ダ・ヴィンチ×ほぼ日刊イトイ新聞 共同企画 中島みゆきさんとの、遊び時間。 『真夜中の動物園』をめぐる120分。
その9 ナイショ。
糸井 『真夜中の動物園』、ああ、
いいアルバムだなあ、本当に。
どれが核になったんですか?
中島 うーん‥‥。
たぶんお聞きになる方で
どこが肝というのは
違うかもしれないですね。
糸井 普通に考える考え方と
そうじゃない考え方とあって、
普通に考えるとラストの歌
(「負けんもんね」)なんですよね。
ご本人はいかがですか?
中島 ナイショ。言わないでおきましょう(笑)。
糸井 内緒ですか、ああ。
混じっているんですよね、
いろんなふうにね。
中島 ね。
── みゆきさん、同時期に作ったものじゃなくて
ある程度長いスパンであったものから
集めたとさっきおっしゃいましたけど。
中島 書いたときには、
自分に取り込み切れていないで、
充電中で置いておいたのがあるんですよ。
「あ、そろそろ充電できたかな」
っていうので、入れると。
熟成待ちをしただけですね。
糸井 そのときには直すんですか、今なりに。
中島 語尾ぐらいのことは、ちょろっとね。
糸井 作ったときに、すでにあとで
直すかもしれないなと思って
作るときもあるんですか?
暫定案みたいに。
中島 完パケにしないで
置いているときはありますね、うん。
ここから先へ進まない、
そのうち進むでしょうって、
充電しとこうみたいなのが、はい。
糸井さんもそういうのはあるんですか?
糸井 あります、あります。
本職ではないですけど、ただ好きで考えたり、
いつかなにかに使うかもしれないなっていう
アイデアは、手帳に書いて、
書きっぱなしにしておいたり、
あるいは自分にメールを入れといたり、
っていうのはあって。
「あのときのあれ、今だったらいいのにな」
と思って出しても、時期が来ないと、
やっぱり、まだダメとか、
あるいはずーっと経ってからスッと使えたり。
中島 ありますね。
糸井 なんですかね、あれ。
商売じゃなく仕事してるときですよね。
中島 別に、売る勘定で、
電卓叩いて考えているわけじゃなくて、
かいわれ大根を今日食卓に出すか、
植えちゃって待つかっていうぐらいの
ことなんですよね。
別にそれがお金になるからとか、
ならないからとかっていうんじゃなくて。
糸井 機能しなくても、
考えたいから考えているっていう。
“お役”がないんですよ。
見つかっちゃったものを、
ぼくは見たぞと言ってメモしとくみたいな。
中島 ふんふん。
糸井 自分でも、あとでわかったっていうことって
あるんじゃないですか?
中島 ありますね。
糸井 ワンアイデアを出したときの、
ものすごい気持ちよさ。
アイデアのかたちが、まだないけれども、
「なんか見えた気がする、光が」
って言って、今度は
たたみかけるようなたとえで、
壁面を作っていくわけでしょう。
すると、壁面を作ったことで
ブリリアントカットみたいなものができて、
最初のアイデアがかたちづくられると、
「ああ、こんなに面白かったんだ」。
それは自分にとっても発見になる。
中島 ふふふ。
「あ、明るくなった!」っていうときに、
他のことしなきゃなんないときって
困りますよね。
糸井 そうかー。そうですよね、
社会との接点がありますしね。
中島 「紙と鉛筆!」って思ったときに、
コンサートで歌っていたら、ダメでしょう。
ちょっとブレイクして待っとってねって
わけにいかないでしょ。
ありません? そんなの。
アッと思ったとき、
新幹線に乗る瞬間だったりなんかすると、
乗りこんじゃったら
「忘れちゃったぁ‥‥」みたいなこととか。
糸井 言葉にして残せるものと、
残せないものと、
両方混じっていますからね。
メモを書いたけど、
俺、こうじゃないんだよって思うときもある。
そのときには、
“こうじゃないマーク”かなにか
付けておくべきでしょうね。
中島 そうですね、はい。
糸井 「もっといいことなんだよ、
 俺が考えたのは」って。
でも、そういう人だから
やりっぱなしになるんだろうな。
中島 なるんですね。
散らかる、散らかる。
糸井 やがて、似たようなことしか
言ってないなってことも気付くんですよ。
このアルバムもそうなんだけど、
あんまりいろんなことは言ってないですよね。
中島 言いようがないですもん、はい。
おんなじことを言ってる気がする。
糸井 そうですよね。
ひらめきの種類はいっぱいなんだけど。
中島 人間、変わったわけじゃないですからね。
糸井 土壌みたいなものは一緒。
根っこが一緒か。
チカチカ、チカチカ、
いろんな花が咲くけどね。
‥‥でもね、そんなこと言っててもね、
ちょっと本当にもう、
一緒に話をしてるのが
失礼だったって今思います。
ぼくはねー、
もうちょっといい加減(笑)。
中島 なんすか、なんすか?
そうおっしゃるなら、うちだって、もう、
いい加減のへ〜らへら、ですよ(笑)。
糸井 おそれ多くなっちゃって、今。
同じに語ったところが。
中島 深く考えない魚座ですから。
糸井 そうかなぁ。

(つづきます)
2010-10-25-MON
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