な潜在
力」となっている。女性が早婚で子に対して限定的な地位しかもたないのであれ
ば、子の教育もふるわない。こうして家族構造(教育的な潜在力)は識字率(文
化的な潜在力)と相関することになる。さらに、文化的な潜在力は経済的な成長
を促す要因であるため、識字率を介して家族構造は経済レベルを左右することに
なる。
本書では、一貫して家族構造から政治的イデオロギーや経済成長を説明する。そ
の揺らぎない幹があるので、いくつかの例外や反証例があるようだが非常に説得
力があった。わかりやすく知的な刺激が詰まっている。500ページをこえる分量だ
が、読んで損はない。
の著作である。原著は1999年に発表されており、既刊の『第三惑星』(1983)と
『世界の幼少期』(1984)の2つをまとめたものである。序文では、トッドが後の
研究と関連付けて本書の位置づけについて述べており、発表当時どのような批判
があったのか、あるいは研究を振り返っての思いが語られている。
『第三惑星』、『世界の幼少期』で著者が主張することは、簡単に言えば「家族
構造が政治・文化・経済の様相を規定する」ということである。家族構造決定論
と言ってしまってもいいだろう。
『第三惑星』では、特に政治的イデオロギーと特定の家族構造の一致について指
摘する。なぜ、コミュニズムは特定の地域で受容されたにもかかわらず、その他
の地域では多数の支持者を得られなかったのか。逆に、リベラリズムを拒否する
のはどういったことからなのか。トッドは、世界の家族類型それぞれが無意識の
うちに含んでいる価値システム、それが受容する政治的なイデオロギーを決めて
いるからだと主張する。
アングロ・サクソンの自由な親子の結び付きと不平等な兄弟・姉妹関係を特徴と
する絶対核家族はリベラリズムと対応する。また、ドイツや北欧諸国そして日本、
韓国・朝鮮の子に対する父親の権威と不平等な兄弟・姉妹関係を特徴とする権威
主義家族は社会民主主義に親和的な家族構造なのだという。さらにコミュニズム
は、ロシアや中国などの外婚制共同体家族の地域で受容されている。
こうした家族類型とイデオロギーの一致について各章で細かく述べている。確か
に、複数の家族類型が入り混じる地域もあり、例外もある。しかし、そうした例
外についてのエクスキューズも念入りで、非常に丁寧な説明がなされていると感
じた。
続く『世界の幼少期』では、家族構造が政治的のみならず、経済レベルあるいは
人口動態の規定要因であることを示そうとする。その場合に変数間をつなぐのは、
識字率という媒介変数である。識字率は知識のリソースへアクセスできる人々が
多いことをあらわしていて、「文化的な潜在力」の指標としてトッドは扱ってい
る。また、家族構造は女性(母親)の地位を決めており、それが「教育的な潜在
力」となっている。女性が早婚で子に対して限定的な地位しかもたないのであれ
ば、子の教育もふるわない。こうして家族構造(教育的な潜在力)は識字率(文
化的な潜在力)と相関することになる。さらに、文化的な潜在力は経済的な成長
を促す要因であるため、識字率を介して家族構造は経済レベルを左右することに
なる。
本書では、一貫して家族構造から政治的イデオロギーや経済成長を説明する。そ
の揺らぎない幹があるので、いくつかの例外や反証例があるようだが非常に説得
力があった。わかりやすく知的な刺激が詰まっている。500ページをこえる分量だ
が、読んで損はない。
2023年6月1日に日本でレビュー済み
本書は「第三惑星」「世界の幼少期」という著者の過去の著作を再掲したものです。
「第三惑星」では、人類の多様性を8つの家族構成の違い(親子関係や兄弟関係の従属性や平等性など)で分類可能とし、それらの特徴について述べています。
様々なイデオロギーが世の中にありますが、著者は各々の家族構成が特定のイデオロギーを自然発生的に生み出したと結論づけており、イデオロギーが家族構成を作り出したわけではなく、またイデオロギーが家族構成を無視して広がるわけではないことを解説しています。
また、これまでの人類学や政治学では、家族構成という人類の基本的な最少集団単位を重視してこなかったが故に、人類の多様性やイデオロギーの発生メカニズムを見極められなかった、としています。
但し、何故8種類の家族構成の違いが生まれたか、また定着したか、については、本書では「偶然」としています。ただ、この結論については、著者の同僚からの建設的な批判により、その後の研究で解き明かそうとしているようです。
「世界の幼少期」では、「第三惑星」の分析を踏まえて、家族構成の特徴(親子の関係、夫婦の関係など)により、当該エリアの経済の発展の仕方が異なること、また経済の発展が結婚年齢の上昇、識字率の向上、死亡率の低下、出生率の低下といった流れの結果として起きる、としています。
また、経済学における経済発展の理論は貨幣換算できるものだけを取り扱っており、それだけでは発展の因果関係を見誤るとしています(それでも取り扱うようになっただけましではありますが。アンガス・マディソンが過去1000年以上の経済データを収集・分析するまでは、経済学にはデータに基づく経済発展の理論はありませんでした)。
人類学における著者以外のデータ分析については不勉強なのでよく知りませんが、経済学においてはいろいろと経済発展のパラメータを特定しようという動きが一部にありますので(ウィリアム・バーンスタイン「豊かさの誕生」、ダイアン・コイル「ソウルフルな経済学」など)、これらと統合できれば、更に経済発展を含めた人類の発展のメカニズムが明らかになると思います。
何れのものも、広範かつ膨大な情報の分析に基づいた説ですので、検証可能性があるということから「科学」といえるでしょう。データに基づかない理論(仮説)も科学にとっては大事なものなのですが、理論という名の妄想もかなり多いですので、この手の著作は結構ありがたいと思います。
2009年読了
「第三惑星」では、人類の多様性を8つの家族構成の違い(親子関係や兄弟関係の従属性や平等性など)で分類可能とし、それらの特徴について述べています。
様々なイデオロギーが世の中にありますが、著者は各々の家族構成が特定のイデオロギーを自然発生的に生み出したと結論づけており、イデオロギーが家族構成を作り出したわけではなく、またイデオロギーが家族構成を無視して広がるわけではないことを解説しています。
また、これまでの人類学や政治学では、家族構成という人類の基本的な最少集団単位を重視してこなかったが故に、人類の多様性やイデオロギーの発生メカニズムを見極められなかった、としています。
但し、何故8種類の家族構成の違いが生まれたか、また定着したか、については、本書では「偶然」としています。ただ、この結論については、著者の同僚からの建設的な批判により、その後の研究で解き明かそうとしているようです。
「世界の幼少期」では、「第三惑星」の分析を踏まえて、家族構成の特徴(親子の関係、夫婦の関係など)により、当該エリアの経済の発展の仕方が異なること、また経済の発展が結婚年齢の上昇、識字率の向上、死亡率の低下、出生率の低下といった流れの結果として起きる、としています。
また、経済学における経済発展の理論は貨幣換算できるものだけを取り扱っており、それだけでは発展の因果関係を見誤るとしています(それでも取り扱うようになっただけましではありますが。アンガス・マディソンが過去1000年以上の経済データを収集・分析するまでは、経済学にはデータに基づく経済発展の理論はありませんでした)。
人類学における著者以外のデータ分析については不勉強なのでよく知りませんが、経済学においてはいろいろと経済発展のパラメータを特定しようという動きが一部にありますので(ウィリアム・バーンスタイン「豊かさの誕生」、ダイアン・コイル「ソウルフルな経済学」など)、これらと統合できれば、更に経済発展を含めた人類の発展のメカニズムが明らかになると思います。
何れのものも、広範かつ膨大な情報の分析に基づいた説ですので、検証可能性があるということから「科学」といえるでしょう。データに基づかない理論(仮説)も科学にとっては大事なものなのですが、理論という名の妄想もかなり多いですので、この手の著作は結構ありがたいと思います。
2009年読了