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「女の子がやってはいけない一番悲しいことは…」エマ・ワトソンの"名言"拡散、でもソースをたどると…

Twitterでは2万RTを超えている。

10月11日の国際ガールズデーに合わせ、イギリスの女優、エマ・ワトソンの「名言」が拡散している。

「女の子がやってはいけない一番悲しいことは、男性の為に頭の悪いふりをすることです」というもので、彼女が国連でスピーチをした際の写真とともに、ファンTwitterが掲載した。

国会議員もリツイートするなどし、10月12日午後3時現在で2万RTを超えている。ただ、この「名言」のソースは不明瞭だ。

エマ・ワトソン『女の子がやってはいけない一番悲しいことは、男性の為に頭の悪いふりをすることです。』 今日10/11は #国際ガールズデー #InternationalGirlsDay

エマ・ワトソンは女優としてだけではなく、フェミニストとしての活動にも積極的だ。2014年7月に国連のUN Women親善大使に任命され、若い女性のエンパワーメントやジェンダー平等を推進してきている。

ツイートでは、エマ・ワトソンが2014年9月20日に国連本部で男女平等に関するキャンペーン「HeForShe」に関するスピーチをした際の写真を引用している。

しかし当時、彼女はこのような発言はしていない。

同じ文言でGoogle検索をしてみると、いくつかのキュレーションサイトがヒットするが、どれも「エマ・ワトソンの7つ名言」などのサイトで、やはりソースはわからない。

海外キュレーションサイトでも拡散

BuzzFeed Newsが調査を重ねていくと、海外のキュレーションサイトでも2011年ごろから頻繁にこの「名言」が引用されていることがわかる。その英文は以下の通りだ。

The saddest thing for a girl to do is to dumb herself down for a guy.

日本語訳すると「男性の為にバカみたいに振る舞うのは、女の子として一番悲しいこと」となる。

この英文はエマ・ワトソンが2014年に国連スピーチをして以降、BBCMarie Claireなどをはじめとするサイトでも紹介されている。

しかし、どこでの発言かは明記されていない。やはりソースは、不明だ。

初出はハリー・ポッターのファンサイト?

さらに調査を重ねていくと、この英文は2006年11月12日に、ハリー・ポッターのファンサイトに掲載されていたことがわかった。

The Leaky Cauldron」というサイトでは、エマ・ワトソンがオクスフォード・ユニオン(同大の学生弁論団体)で講演した内容が紹介されている。

ハーマイオニーのキャラクターを演じる際に大切にしていることを問われた時に答えたという内容が、出回っていた英文そのものなのだ。

彼女は、ハーマイオニーの性格を一般化した上で、以下のようなことを答えたという。

‘She bosses the guys around’ and makes having a ‘brain not beauty cool.’ Although ‘slightly socially inept’ Hermione is ‘not ashamed of herself.’ Emma says that the saddest thing for a girl to do is to dumb herself down for a guy. Hermione wouldn’t do it, so neither should anyone else.

「彼女は男の子をリードをして、美しさよりも賢さでクールになった子です。少し世間から見てずれているハーマイオニーは、彼女自身のことを恥ずかしいとは思っていいません」

「エマは言いました。男性の為にバカみたいに振る舞うのは、女の子として一番悲しいこと。ハーマイオニーはそんなことはしない。誰も、そうすべきではないのです」

当時のログは残っていないが…

オクスフォード・ユニオンの公式Facebookを見る限り、2006年に、エマ・ワトソンが講演をしていたことは事実のようだ。

出回っている名言は、いわゆる「地の文」のかたちで書かれている。ファンサイトの記者が、どこまで正確に記録したか、客観的に確認できない。

実際に彼女がどういう言葉を使ったのかを調べようとしたが、当時の具体的なログや動画などは、Googleで期間指定検索をした限りでは見当たらなかった。

とはいえ、彼女が同趣旨のことを発言していた可能性はある。2014年のスピーチでも、以下のようなことを語っているからだ。

もし、男性として認められるために男性が攻撃的になる必要がなければ、女性が服従的になるのを強いられることはないでしょう。もし、男性がコントロールする必要がなければ、女性はコントールされることはないでしょう。


男性も女性も、繊細でいられる自由、強くいられる自由があるべきです。今こそ、対立した二つの考えではなく、広範囲な視点で性別を捉える時です。


私たちが私たちではないものでお互いを定義するのをやめて、ありのままの自分として定義し始めたら、私たちはもっと自由になれるのです。これが、「HeForShe」そのものなのです。自由であることなのです

BuzzFeed Japanは10月11日の国際ガールズ・デー(International Day of the Girl Child)にちなんで、2018年10月1日から12日まで、ジェンダーについて考え、自分らしく生きる人を応援する記事を集中的に発信します。「男らしさ」や「女らしさ」を超えて、誰もがなりたい自分をめざせるように、勇気づけるコンテンツを届けます。