【あらすじ】
欲望のおもむくまま女を殺しまくる変態猟奇殺人鬼チェ・ミンシク。その日も立ち往生していた女性をバラバラにしてルンルン気分。しかし、その女が超凄腕諜報員イ・ビョンホンの彼女だった事から、事態は斜め上に暴走を始める。ビョン様は諜報員時代のコネと、鍛え抜いた近接格闘技でミンシクをシメる。そして、ボコボコにした後に応急処置して逃がす。が、しばらくしたらまた捕まえて、ボコボコにした後にまた逃がす。こうやってミンシクを徹底的に苦しめようと言うのだ。しかし、ミンシクもタダで終わる男ではなく…狂気のキャッチ・アンド・リリースの果てに、二人が行きついた結末とは!?
【殺人鬼VSスパイ!これぞヴァイオレンス・アクション・エンターテイメントの傑作!】
素朴な疑問、素朴な需要から生まれる物語もある。「エイリアン」と「プレデター」どっちが強い?「フレディ」と「ジェイソン」どっちが強い?そんな疑問に応えたのが「エイリアンVSプレデター」であり、「フレディVSジェイソン」だ。今年も「カウボーイ」と「エイリアン」が闘ったらどうなる?という、シンプルな疑問から生まれたであろう「カウボーイVSエイリアン」が控えている。これらと同じ疑問がある。それは、「殺人鬼とアクションヒーロー、どっちが強い?」である。そして、この映画はそういう映画だ。
方や物語の中である種の超人として描かれ、何も悪いことをしていない人たちを勝手な都合で殺しまわるヤツ。方や誰かの為とは言え、常識を遥かに超えた超人っぷりで少々“オイタ”をした連中を殺しまわるヤツ。この二つのキャラクターが似ているが、コインの裏表のような扱いだ。どちらも観客から愛される殺人者。彼らは映画の中でしばしば激突してきた。しかし、そうなると専ら片方が片方の世界に御邪魔するという描かれ方ばかりだった。試合は常にアウェー戦。殺人鬼に翻弄されるアウトロー刑事はいつもの超人ぶりが嘘のように、走り回っただけで息を切らす。アウトロー刑事に挑戦する殺人鬼はいつもの不気味さが嘘のように、ギャーギャーわめくだけのチンピラになってしまう。この映画は違う。この映画の「殺人鬼」が「殺人鬼」のまま、「アクション・ヒーロー」が「アクション・ヒーロー」のまま、お互い全力を尽くして正面から激突する。分かる人は少ないかもしれないが、猟奇殺人鬼VSアクション・ヒーローと言えば、セガール先生の「グリマーマン」「雷神」などが思いつく。アレが更に突き詰められているモノだと考えれば良い。ジョン・ドゥVSジェイソン・ボーン、あるいはスコルピオVSケイシー・ライバック、そんなカードが組まれたのだ。面白くないわけがない。
【炸裂!近接格闘技!暴走!殺人中毒!】
本作は殺人鬼に恋人を殺された男が、怪物のような殺人鬼へ復讐する内に、自分自身も怪物になっていく…というお話だ。ニーチェ的な小難しい話が根底にはあるのだろう。しかし、では映画も倫理がどうしたとか、復讐の意味がどうとか、そういう小難しく地味な方向に行くかと言うと、これが全く違う。何しろビョン様はパルクールと近接格闘技を極めたスーパー・スパイなのだから!刃物を持った相手と相対すれば、一秒後には手首をヘシ折る。その場にある物を使ったアクロバティックな回転キックを放ったかと思えば、家の外壁をひょいひょい飛び回り、警官隊に車で突撃して「ウォンテッド」のアンジーばりのドライビング・テクニックを炸裂させる。いつもは被虐的な役どころが多い彼氏だが、今回はスティーブン・セガールとジェイソン・ボーンを足して2で割ったような最強無敵のエージェントを好演している。ぶっちゃけると「アイリス」だ。いや、最後の方になると素手で人の顔面を引き裂いていたから、もう「力王」の領域に片足を突っ込んでいる。
更に殺人鬼ミンシクもミンシクで、全編是キレっぱなし。「八仙飯店之人肉饅頭」のアンソニーに肉薄、いやもしかするとそれ以上のド鬼畜演技を披露。女と見れば襲いかかり、家には手製のギロチンを所持。たまたま出くわした殺人鬼を2対1のハンデマッチで撃破したかと思えば、友達の殺人鬼夫婦まで動員してビョン様を襲う(この作品では計7人の殺人鬼が登場し、うち5人がビョン様の近接格闘技でボッコボコにされる)。リンチを受けて血まみれになりながらも絶対に改心せず、演技の限界を超えたクライマックスの独白は、ミンシクのベスト・バウトであると断言する。また、近接格闘技の達人であるビョン様と、暴力剥き出しのミンシク、格闘シーンでこの二人の違いがキッチリと描かれ、尚且つアクションその物の完成度も高いのは恐るべき事実だ。最早韓国映画は、日本映画の手の届かない場所に行ってしまった。監督のキム・ジウンはハイパー極道映画「甘い人生」や「グッド・バッド・ウィアード」で知られる男だが、今後はこれが代表作になるだろう。少なくとも私にとっては、これこそ彼の最高傑作だ。
【総評】
尋常ではない殺人スキルを身に着けた二人が、全編テンション爆頂で暴走し、その暴力のタイフーンに巻き込まれた罪の無い人々がバコバコ死んでいく。迷惑極まりない話だが、観客的にはグレイトなストーリーだ。無論、根底にある極限の人間ドラマに思いを馳せるのも良いし、徹底的にテンパり続けるビョン様の雨に濡れた捨て犬の様な目にドキドキするのも良い。この楽しみ方の切り口の多さはどうだ。格闘・残酷・スリル・ショック・サスペンス…、これこそエンターテイメントである。また、陰湿な拷問から痛快な格闘まで、あらゆる形のヴァイオレンスがここに結集している、とも言えよう(ビョン様が殺人鬼に巴投げをかけるシーンがある)。映画の中のヴァイオレンスを愛してやまないという方、この映画はヴァイオレンスの百貨店だ。必見!
↓押して頂けると書いている人間がギロチンをセットして…
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欲望のおもむくまま女を殺しまくる変態猟奇殺人鬼チェ・ミンシク。その日も立ち往生していた女性をバラバラにしてルンルン気分。しかし、その女が超凄腕諜報員イ・ビョンホンの彼女だった事から、事態は斜め上に暴走を始める。ビョン様は諜報員時代のコネと、鍛え抜いた近接格闘技でミンシクをシメる。そして、ボコボコにした後に応急処置して逃がす。が、しばらくしたらまた捕まえて、ボコボコにした後にまた逃がす。こうやってミンシクを徹底的に苦しめようと言うのだ。しかし、ミンシクもタダで終わる男ではなく…狂気のキャッチ・アンド・リリースの果てに、二人が行きついた結末とは!?
【殺人鬼VSスパイ!これぞヴァイオレンス・アクション・エンターテイメントの傑作!】
素朴な疑問、素朴な需要から生まれる物語もある。「エイリアン」と「プレデター」どっちが強い?「フレディ」と「ジェイソン」どっちが強い?そんな疑問に応えたのが「エイリアンVSプレデター」であり、「フレディVSジェイソン」だ。今年も「カウボーイ」と「エイリアン」が闘ったらどうなる?という、シンプルな疑問から生まれたであろう「カウボーイVSエイリアン」が控えている。これらと同じ疑問がある。それは、「殺人鬼とアクションヒーロー、どっちが強い?」である。そして、この映画はそういう映画だ。
方や物語の中である種の超人として描かれ、何も悪いことをしていない人たちを勝手な都合で殺しまわるヤツ。方や誰かの為とは言え、常識を遥かに超えた超人っぷりで少々“オイタ”をした連中を殺しまわるヤツ。この二つのキャラクターが似ているが、コインの裏表のような扱いだ。どちらも観客から愛される殺人者。彼らは映画の中でしばしば激突してきた。しかし、そうなると専ら片方が片方の世界に御邪魔するという描かれ方ばかりだった。試合は常にアウェー戦。殺人鬼に翻弄されるアウトロー刑事はいつもの超人ぶりが嘘のように、走り回っただけで息を切らす。アウトロー刑事に挑戦する殺人鬼はいつもの不気味さが嘘のように、ギャーギャーわめくだけのチンピラになってしまう。この映画は違う。この映画の「殺人鬼」が「殺人鬼」のまま、「アクション・ヒーロー」が「アクション・ヒーロー」のまま、お互い全力を尽くして正面から激突する。分かる人は少ないかもしれないが、猟奇殺人鬼VSアクション・ヒーローと言えば、セガール先生の「グリマーマン」「雷神」などが思いつく。アレが更に突き詰められているモノだと考えれば良い。ジョン・ドゥVSジェイソン・ボーン、あるいはスコルピオVSケイシー・ライバック、そんなカードが組まれたのだ。面白くないわけがない。
【炸裂!近接格闘技!暴走!殺人中毒!】
本作は殺人鬼に恋人を殺された男が、怪物のような殺人鬼へ復讐する内に、自分自身も怪物になっていく…というお話だ。ニーチェ的な小難しい話が根底にはあるのだろう。しかし、では映画も倫理がどうしたとか、復讐の意味がどうとか、そういう小難しく地味な方向に行くかと言うと、これが全く違う。何しろビョン様はパルクールと近接格闘技を極めたスーパー・スパイなのだから!刃物を持った相手と相対すれば、一秒後には手首をヘシ折る。その場にある物を使ったアクロバティックな回転キックを放ったかと思えば、家の外壁をひょいひょい飛び回り、警官隊に車で突撃して「ウォンテッド」のアンジーばりのドライビング・テクニックを炸裂させる。いつもは被虐的な役どころが多い彼氏だが、今回はスティーブン・セガールとジェイソン・ボーンを足して2で割ったような最強無敵のエージェントを好演している。ぶっちゃけると「アイリス」だ。いや、最後の方になると素手で人の顔面を引き裂いていたから、もう「力王」の領域に片足を突っ込んでいる。
更に殺人鬼ミンシクもミンシクで、全編是キレっぱなし。「八仙飯店之人肉饅頭」のアンソニーに肉薄、いやもしかするとそれ以上のド鬼畜演技を披露。女と見れば襲いかかり、家には手製のギロチンを所持。たまたま出くわした殺人鬼を2対1のハンデマッチで撃破したかと思えば、友達の殺人鬼夫婦まで動員してビョン様を襲う(この作品では計7人の殺人鬼が登場し、うち5人がビョン様の近接格闘技でボッコボコにされる)。リンチを受けて血まみれになりながらも絶対に改心せず、演技の限界を超えたクライマックスの独白は、ミンシクのベスト・バウトであると断言する。また、近接格闘技の達人であるビョン様と、暴力剥き出しのミンシク、格闘シーンでこの二人の違いがキッチリと描かれ、尚且つアクションその物の完成度も高いのは恐るべき事実だ。最早韓国映画は、日本映画の手の届かない場所に行ってしまった。監督のキム・ジウンはハイパー極道映画「甘い人生」や「グッド・バッド・ウィアード」で知られる男だが、今後はこれが代表作になるだろう。少なくとも私にとっては、これこそ彼の最高傑作だ。
【総評】
尋常ではない殺人スキルを身に着けた二人が、全編テンション爆頂で暴走し、その暴力のタイフーンに巻き込まれた罪の無い人々がバコバコ死んでいく。迷惑極まりない話だが、観客的にはグレイトなストーリーだ。無論、根底にある極限の人間ドラマに思いを馳せるのも良いし、徹底的にテンパり続けるビョン様の雨に濡れた捨て犬の様な目にドキドキするのも良い。この楽しみ方の切り口の多さはどうだ。格闘・残酷・スリル・ショック・サスペンス…、これこそエンターテイメントである。また、陰湿な拷問から痛快な格闘まで、あらゆる形のヴァイオレンスがここに結集している、とも言えよう(ビョン様が殺人鬼に巴投げをかけるシーンがある)。映画の中のヴァイオレンスを愛してやまないという方、この映画はヴァイオレンスの百貨店だ。必見!
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