ブログは死なず、ただ消え去るのみ:Blog never die, it just fades out

ブログは死んだ。これからはTumblrだ。 : ギズモード・ジャパン」という衝撃的なタイトルのエントリーが話題です。しかも我がギズモードの記事だし、比較対象が Tumblrだし。

ということで、これに対するアンサーエントリーを書いてみたいと思います。

アメリカでは2003年頃、日本では2005年頃にブログブームが訪れます。そして巻き起こったのが「ウェブログか、ブログか」論争。

ブログプラットフォームの雄、シックス・アパートの公式見解は「ウェブにログを残す」「WEB LOG」のため「ウェブログ」と表記するのが正しいとしていました。そのため「ブログ」と言われるとわざわざ「ウェブログ」と言い直すほどの徹底ぶり。

ところがアメリカも含め、次第に短縮形の「BLOG」「ブログ」が主流となります。

それをうまくもじり、シックス・アパートでは「WE (LOVE) BLOG」 というマーケティングを展開したり、この点でもまだWEBLOGに対してのこだわりが残っています。

当時勃興した「WEB2.0」というバズワード、そして終焉の速さを見るにつけこのネット業界がいかにサイクルが短いかを推し量れます。ブログブームと同時かすぐ後にやってきたSNSブームによりmixiは上場、一気に時代の寵児となります。ここでライバルだったGREEはSNS競争に敗北、負け犬の烙印を押されました、ええ、この時は。

そして2007年頃から発生したのが、Twitterに代表される「ミニブログブーム」。それまでブログサービスで出来上がっていた雰囲気、コメントやトラックバック、RSS出力、デザインテンプレートといった機能をバッサリカット、ただただ今を発信するツールに特化したという意味で「ミニ・ブログ」という呼び方をされました。

Tumblrもほぼ同時期に開始していましたが、特に日本においては一部のユーザーが特定の使い方を行い独自文化を築いたこともあり、この時はTwitterのように一般的にはなりませんでした。ええ、この時は。

ブログ、ツイッターを端に発したクチコミマーケティングは、ペイパーポストの危険性を内包、自滅します。

クチコミマーケティングをシャアとセイラで例えると ([の] のまのしわざ)

そして日本ではふと気づくとモバイル業界が活性化、GREEがSNSではなく携帯ゲーム会社として復活、DeNA・モバゲーと血みどろの争いをしつつ巨大化するなんて、数年前は本当に想像もつきませんでした。

iPhoneを端に発するスマートフォンの普及も激しく、特に2011年はAndroid端末が粗製濫造、普及率が上がり、テッキーな人だけでなく老若男女問わず使い始めています。

そして迎えた2012年。

8年続いた、アルファブロガーアワードが終焉を迎えます。

アルファブロガー・アワード2011を受賞しました! #aba2011 ([の] のまのしわざ)

これは一つの象徴的な出来事。ブログの「個人の情報発信の場」としての特別性・優位性が、ブログを作って牽引したシックス・アパートも、影響力のあるブロガーをまとめてメディア化するAMNすらも終わったと烙印を押したことに他なりません。

さらにここに来て、トドメの一撃。

上位100ブログの半数がWordPress~「TypePadとMovable Typeは消滅」予測も -INTERNET Watch

ブログ業界を牽引したはずのシックス・アパート社のサービス、TypePad、そしてソフトウェア Movable Typeは消滅との予測です。

これに対し、シックス・アパート代表 @nseki氏、アルファサード代表 @junnama氏が反論もしています。

「米国トップ100ブログの7つがMovable Typeを使っている」という調査結果への私的考察 - Six Apart ブログ

なぜ僕は WordPress を使わないで Movable Type を使い続けるのか。 - Junnama Online

ただこの論点はブログ業界の中での話。MTかWPか、ダイナミックパブリッシングか、スタティックHTMLか、テンプレの書き方はどうかといった話は閲覧者にあまり関係のないことです。

MTかWPか、どちらが技術的優位性があるとか、シェアがあるとか、実はそんなこと閲覧者・購読者は興味ありません。本来ブログは読んでくれる購読者に対してどんな価値を提供できるか、そこがポイントであるはずなのに、そういったコンテンツの議論とは別の次元の話になってます。オウンドメディアや個人のオレメディアの手段が多様化した現在、代替手段はいくらでもあり、内部抗争にあけくれたブログ業界終焉の原因はここにあるのかもしれません。

例えていうなら旧日本軍のようなもの。海軍と陸軍とでいがみあい、戦闘機をそれぞれ独自開するなど、しまいには「内部抗争の合間にアメリカ軍と戦っている」と揶揄されたアレです。

私が思い描いてた未来は、ブロガーと呼ばれる人がブログ活動を通して経済的に独立し、独自の専門性と視点をもってジャーナリズムを展開する、新しいメディアの世界です。そういった人を「プロブロガー」と呼ぶならば、日本で実際にそうなれた人はほんの数名であり、兼業ブロガーがほとんどというのが現実です。

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そしてこれから先、プロブロガーが爆発的に増える見込みはありません。せいぜい上記のネタフル・するぷ本を参考に地道な努力を積み重ねていくしかありませんし、努力に応じた結果がでるかどうかはまったく保証されていません。そういった意味では一時のブームのブログは死んだ、といってもいいでしょう。

しかし本当にブログは死んだのでしょうか?

「ブログ」とは、WEBLOGの短縮形「BLOG」のことです。「WEB2.0」というバズワードは消えました、しかしその概念は「クラウド」となって今もまた注目されてます。SNS競争に敗れたGREEはソーシャルゲームで復活しました。当初Twitterとは対照的に注目も浴びなかったTumblrが今、時代の寵児となろうとしています。ならば、その逆もあるのではないのか?

消えていくのは「ブログ」という言葉。ブログがCMSからブログメディア、今を映し出す実況中継的利用であったりと広義な使われ方をしたのに対し、そのひとつひとつが細分化し、専門的になっていく上で言葉が消えていくのは自然なこと。

しかしそのもともとの精神、WEB LOG、ネット上にログを残すこと、はなくなりません。いや、我々はログを残さねばならないのです、後世に伝えるためにも。

まだだ、まだ終わらんよ!

我々のWEB LOGはまだ始まったばかりなのです。

【関連アーカイブ】

[の] のまのしわざ: weblog アーカイブ

お分かりのように、カテゴリーは「weblog」です。

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