自己啓発書のたぐいを、あえて客観的な視点で捉え、ビジネスに活用するという手段もあります。今回は、そういう本の読み方のお話です。

数年前に話題になったので、一度か二度は「引き寄せの法則」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。きっかけになったのは『ザ・シークレット』(ロンダ・バーン著、山川 紘矢/山川 亜希子/佐野 美代子訳、角川書店)。全世界で大ヒットしたベストセラーです。

しかし、それはどのようなものなのでしょう? 自身が「引き寄せの法則」(本書ではそれを「秘密(The Secret)」と表現しています)を知ることによって「人生代最大の危機から最大の恩恵」にたどりついたという著者は、その点についてこう解説しています。

「引き寄せの法則」は自然の法則です。個人的な感情をくみ取ってくれる法則ではなく、善意の判断もしてくれません。あなたの思いを受信して、ただそれを送り返してあなたの人生経験にしているのです。「引き寄せの法則」はあなたの考えている事をあなたに還元しているのです。

『ザ・シークレット』(32ページ)

表現が大げさなので、ちょっとわかりにくい。そして、一抹の不信感を抱かせます。しかし突き詰めると結局のところ、著者が訴えたいことはとても単純です。「悪い方に考えすぎると、悪い結果を呼び込むよ」みたいなことを言われたことはありませんか? つまり、それと同じ。

全ての自然の法則と同様、この法則は完璧です。あなたが自分の人生を想像しているのです。あなたが撒く種があなたの未来を創ります。あなたの志向が種であり、その収穫はあなたの植えつける種次第で変わるのです。

『ザ・シークレット』(38ページ)

プラスの方向に思考を持って行けばその影響が返ってきてプラスの結果がもたらされるし、マイナスの場合もまたしかりというわけです。

ちなみに本書には、「波動」とか「宇宙」などという表現がたくさん出てきます。個人的にはその手の表現が苦手で、そういう言葉が出てくるだけで不信感を抱くこともあります。本書にはさして抵抗も感じませんでしたが、そういう表現が多いぶん、誤解されやすい書籍ではあるなと思ったのは事実です。

ただ先日、あることに気づきました。観点を少し変えて読んでみると、これはビジネス書として利用できるかもしれないなと感じたのです。なにしろ書かれていることはきわめて単純。だからこそ、いろんなシチュエーションに応用が効くんですね。

特に使えそうなのは、「人間関係の秘密」という章です。この章のまとめから、ビジネスにも使えそうな部分を抜粋してみましょう。

あなたがすべきことはあなたのことなのです。自分を大切にすることです。あなた自身が充足していなければ、人に分け与えることは出来ません。

人間関係を良くするためには、人の欠点ではなく、感謝できる点に焦点を合わせて下さい。その人の長所に焦点を合わせると、もっと長所が見つかることでしょう。

『ザ・シークレット』(199ページ・人間関係のまとめ)

いかがでしょうか? どちらも普通にビジネスシーンに活かせそうですよね。というわけで、別にすべてを信じなくても「使えそうなところ」だけを抜粋すればいいのだと、この本をぱらぱらとめくりながら思った次第です。

本書を手に取った方は、どんな感想をもったでしょうか。Facebookページでも下記のコメント欄でも、ぜひ教えてください。

(印南敦史)