日本IBM、「業界最速」のメインフレームを発売

日本IBMはメインフレーム製品「System z」の最新モデルとなる「IBM zEnterprise EC12」を発表した。

» 2012年08月29日 18時05分 公開
[岡田靖,ITmedia]
IBM zEnterprise EC12本体筐体。製品名に含まれる「12」の数字は、IBMにとって12世代目のメインフレームを意味するという

 日本IBMは8月29日、メインフレームの最新モデル「IBM zEnterprise EC12(zEC12)」を発表、同日から販売を開始した。価格は最小構成で約1億円としている。

 zEC12は、2010年7月に発表した前モデル「IBM zEnterprise 196(z196)」の設計を受け継ぎ、処理能力や機能を向上させた新モデル。同社は「業界最速メインフレーム」をうたう。z196と同様にメインフレーム、UNIXサーバ、x86サーバの各プラットフォームを単一システムとして管理でき、運用負荷や消費電力の低減に貢献としている。出荷開始は9月20日の予定だ。

 zEC12ではプロセッサの動作クロック周波数を、z196の5.2GHzから5.5GHzへと高め、プロセスルールも45ナノから32ナノへと微細化した。プロセッサコア単体の能力はz196の約1.25倍、1筐体当たりのプロセッサコア数を96個から120個(システム管理用および故障時のスペア用を除くユーザーの処理に使えるコア数は80個から101個)へ増大させた。商用コンピュータでは初となる「トランザクショナル・メモリー・テクノロジー」を搭載するなどシステム全体としての機能強化によって、システム全体の処理能力をz196の1.5倍となる78BIPS(78000MIPS)にまで引き上げている。一方、冷却機構として新たに水冷ラジエータを採用して冷却効率を高めるなど、エネルギー利用効率も向上させ、同じ消費電力で処理できる性能は1.65倍を達成した。

 その他に過去90日分のログを蓄積して分析し、トラブルの予兆を自動検知することができる管理機能「zAware」を新たに搭載し、運用のさらなる安定化、負荷軽減を図った。また、暗号処理のコプロセッサ(Co-Processor)を各コアに搭載(z196では2コアで1つのコプロセッサを共有)した。オプションで暗号処理カード「Crypto Express4S」を追加し、システムのセキュリティレベルをより向上できるようになっている。「IDAA(IBM DB2 Analytics Accelerator)」機能もNetezzaアプライアンスとの間の通信をアクティブスタンバイ構成からアグリゲーションへと改良し、帯域を拡大した。

2000年以降のIBMメインフレームの系譜と動作クロック

 日本IBMではzEC12を軸とした販売戦略として、2011年11月に設立した専門チームの人員を第4四半期にも倍増させ、顧客提案をいっそう進めることにしている。特に国産メインフレームの今後が不安視されるという中で、他社製メインフレームのユーザーを対象とした移行を訴求するための移行専門チームの陣容を強化して、顧客獲得に注力するとのことだ。

 システム製品事業 System z 事業部の大島啓文事業部長氏は、販売戦略について「国産メインフレームのリプレースに2011年から取り組んでおり、移行実績が増えるにつれノウハウやツールも拡充されてきた。『他社のメインフレームに移行するには負担が大きすぎる』というユーザーの不安を解消してしたい」と述べている。

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