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アイデア力を上げる8つのポイント

倉下忠憲
ジャック・フォスターの『アイデアのヒント』を読み返していました。相変わらず良い本です。


本書にはさまざまな、「アイデア力」アップのためのポイントが紹介されています。

今回は、それを私なりにまとめ直してみました。合計で8つあります。

  1. 楽しむ
  2. 答えがあると仮定する。しかも複数
  3. 句点を疑問符にする癖を
  4. 生活に異物を取り込む
  5. 目を見開いて歩き回る
  6. 出し過ぎぐらいがちょうどいい
  7. 自在に制約を操る
  8. 質問とは魔法である

楽しむ

しかめっ面ではアイデアは逃げていきます。ブレストでも楽しい気分でないとなかなかアイデアは出てきません。眉を寄せて考え込むのは、アイデアを絞り込む時だけで十分です。

アイデアを出す際は、気楽な気持ち、楽しむ気持ちで臨む必要があります。

ちなみに、怒った顔やしかめっ面を浮かべるのは認知的負荷が高いそうです。つまり、脳に余計な負担がかかっているということですね。ということは、あながち単純な精神論とは言えないかもしれません。

答えがあると仮定する。しかも複数

まず、考えていることの答えがある、と仮定します。アイデアのスタートはそこからです。

「売上げを上げられるかな」と心配したり「売上げなんて上げられないよ」と投げ出すのではなく、「売上げを上げる方法があるとする。とすれば、それはどのようなものか」というスタンスを取るわけです。前者二つの心的態度ではアイデアなど出てきようもありません。

また、アイデアは試験問題とは違います。答えはいくらでもあります。売上げを上げる方法だって、一つや二つではないでしょう。たった一つの正解を見つけ出そうと考え始めると、思考の歩みは止まってしまいます。

句点を疑問符にする癖を

句点とは「。」のことですね。これを「?」に変える癖を持っていると、アイデアの種が見つけやすくなります。

表現を変えれば、”当たり前”に疑問を投げかける癖を付けるということです。斬新なアイデアはいつでも「常識外」のところからやってきます。常識を「絶対に崩せないもの」だと認識していては、アイデアの生まれる余地はとても小さいものです。

疑心というよりも、イノセントに「それってなぜそうなんですか?」と質問できれば、余地を広げていけます。

生活に異物を取り込む

普通の人の生活は、だいたい型どおり回っていくものです。慣性が働いている中は、とても楽チンですが、その代わりアイデアの素材はあまり増えていきません。

発想の基本は連想ですが、連想は自分の記憶内にあるものしか引き出せません。ということは体験しているものが多様で数が多いほど、アイデアの幅が広がっていくということです。また、”異物”に触れると、自分の中の”当たり前”が崩れていくこともあります。

新しいことにチャレンジしてみる。嫌っていることをちょこっとだけやってみる。そういうことを5%ぐらいは取り入れるとよいかもしれません。

目を見開いて歩き回る

好奇心のアンテナを広げて歩き回れ、ということです。そうでないと、人は多くのものを目に入れながら、結局は見ていないという事態になります。これではアイデアの経験値は増えません。

できれば、歩き回る際は(というか日常生活中は常時)ノートを持ち歩くとよいでしょう。そこに見聞きして心に残ったものを書き留めておくのです。

出し過ぎぐらいがちょうどいい

下手な鉄砲も数打ちゃ当たる。実にいい言葉です。当たるのであれば、別に何だって良いでしょう。弾と違ってアイデアを出すのは実に安価です。

はずすのを恐れて最初の一発を撃てなければ、もちろん的に穴を穿つことはできません。それにたくさん打っていれば、「もうちょっと右だな」とか「今度は上すぎた」ということがわかります。多産がともかく大切です。

「あの人、アイデア出過ぎじゃないの」と言われるぐらいになれば完璧でしょう。

自在に制約を操る

アイデアと制約は切っても切れない関係があります。制約がなければ、発想は生まれようもありませんが、かといって制約を見誤るとこれまた発想が生まれてきません。扱いがとても難しいものです。

ただ、次のようなことは言えます。

制約は絶対に動かせない塀ではありません。むしろ、差し替え自由な柵のようなものです。多くの人が前提条件としているような制約でも、案外ぱぱっと抜いて、別の場所に移し替えることができます。逆に他の人が考えつかないようなところに制約を設けて、新しい発想を導き出すこともできます。

使い方はあなた次第、ということです。

質問とは魔法である

「うまく問題を設定できたら、半分は解決したようなものだ」という言葉がありますが、よい質問はすばらしい答えを導き出してくれます。そういう意味で尖った質問は確かな力を持っています。

しかし、「魔法」とはそういう意味だけを指しているわけではありません。

RPGでは、火に強い敵がいれば氷の魔法を、氷がダメながら雷を、時には全体を巻き込む地震を、と状況に合わせて魔法を使い分けていく必要があります。「これ一つで何でもOK」という夢の魔法は存在しません。

質問もそれと同じです。時に深掘りする質問を、時に広げる質問を、時に意外な質問を、とさまざまな状況で使える質問のバリエーションを増やしていく必要があります。

さいごに

「アイデアいっぱいの人は決して深刻にならない」

とはフランスの詩人ポール・ヴァレリーフランスの言葉です。

おそらくアイデアメーカー(アイデア多産の人)は、問題にぶつかったとき「どうやって解決してやろう」と腕まくりをしながら、あれやこれやとその問題をいじくり回すことに夢中で、深刻になっている暇がないのでしょう。

さまざまなところに「問題」を見つけ、その答えを探さざるを得ないような人が、アイデアメーカーとなっていくに違いありません。

▼今週の一冊:

すごくマーケティングの香りがするタイトルですが、実際読んでみるとなかなか面白い本です。マインドハック系につながるお話も多く見受けられます。

人間が持つ「意志力」に注目し、その限界を知ることで、物事に挫折するのは自分がダメ人間だからではない、という認識を生み出すのがスタートラインになっています。そこから、自己コントールの性質を知り、それを鍛えることで、すこしでも自己コントロールを有用に働かせるための方法が紹介されています。

第八章の、意志力はうつる、というのは結構大きなポイントだと思います。このソーシャルメディア社会においては。


▼編集後記:
倉下忠憲



あっという間に一月も半ばですね。

終わらない、終わらないと言っていた原稿も徐々に終わりが見えてきました。まあ、その山を越えたら、また小さな山がたくさん待っているのは間違いないのですが・・・。それでも気分的には楽になり、足取りも軽やかになりつつあります。ゴールは、目に見えるだけで何かしら心理的な効果を発生させてくれますね。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。


同化と調節、どちらが有効?