「学校体育・スポーツ施設」は、全国の学校が所有するスポーツ施設のことで、学校にある運動場や体育館、水泳プールなどのことです。学校体育・スポーツ施設の設置数は、スポーツ施設全体の6割。体育の授業や部活動などで使用されることがほとんどですが、近年では地域住民やスポーツクラブに貸し出す学校も増えてきました。特に、都心部などではスポーツができる場所は限られているため、学校体育・スポーツ施設は地域住民の健康増進にも大きく貢献しています。

「公共スポーツ施設」とは、地方自治体（都道府県・市区町村）が管理し、税金で建設・運営されるスポーツ施設のことです。名前に「公共」という言葉がつくことから分かる通り、広く地域住民に利用されることを目的としています。税金で施設の運営費などが賄われているため、その地域の住民であれば安価に施設を利用できるのも特長。近年では、自治体がスポーツ施設を所有しながら、運営や経営を「第三セクター」と呼ばれる法人に任せるケースも多数見られるようになってきました。例えば、横浜DeNAベイスターズの本拠地として知られる横浜スタジアム（神奈川県横浜市）は、横浜市の所有ですが、市などが出資する第三セクターである株式会社横浜スタジアムが運営・管理を行っています。

「民間スポーツ施設」は、民間の事業者が所有・運営を行うスポーツ施設です。社員の福利厚生のために施設を設置している企業もありますが、多くの企業はビジネスのためにフィットネスクラブやゴルフ場、スキー場などのスポーツ施設を経営。施設数では、学校体育・スポーツ施設や公共スポーツ施設に劣るものの、スポーツ産業という点で日本において重要な役割を担っています。

日本は、「スポーツ立国」（スポーツを普及して人々の健康促進とアスリートの育成を目指す国家戦略）の実現を目指し、スポーツの普及による健康増進、スポーツ産業の活性化への取り組みを強化。国は2025年までに、スポーツ市場規模を15兆円まで引き上げることを目標とし、スタジアムやアリーナといった大型スポーツ施設の改革、スポーツ団体の収益力向上などの施策を進めています。
商業施設・保育園などをスポーツ施設に併設するといった複合施設化の他、5G技術などの先進技術の導入などが具体的な改革例です。京都府立京都スタジアム（京都府亀岡市）、愛知県新体育館（愛知県名古屋市）などがスタジアム・アリーナ改革のモデル施設として選定されています。

現代では、地域住民が自主的に運営・活動を行う「総合型地域スポーツクラブ」も増加。「令和3年度総合型地域スポーツクラブに関する実態調査」によると、2021年（令和3年）時点での総合型地域スポーツクラブは3,583にも上ります。全市区町村数に対して、総合型地域スポーツクラブが存在する市区町村数の割合は8割を超え、全国的に地域密着型のスポーツクラブが増加。こうした総合型地域スポーツクラブの増加に伴い、活動場所となるスポーツ施設の需要も高まると予想されるのです。

スポーツ施設の需要が高まる一方、スポーツ施設全体の施設数は減少傾向にあります。「平成30年度体育・スポーツ施設現況調査結果の概要」によると、体育・スポーツ施設は1996年（平成8年）から2018年（平成30年）まで連続で減少。内訳を確認すると、特に学校体育・スポーツ施設及び公共スポーツ施設の減少が顕著です。少子高齢化の影響でそもそも学校施設が少なくなっていることや、老朽化に伴う施設の閉鎖などが減少の要因と考えられます。今後、すでにある学校施設や公共施設を上手く活用しつつ、民間が運営する魅力的なスポーツ施設の拡大にも期待が集まっているのです。