1200チームを分析:常勝軍団に不可欠なのは、名監督でもスター選手でもない

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献身的にチームを支えた「サンアントニオ・スパーズ」のティム・ダンカン(Tim Duncan)選手は、まさに理想のキャプテンだ。

Mark D. Smith/USA TODAY Sports

  • スポーツ史に残る成功を収めたプロチームを分析した結果、チームの勝利には優秀なキャプテンが不可欠であることが判明した。
  • 最も優れたキャプテンは、自分のエゴのためではなく、チームのためにプレーする。
  • 優れたキャプテンがもたらす影響は、軍隊や職場にも当てはまるようだ。

好きなプロスポーツチームを思い浮かべて欲しい。そのチームが最高なのはなぜだろう?

理由には、一生に一度、出会えるくらいの超一流選手、素晴らしい監督、優秀なフロントなどが浮かぶだろう。

ウォール・ストリート・ジャーナルの編集者、サム・ウォーカー(Sam Walker)氏も、時代を超えて大成功を収めてきたプロスポーツチームの共通点を探るプロジェクトを始めた時、そう考えていた。このプロジェクトは同氏が長年温めてきたもので、11年前に始めて以来、1880年代までさかのぼって、1200以上のチームを分析してきた。

同氏は、最も成功したチームには、ある1つの共通点があることを発見した。優れたキャプテンだ。

同氏の著書『The Captain Class』は研究の成果をまとめたものだ。その中で、ウォーカー氏は、史上最強の常勝軍団、16チームについて、同氏が何を考えるに至ったかを紹介している。

スポーツチームすべてにキャプテンがいるわけではないが、ウォーカー氏の分析は、キャプテンがいる、いないにかかわらず、明確にチームリーダーの役割を果たしている選手に当てはまる。

「歴史的な成功を達成し、維持しているチームにとって、もっとも重要な要素は、リーダーを務める選手が持つ性格だ」と、ウォーカー氏は記している。

同氏は、チームを指導し、戦略を定める監督の重要性を軽んじているわけではない。しかし、過去の例を見る限り、優勝請負人として実績を持つ監督でも、リーダー的な選手が不在のチームではその手腕を発揮できていないと同氏は述べる。そして、チームが常勝軍団となるか否かは、監督よりもキャプテンの資質の高さが明らかに密接に関係していた。

一流の監督は、「戦術を革新して、ゲームを再構築する可能性を示したり、個々の選手よりも強い影響力を発揮したり、あるいは、素晴らしいことを成し遂げるよう、自らの言葉で選手を鼓舞してきた」とウォーカー氏。

「しかし、スポーツの世界では、このような一流の指導者が偉大な成果を収めることができるのは、フィールドに彼らの代役を務める選手がいる時のみだ」

同様に、膨大な費用を費やして各ポジションに最高の選手を獲得し、チームをつくることは、賢いやり方とは言えない。これは2000年代初頭の「レアル・マドリード」が良い例だ。この金のかかる戦略で数年は勝利を重ねたが、フロントは単にスター選手を集めるだけでは不十分だと気づいた。レアルは、この戦略を2007年にやめた。

ウォーカー氏が分析した16のトップチームは、いずれも、自らのエゴのためでなくチームのためにプレーするキャプテンを擁していた。例えば、NBAサンアントニオ・スパーズのティム・ダンカン(Tim Duncan)のような選手だ。ダンカン選手は、年俸アップや華々しい記録、メディアからの注目などを犠牲にして、チームのために尽くしたとウォーカー氏は述べている。

ウォーカー氏によると、ダンカン選手のような優れたキャプテンは、以下の7つの資質を備えている。

  • 並外れて粘り強い
  • ルールの限界までプレーする
  • 縁の下の力持ち的な役割を引き受ける
  • チーム全員とはっきりとコミュニケーションする
  • 言葉ではなく行動でチームのモチベーションを上げる
  • 強い信念を持ち、人と違うことを恐れない
  • 自らの感情をコントロールできる

こうしたウォーカー氏の分析結果は、熱心なスポーツファンにとっても、そうでないファンにとっても、驚きかもしれない。だがこれは、軍隊や企業における組織論と非常に似ている。

ウォーカー氏の著書

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アメリカ海軍の特殊部隊ネイビー・シールズの元指揮官で、『Extreme Ownership』の共著者でもあるリーフ・バビン(Leif Babin)氏は、「悪いチームなどない、悪いリーダーがいるだけだ」と断言する。そして実例として、同氏が教官としてシールズの訓練を指導していた時のことをあげた。

その訓練は、7人1組でチームを組み、手こぎボートによるレースを休憩なしで繰り返し行う、非常に過酷なものだった。何度かレースを行うと、1位と最下位はいつも同じチームが占めるようになった。そこで、バビン氏ら教官は、この2つのチームのキャプテンを入れ替えた。するとわずか数レースで、1位と最下位のチームが入れ替わった。

バビン氏は、シールズの候補生は全員、優れた能力を持っているが、能力を最大限引き出せるか、全く引き出せずに終わってしまうかは、リーダーのコミュニケーション能力や情熱にかかっていると指摘した。

著名な経営コンサルタントで『まず、ルールを破れ—すぐれたマネジャーはここが違う』の共著者マーカス・バッキンガム(Marcus Buckingham)氏は、企業の成功を左右する最も重要な要素は、CEOでも、優秀な社員でもなく、チームマネージャーたちだという考え方でキャリアを築いてきた。

ウォーカー氏の分析に例えると、マネージャーはキャプテンに相当し、CEOは監督に相当する。つまり、すべてはチームを成功に導くために、トップからの指示を的確に伝え、メンバーとともに戦うという、重要な役割を担う人次第ということだ。

プロスポーツチームでも、企業でも、ウォーカー氏が発見したチームに関する基本的な真実は次のとおりだ。すなわち、トップの強力なリーダーシップは重要だが、それが効果を発揮するのは、現場に優れたリーダーがいる場合だけだ。

[原文:An analysis of the 16 best sports teams in history shows the most important person on a team isn't its coach or best athlete

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ)

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