神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

大日本帝国にBUNSOKU!(その2)

いきなり(その2)から始まるが、(その1)は畏友の書物蔵氏が『文献継承』17号(金沢文圃閣、2010年11月)に書いているから、詳しくはそれを、とりあえずは「書物蔵2008年3月10日」を見てちょ。

戦前、藤山工業図書館という私立の専門図書館があった。昭和2年9月に芝区白金台に開館し、19年3月には慶應義塾に寄附されている。鉄筋コンクリート4階建て(一部5階建て)で、建て坪193坪、延べ坪573坪。普通閲覧室は地下室及び1階にあり、収容人員は380名、特別閲覧室は2階にあり、収容人員は60名。昭和2年に7枚組の絵葉書が出ており*1、そのうち5枚は「中央区立図書館」のホームページで見られる*2。誰ぞは、持っているかしら。

さて、この藤山工業図書館内に財団法人最新工学普及会(現在、東工大にある財団法人学術文献普及会の前身)があった。同館の設立者藤山雷太の伝記である西原雄次郎編『藤山雷太伝』(藤山愛一郎、昭和14年12月)によると、

その名の示す通り世間一般の図書館とは趣を異にし専ら学者実務家の為めに工業上の参考図書を提供せんとするものであつて、範を倫敦市サウス・ケンシントンに在るサイエンス・ライブラリーに採つて居る。
(略)同館ではインフォーメーション、サービスをして居るのに倣ひ、藤山工業図書館でも館内に財団法人最新工業(ママ)普及会を置き、枢密顧問官工学博士眞野文二氏を名誉会長、加茂正雄博士を会長とし、山内不二雄帝大教授を副会長とし、昭和四年以来「最新工業(ママ)文献摘録通信」と称する機関雑誌を月四回発行し、新着外国誌掲載の論文を摘録してカードとし、諸方に通信すると共に、藤山工業図書館編輯の最新内外工業(ママ)雑誌内容総目録及び邦訳索引を毎日発行して、新着内外工業雑誌の全内容を速報して居る。
工業図書館は学者の相手となるよりも、寧ろ一般の工場会社等直接生産にたづさわつて居る人に役立つのを目的として居るから、単行本よりも定期刊行物に重きを置き、現在約七百種の欧米工業雑誌と略同数の本邦工業専門雑誌とを備へ、毎月約千に近い新刊誌が到着して居る。

『最新工学文献摘録通信』は、NDL−OPACによると、昭和4年11月創刊のようだ。これとか、『最新内外工学雑誌内容総目録』は、工学分野に限定されてはいるが、『科学技術文献速報』(BUNSOKU)の祖形に当たるのではないかしら。

*1:『図書館学関係文献目録集成』による。

*2:同ホームページの「資料の検索」で「藤山工業図書館」を検索。

堺利彦の告別式での非戦論

黒岩比佐子さんは、『パンとペン』(講談社)の412頁で、堺利彦の告別式において、真柄が謝辞で「帝国主義戦争絶対反対」と口にしたところで、警官に中止命令を受けたに違いないと推定している。ところで、斎藤茂吉が堺の告別式について日記に書いている*1

昭和8年1月27日 かへりて午食、それより堺利彦先生の告別式にのぞみて四時までゐたり。いろいろの人の演説、弔詞などを読む。非戦論などいろいろありたり。

「非戦論」だから、日露戦争時の非戦論のことか。真柄が述べた堺の遺言である「帝国主義戦争絶対反対」とは別と思われるが、紹介しておこう。

*1:片仮名書きを平仮名書きに改めた。