第35回日本SF大賞エントリー一覧

2013年9月1日-2014年8月31日対象 | 全249件

すべてのコメントを開く
田丸雅智『夢巻』鬼嶋清美
原始、ショートショートは日本SFの星であった。いや、星新一が築き上げたショートショートの山々があまりにも大きすぎて、長らくショートショート=星新一になってしまったのだ。田丸雅智の第一作品集『夢巻』は、日常から数センチの浮遊を感じるような作品群によって、ショートショートを星新一の呪縛から解き放ち、新たな地平へと指し示した。おそらく今作を含めた田丸作品は、新たなショートショートの書き手を呼び覚ますきっかけとなるだろう。よって今作を日本SF大賞にエントリーしたい。
辻真先『未来S高校航時部レポート TERA小屋探偵団』鬼嶋清美
江戸の長屋で起きた密室殺人。それを解くのは5人の少年少女たち。はたして彼らの正体は22世紀からやってきた高校生だった......とおもいきや、それをも二転三転させて、想像もつかないクライマックスへと展開していく。面白い物語のためならあらゆる要素を盛り込むことを厭わず、ノベルズの枠内で書く、大ベテラン辻真先の姿勢こそ、見習うべきものがあるのではないか。というか、私たちは辻先生のお世話になりっぱなしじゃないですかね。そんなわけで今作を日本SF大賞にエントリーしたい。
劇場アニメーション『モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPERSPACE -亜空の深淵-』匿名希望
正統派のスペースオペラとして、また、SFならではの亜空間の設定や、小物まで含めたメカデザインも秀逸だと思います。また、ほかの作品ではこれほどの時間を割いたり、表現をすることは珍しいのではと思われる電子戦の描写など盛りだくさんで見所が多く、広くSFファンが楽しめる作品だと思います。原作がまだたくさんあるので、続編にも期待しています。
六冬和生『みずは無間』藤田直哉
SFの持っているエスカレーションの魅力を味あわせてくれる見事な長編。人工知能や宇宙などの巨大なテーマを扱いながら、「ぼく」と「彼女」のプレイベートかつ素朴な感情の物語にもなっている。現代SF的なガジェットの魅力を存分に味あわせながら、深くテーマを掘り下げていく手つきは圧巻。巨大なものと小さなものが入れ子状になり、論理や機械が、感情や情緒と入れ子になって互いに食い合うような、これまでに読んだことのない小説の構造を提示しており、非常に新鮮な驚きがあった。
長谷敏司『My Humanity』藤田直哉
『あなたのための物語』や『BEATLESS』で日本SFの最前線を切り拓いている作家の短編集。時期もテーマも違えど、現代に生きる人間にとって、科学とは何か、テクノロジーとどう共存するか、そして、それらでは贖いきれない人間のやりきれなさや存在の孤独などにも触れる、現代的であるとともに普遍的でもある作品群が並んでいる。テーマの選択・展開や、筆致が非常に充実しており、ぼく個人としては、「いま」を生きるぼくたちの感覚や、心そのものに触れられたような気がする作品集だった。
田丸雅智『夢巻』匿名希望
こんな不思議体験が出来るきっかけは案外身近に潜んでいるのかも?不思議な親近感を覚える20編のショートショート集。
買い物帰りという日常の一コマのはずがシュールな展開で一貫された「大根侍」
ソファに深く沈みたくなるような大人の穏やかさをくれる表題作「夢巻き」
どの短編も読後はしっかりとした余韻を残してくれます。
藤井太洋『オービタル・クラウド』長谷敏司
主人公のキャラクター付けは、SF作品にとってひとつの課題であると思います。
大昔は発明家だったり、後には専門性が高い科学者や専門職の従事者だったり、ときには巻き込まれた一般人だったりする主人公が、新しいものや未知と向き合ってきました。
けれど、現実がSFに限りなく近づいたと言われている昨今、実際そうなった社会の
知的生産者の姿は、現実が追いついて初めて描けるものでした。『オービタル・クラウド』は、現代的なオープン思考や国際性、そして人との繋がりの距離感として納得
のいくヒーロー像を打ち出した作品であると思います。
主人公達を中心に、SFのまさに柱である宇宙の物語を、明るいビジョンで打ち出した本作は、SF大賞に推すにふさわしい今期の成果であると考えます。
最近『幻想再帰のアリュージョニスト』フイゴトラ
ミームやクオリアが猛威を振るうと仮定された世界で、
超工学・超文学・超社会学・超人類など様々なメソッドで作られた人工知性が鎬を削る痛快娯楽SF小説!
哲学的ゾンビ・マリーの部屋・スワンプマンなどの誰もが一度はわくわくした思考実験が、
見事に物語に落とし込まれ、またその視点に寄り添う奇妙な体感が楽しい。
"サイバーカラテ"、"座禅無しでゼン・スピリット"、"非線形参照型差延機関"、"天然言語学的微細機械による創発的生命"、"五十六億七千万年後に来たる救世トリクルダウン"、
怪しげで胡乱げなワードが踊り狂い、それが空疎な一発ネタ的言葉でなくキャラクターの苦悩と覚悟とともに脳に染みいる不思議な感覚。
この怪しげな言葉で彩られる世界が美しいと思ってしまう瞬間に、どうしようもなく物語の力を実感した!
大西赤人責任編集「季刊メタポゾン」岡和田晃
本誌は「デジタルメディアとりわけ電子書籍の普及が進む今日、あえて紙のメディアの存在意義を探ろうとする雑誌」として2011年1月に創刊された。既存の文芸誌の枠にとらわれず、また3・11東日本大震災と福島第一原発事故等の社会問題を一貫して紙面に取り上げている硬質の商業誌であるが、実はSFにも深く理解を示しており、7号からは「連作評論」として、石和義之・宮野由梨香・高槻真樹・忍澤勉らのSF評論へ大きく紙面を割くとともに、樺山三英の(某著名文芸誌にて掲載直前に没となった)問題作「セヴンティ」や、川勝徳重による藤枝静男「妻の遺骨」劇画版など、革新的なスペキュレイティヴ・フィクションへ貴重な発表の場を提供した。SF評論やジャンル横断的な作品をめぐる厳しい現状をふまえれば、本誌の挑戦はもっと評価されなければならない。本誌に縁が深い故・大西巨人をSFの文脈で評価する意義も込め、SF大賞に推薦したい。
すべてのコメントを開く
すべてのコメントを開く
「変愛小説」ジャンルの創生及び発展継堀雪見(眠)
海外奇想文学の翻訳を積極的に手掛けてきた翻訳家の岸本佐知子は、アンソロジストとしても異彩を放っている。 とりわけ、恋愛至上主義に対抗して企画されたアンソロジー「変愛小説集」では「変愛」と形容するにふさわしい短編が揃えられている。レイ・ヴクサヴィッチなどの奇想SFも数多く紹介されている。「群像」2014年2月号では"日本版変愛小説集"というコンセプトで話題を攫った。日常を異化する概念の提示に成功した好例として推す。
菅浩江『誰に見しょとて』魂木波流
化粧を通じて古代から宇宙まで行ってしまうところを含め、言葉遊び要素がやられたって感じでした。がつんときました。
アニメ「残響のテロル」魂木波流
謎のスピンクス1号と2号による連続爆弾テロ事件。それを追う柴崎ら刑事たち。たまたま居合わせた女子高生リサ。闇に葬られた人体実験。全てを明るみに出すべく、東京で原子爆弾が爆発する。数字でしか呼ばれなかった子供たちの限りある夏。
安堂ロイド A. I knows Love ?ちーちち
安堂ロイドを推薦します。この作品は昔のSF好きだった頃のわくわくする気持ちを思い出させてくれました。軸はラブストーリなのかもしれませんが、今現在の状況や未来を考えさせる数々のセリフにはっとさせられました。私にSFの面白さを思い出させてくれてありがとう!
ロンリのちから魂木波流
論理性について学ぶEテレの高校生向け学習番組。映像部の高校生が、人類滅亡後の地球をさまようアンドロイドのアリスとテレスというSF映画を撮るなかで浮かんだ疑問を、論理的に追及、解決していきます。公式サイトで全話配信中。全10話各10分。
アニメ「銀河機攻隊 マジェスティックプリンス」魂木波流
異星人の攻撃から地球を守るために遺伝子操作で生みだされたパイロットの少年少女たち。落ちこぼれのチームラビッツの5人がなぜか最新鋭の機体に乗って戦うことになり、というシビアな状況なのだが、のんびりしたゆるい雰囲気で親しみやすく、特にパイロットの子供たちをパイロットだからでなく大事に思っている描写が暖かくて良かった。各機体ごとに特徴があり、それぞれにこれまた特徴のある整備班がついているのが楽しい。先輩のチームドーベルマンも魅力的。
原作:森岡浩之、漫画:米村孝一郎『星界の紋章』地上最後のマリ本D
前述の〈エマノンシリーズ〉もそうだが、約10~20年前に発表された傑作SF小説が、次々とコミカライズされている印象を受ける。ベストSF1996で1位に輝いた『星界の紋章』を原作とする本作も同様。壮大な宇宙空間、白熱する宇宙艦艇でのバトルはもとより、原作と同じくらい生き生きとしたキャラクター(いや、逐一表情の変化がわかるぶん本作の方がより鮮やかというべきか)をも描き出している点が好印象。2巻までで原作1巻ぶんのコミカライズが終了。『紋章』だけではなく、『戦旗』や『断章』のコミカライズも期待したいところ。
梶尾真治×鶴田謙二『續 さすらいエマノン』地上最後のマリ本D
実質的に、〈エマノンコミカライズシリーズ〉としての推薦。シリーズ当初の売りであるエマノンの魅力を全面に出し、極端に台詞、地の文を少なくして「魅せる絵」で勝負する。『三丁目の夕日』的な「古きよき昭和」という舞台にエマノンというキャラクター、そして鶴田謙二氏の画風がマッチした、最良のコミカライズの一例。梶尾真治氏の代表作のコミカライズであることも踏まえて。
大井昌和『モトカノ☆食堂』タニグチリウイチ
木星の衛星でひっそり営まれる食堂では女主人のもとかが尋ねて来る客の想いを刺激し心を癒す食事を出してひとときの安らぎを与える。そこを経て客たちは過去を振り返り未来に向かって新たな1歩を歩み始める。グルメ&宇宙&SF。
釜本タカシ『森野先生とボク』タニグチリウイチ
SF作家でベストセラー連発で眼鏡の女性で美人みたいでそんな森野先生の担当となった新米編集者が原稿を頼みに行くと宇宙に誘われ古代に送られ異次元を旅させられるといったセンスオブワンダー過ぎる体験の連続。SF作家怖い。
アークシステムワークス『Guilty Gear Xrd SIGN』さやとう
対戦格闘ゲーム『Guilty Gear』シリーズの最新作。ドット画による2Dとも、E-moteなどの2.5Dとも、ポリゴンの3Dとも異なる、)「2Dにしか見えない3D」という本作のグラフィックは、ある意味想像し得ないものを想像し、それを見事に映像に落とし込んだと言えるのではないか? 映像表現の「未来」と新しい「可能性」を感じた。
安堂ロイド A. I knows Love ?いずみ
2013年10月、お茶の間に電撃が走った。SFアクションムービーと言える作品が、突然日曜9時放送の連続ドラマとして現れたからだ。『安堂ロイド』のクオリティは映画作品をドラマとして流していると言っても過言ではなかったと思う。それ程、ストーリーもアクションも素晴らしいものだった。あのSPECの製作に関わったスタッフが挑むと聞き、放送を心待ちにしていたが、早くもSPECを超えるような作品に出会ってしまったと感じた。毎週ワクワクしながら放送を楽しみにし、テレビ権がない時には、玄関先でスマホのテレビを食い入るように見る程だった。一般視聴者へ日本のオリジナルSF作品として与えた影響は実に大きいと思う。この作品がなければ、未来へ思いを馳せることも、人の思いは時空を越えると思うことも、今を生きる大切さも、勝つまで諦めない心も今ほど持てなかったと思う。
続編の映画化が待たれる。是非映画館の大スクリーンで観たい作品である。
相沢美良、伏見健二『なぞの鳥をさがせ!――ブルーシンガーRPG 勇者編』岡和田晃
著者らは『ブルーフォレスト物語』(1990)発表以来、会話型ロールプレイングゲーム(RPG)とSF/ファンタジーの両方の分野で精力的に活動を続けてきたが、その最新作にあたる本作は、"児童文学のレーベルで発表されたシナリオオリエンテッドなストーリーゲーム"という未曾有の試みになっている。読者は記述された幻想世界での冒険を読むことでまず愉しみ、それを受け入れ、咀嚼し、自分自身の「ナラティヴ(語り)」で変奏しながら、ゲームマスターとして友人とその体験を共有することで作品世界を広げていくことになる。旧来のRPGにおいて根幹にあたると思われてきた戦闘等のルールは自然に廃され、むしろ参加者のイマジネーションをいかに効果的に膨らませるのか、「ナラティヴ」の原点に立ち返った効果的なデザインがなされている。本作はRPGとSF/ファンタジーの「語り」へ、革命をもたらしたと評価することができるだろう。
映画『劇場版 SPEC~結~ 漸ノ篇・爻ノ篇』いずみ
この作品は、2010年に放送されたTBSテレビドラマ『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』から始まったSPECシリーズの最終章である。IQ201の天才でちょっと変人な当麻紗綾とSIT出身の筋肉バカ瀬文焚流の捜査官コンビが、超能力を持つスペックホルダー達が起こす怪奇事件を次々解決していくものだが、テレビシリーズ、スペシャルドラマ、映画と回を追うごとにその世界観はスケールアップされ、今回の結(クローズ)では、「ファティマ第三の予言」を巡り、人類の存亡をかけて二人が死闘を繰り広げる。魅力溢れるキャラクター設定やストーリー展開、惹きつけられる挿入歌、仲間の大切さやお互いを思いやる愛情の深さ、ただ単に面白いだけではなく色々なことを考えさせられる素晴らしい作品だと感じた。完全オリジナルの作品で、これ以上のものはこの先製作することは困難であろう。熱狂的なファンも多く、与えた影響は計り知れない。
横浜トリエンナーレ2014 華氏451の芸術vzl
現代美術と昨今の国際展の閉塞感と政治的/社会的な傾向を,ブラッドベリが描いた焚書になぞらえ,失われた「華氏451の芸術」なる本を芸術によって表現した作品.
http://goodp.at.webry.info/201408/article_2.html
安堂ロイド A. I knows Love ?大川
正直、木村拓哉さんだから見たドラマです...が、
放送から一年経った今も、飽きることなく見直してます。
私にはSFとしてのロイドの説明は出来ないけれど、
心から納得し、感動できました。
(人の想いは時空を超える)
私が子供の頃には、未来に希望を持ち安心もありましたが、
現在は震災も多発し、未来が見えづらくなってます。
でも、思いやる心や愛する心は
(想いの素粒子)として漂ってると信じられる事が嬉しく、
何度見ても、最後に暖かい気持ちに包まれます。
SFに詳しくない私が感じたSFとは、
果てしなく大きな愛を語る事ができる方法でもあるのかなと。
安堂ロイドA.I.knowsLOVE? 大好きな作品です。
スペース☆ダンディサエナイ
「研ぎ澄まされた適当、磨き抜かれたいい加減」がテーマの豪華スタッフによる悪ノリSFコメディ。宇宙人ハンター「ダンディ」を筆頭に、濃すぎるキャラクター達による爆発オチ上等の一話完結トンデモストーリーが最大の特徴。ダンスやバンドにミュージカル、ロボやレースにゾンビや魚にラーメン、果てはスペース昔話に裁判と、バカの限りを尽くしたやりたい放題の中に幻想的で哲学的な数学的なトレンディストーリーが混じってたりと、視聴者を飽きさせない幅広い要素を詰め込んだ快作。
映画『クレヨンしんちゃん ガチンコ! 逆襲のロボとーちゃん』サエナイ
監督高橋渉、脚本 中島かずきによる映画クレヨンしんちゃん第22作目。父、夫、男としての"ひろし"を描いた傑作。子供も向けだからとSFとしての"問題"を避けることはせず、正面から描いた。妻からの機械の体への拒絶と、それを乗り越えていく過程での変わらない家族愛を丁寧に織り込み、なおかつギャグ満載の原点回帰ともいえるストーリーに仕上げている。ファンとしては久しぶりに劇中劇としてのカンタムロボが観られたのも高ポイント。
朝来みゆか『ヴァージン・ティアーズ』匿名希望
恋愛小説の短編集。そう思って読み始めたのですが、最初の「手のひらに未来」は、いきなりの近未来設定。SFっぽい?と思いながら一気に最後まで読み切りました。人を好きになることは普遍的なことだとぼんやり思っていたけれど、SFという舞台装置により、その普遍性が際立ったように感じました。そもそも他人の気持ちなんて予測不能で、誰もが違っていて、全てが「自分と違う世界」。他人を描くことは、違う世界を描くこと。それならば、恋愛を描くためにSFがあってもいいじゃない。そう考えたら、これってSF小説なんだ、と思ったのでありました。
高槻真樹『戦前日本SF映画創世記』渡邊利道
アクセスの難しい戦前の日本Sf映画を丹念に取材しまとめあげた労作。今後のSF映画史で必ず参照されることになるであろうという意味で、もっとも「このあとからは、これがなかった以前の世界が想像できないような作品」という定義にふさわしいと思います。
すべてのコメントを開く
すべてのコメントを開く
岡和田晃『「世界内戦」とわずかな希望』渡邊利道
現代SFと現代文学を、日本と言う枠組を越えて「世界文学」の地平で受容する文脈を示し、なおかつ現代日本のアクチュアルな問題とも接続する。多くの雑誌に時評的に書かれた文章をまとめたものでありながら一貫したパースペクティヴが見事。
吉村萬壱『ボラード病』渡邊利道
福島原発事故後の状況を直接的に想起させながら抽象的な透明性を保った作品で、作品の外側の現実との関係性について再考を促す刺激的な作品だと思います。
菅浩江『誰に見しょとて』渡邊利道
化粧という主題を、美容と医療の両面にまたがって縦横に描き、イノベーションの変革の主体として「企業」を提示しているのが大変現代的で面白かったです。
谷甲州『星を創る者たち』渡邊利道
科学技術が用いられる現場での事故と対峙する技術者たちを描く連作で、一話ごとのアクチュアリティーにワクワクしました。最終話で一気に物語が飛躍するのもいかにもSFといった感じで魅力的です。
安堂ロイド A. I knows Love ?ブルーキューブ
「安堂ロイド」には、アンドロイドに魂があるという衝撃的な考え方が出て来ます。日本では昔から魂は生物に宿ると考えられています。魂を持つ無人兵器の苦しみを実写で見て、これまで接したどの作品よりも人工知能を身近に感じることができました。また、想いが素粒子であるという設定は抜群に新鮮でした。人の想いが時空を超えるからこそ「大切な人の命と人類の今と未来を守りたい」という天才物理学者の想いがアンドロイドの力を借りて実ったのです。妹機から麻陽と今の世界を守り、チップになって百年間深海にいたロイド。その間に未来の大虐殺の歴史が書き換えられます。人の想いが実際に未来を変え未来に対する責任を果すドラマを見て、未来に対して良い結果を残せる人になりたいと思いました。百年後の未来に希望はないと思っていましたが「希望は作り出すもの」と教えてくれた作品が心に残っています。
長谷敏司『My Humanity』さやとう
論理と倫理によって突き詰められた「過剰さ」と、そこから滲み出る「切実さ」がこれでもかと味わえる長谷節全開の短篇集。収録作のアベレージも高い。現代日本SFのフロントラインで活躍する、新時代の作家の感性に慄け。
藤井太洋『UNDERGROUND MARKET』シリーズさやとう
ディストピアめいた近未来を舞台にしながら、決して暗くなり過ぎないバランス感覚が素晴らしい。同著者の『オービタル・クラウド』もそうだが、思索性とエンタメ性を両立させる作者のセンスに新しいSFの形を見た。
藤井太洋『オービタル・クラウド』さやとう
主要キャラたちのライトスタッフっぷりが心地よい快作。今より少し先、地続きの未来の描写にも高い説得力を感じた。決して明るいだけの未来ではないが、しっかりと希望も描かれており、嬉しくなる。
アニメ『キルラキル』さやとう
元ガイナックスメンバーによって設立されたアニメ制作会社トリガー初のテレビシリーズ、というだけでノミネートするのに相応しい気もするが、ハイレベルな映像表現で熱量の高い物語を描き切った、堂々たる完成度の作品だった。今年のSFアニメ最大の収穫。のひとつ。
アニメ『ガンダムビルドファイターズ』さやとう
現代版『プラレス三四郎』&『プラモ狂四郎』。ジュブナイルSF的なワクワク感と「ガンダム」の名に恥じない高いクオリティが素晴らしい作品だった。現在、一作目の好評を受けてシリーズ二作目の放映中だが、GBFは日本の代表的SFアニメである「ガンダム」を見事に新しいフェイズに移行させたのではないだろうか?
恒川光太郎『スタープレイヤー』匿名希望
舞台は、謎の存在・フルムメアが支配するという異世界。無職のバツイチ女が、気付いたら見渡す限り緑の草原に立っている――突如としてそんなシーンから始まるこの小説。『夜市』をはじめとするこれまでの和風幻想小説のイメージを覆しながら、恒川光太郎らしい端正な文章と物語る力は健在。『デスノート』的なゲーム性を付加しながら、異世界ならではのお約束事を緻密に構成しており、SFとしても広く読者に間口を開いた、壮大な新境地エンタメ作品だ。スタープレイヤーという万能の存在になった主人公は、十の願いを叶える力を手にさまざまな欲望を叶えていくが、その願いは同時に自身のありようを映し出す鏡でもある。異世界内での地政学的な問題も複雑に絡み合い、人間の業までをも示唆的にあぶり出しにする本作は、惑星サーガとして著者のライフワークになる予定という。この壮大な構想の本書をぜひSF大賞にと熱烈推薦いたします!
HMD(ヘッドマウントディスプレイ)y0my
今年はHMDの普及が大幅に進んだ年でした。普及の理由は簡単で、3万5千円と一般ユーザーでも買うことができる値段になったからです。(Oculus社のOculus Rift) また、SONYはMorpheusを発表し、東京ゲームショウをこれらのHMDが席巻したことは記憶に新しいことだと思います。また、GOROman氏が作ったMikulusというOculus Riftソフトは、CGにおける不気味の谷を軽々と越え、初音ミクの実在を感じるという新しい体験を提供しました。これらより、2014年はVRに耽溺できるSFな未来へ、大きな一歩を踏み出せた年だったと思います。
安堂ロイド A. I knows Love ?小澤 隆
私は55歳の男です。生まれた時からSFが当たり前の環境に育ちました。鉄腕アトムから始まって空前の宇宙戦艦ヤマトブーム〜ガンダム、エヴァンゲリオン。ずっとSF?にどっぷりと使ってきました。ところが世間ではSFをゴールデンタイムに放送することはないようで、テレビは視聴率がすべての世界ですから。そこで日曜日の9時からSFを堂々と放送したテレビ局、キムタクの影響力はすごいと思いました。作品的にボロクソにいう人もいますが、私は感動しました。特にサプリがロイドをかまって原子還元される時と、ナビエが原子還元される時は思わず涙腺がゆるみました。
マクロスF ゼントラ盛り Blu-ray Box天野邊
どうにも大衆路線が続く河森監督のパチンコ演出動画用の版権ロボアニメ。たかが「質の高い。魅せるドンパチクリーンライブ菅野MV」を鑑賞していて、映像以外まるで期待せず観ていたらオチやばかった。某プシスファイラと同様な設定で、ちゃんとエンタメしてることは悔しくすらある。フォールド波(超高速で即時的な相互作用を及ぼす重力波)信号で超時空ネットワークが、外宇宙の個体までを構成下に置き、真我統合した群体生物として振る舞う生命系が未知のノードにセッション試行を行う、信号パターン(求愛のラブソング)を超時空へ馨らすが、人類が信号の復号化を解釈できないがために戦闘となる。冷酷で無慈悲な暴力だけが支配する唯物世界である。「ガンダムシリーズ」が伝える、利己的な動物が避けられず行う無慈悲な「殺し合い宇宙」がリアリズムの一端なら、対抗する「共感しあう自由意志」もまた生命に備わるも否定し得ないリアリズムの一端だ。
3D小説『bell』山本弘
僕自身、3D小説などというものがあることをつい最近知ったばかりで、全貌を把握してはいません。しかし、リアルタイムで進行するストーリーに読者が積極的に干渉し、現実世界で物理的に行動することで登場人物を救うことができるという発想には、巨大な可能性を予感しました。まだ生まれたばかりのコンテンツですが、この先、AR技術を取り入れ、さらにシナリオ面やイベント面が充実していったら、どんなとんでもないものに成長するか。現実とフィクションの境界が融け合い、人間がなかばフィクションの世界に身を置いて暮らしている───そんな刺激的な未来世界を夢想し、先物買いの意味で推薦したいと思います。http://3dnovel.jp/#top
【人物】眉村卓ふるきち
功労賞を、今年80歳になられた眉村卓先生に!! 筒井康隆先生と並んで、デビュー以来50年、その業績は誰もが認めるところだと思います。筒井先生とともに壇上でぜひ受賞していただきたく思います。
【人物】筒井康隆ふるきち
今年80歳を迎えられ、今もなお健筆を振るわれている筒井先生に功労賞を!! デビューからすでに50年、その業績は故・星新一先生、故・小松左京先生と並ぶSF御三家というにふさわしい。ぜひ壇上で功労賞を受けていただきたく思います。
大橋博之編著『少年少女 昭和SF美術館 表紙でみるジュヴナイルSFの世界』藤原編集室
昭和20~50年代のジュヴナイルSFの表紙約350点をオールカラーで紹介。小松崎茂、武部本一郎、依光隆、金森達ら、一流の挿絵画家たちが手がけた表紙画コレクションは、SFアート画集としても充実の内容。自薦、というか自編集本ですが、日本SFの礎を築き、多くのSFファンを育ててきたジュヴナイルSFの歴史をヴィジュアルで辿った本書は、主な全集・シリーズの収録作品リスト、画家の紹介コラムなど資料性も高く、2014年度SF出版の貴重な収穫といえるでしょう。
小林エリカ『マダム・キュリーと朝食を』巽 孝之
1999年のデビュー作『爆弾娘の憂鬱』は衝撃だった。まだ 二十歳そこそこの小林が発表した物語は、ヒロイン自身が核爆弾であるがために容易に恋愛しえないという超弩級のブラックユーモアに彩られていた。以来 15年。9・ 11から 3・ 11までを素材に、散文と詩、文章と漫画の狭間を縫う多様な形式を試みた著者が放つ最新長編小説『マダム・キュリーと朝食を』は、3・ 11東日本大震災以降の視点で、ラジウム発見者にしてノーベル物理学賞と化学賞受賞者キュリー夫人をモチーフに選ぶ。物語は、東日本大震災の災害により無人となった<マタタビの街>を乗っ取った猫一族から生まれ、放射能汚染されて光る食物を漁る猫の叙述と、まったくの同年に、放射線のうちに「光の声」を聴き取ることのできる母から生まれた小学校五年生の娘・雛の叙述とが、交互に進む。人類の歴史と猫の歴史の交錯は、最も先鋭な SF的想像力に貫かれている。
安堂ロイド A. I knows Love ?原田忠男
マルサス『人口論』は、人口は幾何級数的に増加し、食糧は算術級数的に増加すると説き、現代の新マルサス主義は人口爆発による食糧難というアポリアに対し、発展途上国へ産児制限を突きつける。「安堂ロイド」の描く百年後の未来は、人口爆発の解決のために世界の支配階級がアンドロイドを用い、バグが原因の事故だと称して、有色人種への大量虐殺=ジェノサイドを決行する世界である。
ARX II-13(後の安堂ロイド)は、アスラ(阿修羅)システムという哲学的コマンドをインストールされていたため、支配階級のイデオロギーを批判的に吟味し、自律的に判断することで、未来社会の叛逆者となる。更に感情のプログラムの読み込みにより、共感能力を持つようになる。P・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』を継承するとともに、物語全体が大量死が恒常化した現代に抗して創られたと思しい問題作である。
すべてのコメントを開く
すべてのコメントを開く
最近「幻想再帰のアリュージョニスト」言理の妖精
物語は、言語は、所詮既知の組み合わせでしかない。しかしそれでも誰も見たことのない景色を創り出したい。
その願いがSFで、その産物がセンス・オブ・ワンダーなんじゃないかな。
『幻想再帰のアリュージョニスト』は、
"劣化コピーとパッチワークでしかない"と自覚する人工知性な彼女達が、
誰も見たことがない"未知"の本物以上へと挑戦していく物語。SFへ挑戦していく物語。
数えきれない引用、散々にばらまかれた要素、これでもかと広げられた風呂敷、それがみるみる一つに組み合わさっていく様はまさに圧巻。
キャラクター・世界観・物語の流れが、一貫されていると、轟々と動く一つの巨獣なのだと、三章のクライマックスで気づいた瞬間には、たまらない心地になった。
読めばきっと、見たことのない景色が見える。
自我と物語と創造を巡る、ありふれた空前絶後の言語SF。最高のエンターテイメント・スペキュレイティブ・フィクション。おすすめです。
著者:河野裕、河端ジュン一 企画:少年ロケット『bell』上野秀晃
3D小説「bell」はニコニコチャンネルで連載
したWEB小説です。メイン著者は河野裕です
。物語はユーザーが何もしなければ、バッドエ
ンドのルートに進むことが決まっています。例
えば7月28日付けで「8月1日に主人公が車
にひかれて死ぬ」というバッドエンドを含む小
説が公開されます。ですが、作中に示される「
謎」をユーザーが8月1日までに解決すると、
「主人公の死」というバッドエンドは回避され
、改変された物語とその続きが公開されます。
バッドエンド提示と解決を繰り返すことで、物
語をハッピーエンドに導くことがユーザーの目
的になります。参加したユーザーは、自分の発
言が小説内で描写されたり、様々な謎解きイベ
ントに参加することで、フィクションとリアル
の境界があいまいになる体験をしました。寺山
修司の『市街劇』に近しい体験です。またユー
ザーの物語への参加・発言により、物語が変化
していくという意味で、この小説は『朝のガス
パール』の進化版です。http://ch.nicovideo.jp/3d_bell
梶尾真治『うたかたエマノン』天瀬裕康
 梶尾真治という名前は、『宇宙塵』148号(1970年10月)の「美亜へ贈る真珠」以来、私(当時は渡辺晋)の脳裡にあった。あの作品のリリシズムにうたれた
のである。

 その後、彼はプロとしてデビューし、私は天瀬裕康の筆名で原爆文学やあれこれをしていたので、お会いすることはなかったが、私は彼のサイレントファンだった。

 やがて彼は、NoName を逆にしたエマノンの短篇シリーズを書きだす。20編くらいだろうか。それから「うたかたエマノン」の連載が始まり、単行本となっ
た。地球に生命が芽生えてからの記憶を持つ美女エマノン、これにゴーギャンやハーンが絡み、興味津々......このシリーズで初長篇の本書が、梶尾2度目のSF大賞受
賞となるよう、処女作の頃を思い出しながら祈っているのである。
おみおみ『バベル式 神ガール』62mi
学園の一角に立つ、バベルの塔のような巨大建築物に住む「かみさま」と呼ばれる巨大な少女と、彼女の世話をする「かみさま部」の生徒達との交流を描いた漫画作品。「かみさま」のなんでもありな性質から生み出される不可思議なイメージや、巨大な少女と小さな生徒達の対比から生まれるスケール感、画面の端々にわらわらと描かれる生徒たちが織り成す箱庭的な空気感など、独特の魅力のある作品です。
SF的な観点から言えば、「かみさま」という異なる視点を持つ超越的な存在との交流という意味で、惑星ソラリスから続くテーマを少女に置き換えて描写しているようでもあり、今後それらがどう描かれていくのか、気になるところです。まだ連載間もない作品ですが、見過ごされるには惜しい作品です。(新潮社「コミック@バンチ」にて連載)
西島大介『All those moments will be lost in time』地上最後のマリ本D
一言で言ってしまえば「SFの想像力を使って3.11以後の日々を描くマンガエッセイ」なのだが、「3.11」というあまりに巨大な存在の前に、「SFの想像力」が、勝つことはできなくても決して負けることはないということを証明した一つの例として、もっと評価されるべきなのではないか。想像力で幻視した、ヒロシマ、フクシマ、『ブレードランナー』のような街の風景、「ラピュタ」のような庭園......。ある意味このエッセイは、「3.11」で大きく変わってしまった我々の生活、その中でも変わらない確かなもの、小さくなっても生き残る何かを求め続けた(恐らく今も続けている)、著者の巡礼の記録であり、記憶であるのかもしれない。
岩崎書店〈21世紀空想科学小説〉全9巻YOUCHAN
「今の子どもたちに、現代のSF入門シリーズを」のコンセプトで2013年から翌14年にかけて刊行された、書き下ろしジュブナイルSFシリーズ。第1巻『かめくんのこと』(北野勇作)を皮切りに、全9巻が刊行された。執筆陣に、東野司、藤田雅矢、林譲治、藤崎慎吾ら9人のSF作家たちが作品を提供。また、さまざまな媒体で活躍中のイラストレーターたちが装画と挿絵を担当している点も見逃せない。ホラー、冒険、ハードSF、少し不思議系など、ジャンルも多岐にわたり、きっとお気に入りの一冊が見つかることだろう。少年少女時代に出会ってほしいSFシリーズであり、ここからジュブナイルSFが広がってくれることを大きく期待してもいる。
太田忠司『星空博物館 謎と驚きに満ちた33の物語』YOUCHAN
あっという間に読み終えてしまうほどに短い文章に、ドラマチックな仕掛けがあり、一遍一遍にゾクゾクしたり、ほろっとしたり。太田ならではの、卓越した物語展開が冴える上質なショートショートがぎっしり詰まっている。前作『星町の物語』の姉妹編ということもあり、世界観がさり気なくリンクしている。また、今回も前回に引き続き、パラパラ漫画が仕込んであったり、目次にもなる博物館マップが収録されるなど、文庫の限界に挑んだきめ細やかな工夫の盛り込まれた造本も嬉しい。ショートショートへの限りない愛情が随所に感じられ、本を読む楽しさや嬉しさ、そして物語の美しさを誰もが堪能できる、大切にしたい一冊。
野村亮馬『キヌ六』だぶり
『ベントラー・ベントラー』でセンス・オブ・ワンダーに満ちた宇宙人が日常に介する状態を書ききった著者の新シリーズ。「人造火星人類」という イコンであるキヌの火星へのエクソダスを描いたサイバーパンク。前作とは打って変わってトーン多めの画調で、架空の地球・日本を繊細に描写してい る。暗躍する大英帝国やソヴィエト亡命者からなる第五越冬隊など、SF者の心をくすぐって止まないガジェットもふまえつつ、天衣無縫が服を来て歩いている様なキヌと、巻き込まれた薄幸サイボーグ六との苛烈で、しかしどこかあっけらかんとした短い旅が緻密な都市描写の中で展開している良作。 前作ベントラーベントラーも含め、オリジナルSF漫画を継続して発表している著者に更なる期待も含めて推薦をさせて頂きたい。
仁木稔『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』海内誠(嘘)
遺伝子工学を中心とした科学技術の発達によって、倫理観とフィクションの有りようが変容した世界を描いた連作集。『My Humanity』と合わせて、「いま」読まれるべき作品だと感じたため、推薦させていただきます。
長谷敏司『My Humanity』海内誠(嘘)
科学技術の発達による"人間性"の変容を描いた中短編集。中でも好きなのは「地には豊穣」で、グローバルとローカルの相克と文化の保存というテーマを、生々しい心理描写をからめて描ききっているのがすばらしかった。他三作もよい。
乾緑郎『機巧のイヴ』野川さんぽ
武家社会に機巧人形(アンドロイド)が紛れ込んでいたら......という物語は、奇抜で、艶めかしく、さらに時代劇特有の痛快さもたっぷり。5つの短編を読み進むにつれ、なぜ機巧人形が誕生したのか、さらには機械と生あるものの違いは何かといった謎が膨らみ、思わぬ回答が与えられる。時代・SF・ミステリを融合させ、さらに異形の恋愛や伝奇小説の要素をも取り入れた、さながら「総合娯楽小説」の趣き。
仁木稔『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』野川さんぽ
5つの中短編からなる連作集。「人間もどき」が社会を
支えるようになってゆく過程と、そこで生まれる問題を
刺激的に描く。暴力と美がないまぜになったグロテスクな物語に接しながら、読者は、苦痛の中で叫ぶ者をどう
救えばいいのか、考え続けるだろう。
高槻真樹『戦前日本SF映画創世記 ゴジラは何でできているか』野川さんぽ
ほとんどフィルムが現存しない戦前の特撮映画を、草の
根を分けるようにして探った労作。映画が日本にやってきた1900年頃からの記録を丹念に調べあげている。発掘資料の価値はいうまでもなく、探索の苦労をものともせず、むしろ楽しんでいるかのような、著者の姿勢も素晴
らしい。
長谷敏司『My Humanity』野川さんぽ
著者の初めての中短編集。小児性愛者の心に迫った
「allo,toi,toi」や、原発問題に絡めて、科学技術の暴
走と生物進化におけるオスメスの役割を考察した「父た
ちの時間」など、SFならではの仕掛けで、ヒトが抱え
る根源的な問題を扱っている。刺激的で、充実した内容
だ。
藤井太洋『オービタル・クラウド』野川さんぽ
ガレージ起業家たちが開く未来への希望を、幅広い視点
から描く、娯楽味たっぷりの近未来SF。個人の才能が
社会を変革してゆくというインターネットの肯定的側面
と、あやふやな情報が世界を動揺させるという否定的側
面――ネット社会の両面をうまく組み合わせた著者の手
つきが見事。
結城充考『躯体上の翼』野川さんぽ
地上の主役が人類の後継者たちに代わった世界で、人造
少女が人工知性体のもとへひたすらに向かう。一種のボ
ーイ・ミーツ・ガールものといえるかもしれない。異様
な未来の風景の中で、わかりやすい物語を、グロテスク
に、そして極めて魅力的に描くいたクールジャパンSF

谷甲州『星を創る者たち』野川さんぽ
宇宙への意思と、土木作業経験者としての著者の見識が
結実した太陽系改造SF。連作の各編は、一見、結末を
無視しているかに見えるが、すべてがまとめられること
によって、大きな結構が見えてくる。知られざる環境での難工事にいどむ男たちの心意気が熱い。
最近「幻想再帰のアリュージョニスト」しんなり㌠
「小説家になろう!」というサイトで公開されている作品で、異世界保険という制度により近未来の日本から剣と魔法のファンタジー世界へ転生したが......禁じられた科学技術----高度なサイバネ技肢と脳内インプラントコンピュータ----を持ったまま異世界に飛ばされてしまった主人公が、言葉も通じない世界で生き抜くため、鋼の腕と格闘動作制御アプリによる「サイバーカラテ」で戦う......という導入なのですが、凄まじい文量により話がとてつもない広がりを見せており、呪術ネットワークによる通信、それを駆使した大衆の言語と認識を操作することによる現実の改変、呪術による身体性の拡張=強化外骨格と重火器......などなど、ハイファンタジーとSFが同居する鬼作です。
http://ncode.syosetu.com/n9073ca/
下永聖高「オニキス」kuroiwa takamitsu
世界が異世界に変わる速度というか頻度は、この文庫本を読むまで人々は気がつかない。人々の知らないうちに書き換えられる過去、多々ある平行世界への移動、作りかえられる世界、それらの変化速度の速さに気がつき驚愕した。マナ粒子の思考的発見はSF文学的大発見だ。
田辺イエロウ「BIRDMEN」 gryphonjapan
「結界師」作者が描く超能力物。"戦隊もの"のもじりのような形式を取りつつ「異形の能力を得た少年少女の恍惚と不安」という、これもまたSFが長年取り組んできた王道の物語を描いている。
人と違う能力を持ってしまった孤独感と、それ故の能力者同士の仲間意識、連帯感の嬉しさ...というSF的設定が、主人公がそれ抜きでも以前から抱いてた孤独感(※要は「ぼっち」(笑))と、ある時は重なり、ある時は対照となっていく。SFだから描けるリアル、もある。
すべてのコメントを開く
すべてのコメントを開く
仁木稔『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』岡和田晃
ラテンアメリカ文学と東洋史学のディシプリンを自在に駆使し、今年でデビュー10周年を迎えた仁木稔。五年ぶりの著作となる本書では、9・11以後に顕著となった「世界内戦」という状況下、加速化する陰謀論と排外主義に席捲された未来像が、五つの中短篇を通し、多様に考察されていく。SFマガジン読者賞受賞作「はじまりと終わりの世界樹」のヴィジョンに瞠目すべし。加えて、環境管理型権力とゲーミフィケーションを世界観へ見事に融合させる戦略に顕著な、「科学批判」の精神を見過ごしてはならない。先の日本近代文学会2014年度秋季大会のパネル発表「「世界内戦」と現代文学――創作と批評の交錯」で仁木は、自身の創作の背景に宿るユートピア文学の伝統について解説したが、まさしく本書の批評性は、自己充足的なエンターテイメントの枠組みを越えた世界文学、スペキュレイティヴ・フィクションとして受け止められる必要がある。
(特別賞として)宮崎駿鬼嶋清美
2013年9月に長編アニメーション制作からの引退を表明した宮崎駿監督。『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』などの監督作品が日本SFのみならず日本の文化全体に与えた影響はここで改めて語る必要はないだろう。(引退撤回による次回作への期待を込めて)その業績を讃えたい。ここに日本SF大賞の特別賞としてエントリーしたい。
瀬名秀明『新生』鬼嶋清美
日本SF第一世代の遺産をどう受け継ぎ、発展させ、次世代につなげていくか。中でも日本SFを代表する作家小松左京を『継ぐのは誰か?』。瀬名秀明『新生』はその意志を明確に表明した小松左京の諸作へのオマージュ連作中編集。中でも「ミシェル」は未完に終わった『虚無回廊』のスピンオフでありながら、小松左京の他作品とつなげ、さらなるテーマへの発展を垣間見せるという離れ業をものにしている。いずれ誰かが書き繋ぐかもしれない『虚無回廊』完結編への期待を込めて、今作を日本SF大賞にエントリーしたい。
藤井太洋『オービタル・クラウド』鬼嶋清美
理論的に可能な近未来技術を使ってサスペンスの題材にするのは、エンターテイメントとしてのSFの王道のひとつである。今作『オービタル・クラウド』では導電性テザーを使ったテロの可能性とその逆の有用性までをまとめ上げたスリラーである。長編2作目にして堂々たるエンターテイメントとしての書き手であることを証明した作者への今後の期待を込めて、日本SF大賞にエントリーしたい。
上田早夕里『深紅の碑文』岡和田晃
同じ著者の『華竜の宮』における「空白の四十年間」を能う限り詳細に描写した本作は、ポリティカル・フィクションとしての側面を徹底させ、敢えて「インサイダーSF」(眉村卓)としての「水平」的なスタイルを採ることで――『華竜の宮』が描いた「プルームの冬」――すなわち破滅に向き合う者の奏でる音楽を通して示した澄明な「垂直」性を見事に補完し、作品内の表象を越えて読者に「悪夢を想像する力」を与えてくれる。文章の隅々には緊張が漲り、海賊団ラブカのリーダーであるザフィールの屈折に満ちた人物造形は、世界観と見事に連動している。地政学的なシミュレーションとしても一級品だ。現行の出版状況を鑑みるに、このような大著をひもとくことができるのは、まさしく僥倖と呼ぶほかない。日本SF大賞受賞に相応しい傑作と言える。(参考:「空間秩序と『深紅の碑文』――悪夢を想像する力」、「SFマガジン」2014年2月号)
牧眞司編『柴野拓美SF評論集 理性と自走性――黎明より』岡和田晃
日本SF界の"育ての父"こと柴野拓美(1926~2010)。SF翻訳やファン活動の先達として、その業績を讃える者は今なお後を絶たない。本書はそうした多様な顔を包含したうえで、SF評論家としての柴野拓美像を確固たるものとした記念すべき書物だ。舌鋒鋭い時評は一見の価値があるし、「ハードSF」をめぐる定議論は応用性が高い。だが、ここはやはり、「「集団理性」の提唱」「ミュータント児童を考える」「コンピュータ時代の選挙と議会」等、早すぎたポストヒューニズム論者としての柴野拓美に注目すべきだろう。アカデミズムで"人間の死"が謳われる遥か以前、柴野拓美はSFの海に深く沈潜し、ヒューマニズムの彼岸を見据えることで、新時代の文学の相(かたち)を懸命に模索していた。今では入手困難なテキスト群を丁寧に渉猟し(「SF論叢」のインタビュー再録という英断に拍手!)、見事にまとめ上げた編者の情熱に脱帽する。
下永 聖高『オニキス』匿名希望
SFマガジンを購読しているのですが、以前読んだ『オニキス』の読み切りが大変印象に残ったため、購入して一気読みしました。どの短編もクオリティーが高く、久々に硬派なSF作品に出会えました。特に『三千世界』は必見であります。今後楽しみな新人です。
三島芳治「パターンレコグニション」匿名希望
ちょっとおかしな青春小説?はたまたすこし切ない恋愛小説?
静謐でしろい画面とポップでかあいいキャラクターといくつかのかたちをしたココロ。
前SF的想像力の、メタフィクションの、漫画の漫画の更新作。
ピアノ曲を聴くように読みたい一作です。
北野勇作『社員たち』北野勇作
自作ですが、どう考えてもこれが日本SF大賞の候補にならないのはおかし
い、と思うので自薦します。それぞれが短編として独立していますが、そのす
べてをつなぐのが「社員たち」という言葉。通して読むとストーリーではないも
うひとつの大きな絵が見えてくるはず。これが私にとっての現代日本SFです。
吉村萬壱『ボラード病』 北野勇作
状況が見えない世界での不条理と不安と不快、見えない圧力とよどんだ空気が
的確に描かれている。たぶん読者は、ボラードを見るたびにこの小説のことを
考え、今見えている「現実」に不安を覚えるだろう。読むことでこれまで見えて
いた世界を変容させてしまうこの小説は、間違いなく優れたSF だと思う。
菅浩江『誰に見しょとて』北野勇作
もっとも身近なものである自分の皮膚を起点にして宇宙空間まで。最初の化粧
から肉体の改変、その延長にある人工的な進化、そしてそれにともなう 自分と
いう精神の有り様の変化、まで、すべてがなめらかにつながりながらどこまでも
加速していく連作短編集。軌道エレベーターで上昇していくよう な快感がある。
牧野修『私の本気をあなたは馬鹿というかもね』北野勇作
現実とは違う歴史を持つ世界における一般の市民を丁寧に描くことで、すべて
を俯瞰できる視点からではなく、時代の流れに巻き込まれるしかなかった人間
の様が切実に描かれている。同じ歴史線上にある世界を描いた「大正二十九年の
乙女たち」とあわせて、現実の現在とも重なって見えるこれはと ても同時代的
なSFだと思う。
ドラマ24『なぞの転校生』北野勇作
「なぞの転校生」という素材をベースにして、リアリズムでは出せないであろ
うある空気を見事に映像に定着させていると思う。言葉の選び方、現実 の切り
取り方、台詞、道具、設定、演出、演技、すべてに感心させられた。様々な歯車
がじつにうまく噛み合っている。
アニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』浅木原忍@京都秘封・世18
本作は人類が《霧の艦隊》という異質な存在とファーストコンタクトする話かと思えばさにあらず、逆に《霧の艦隊》が人類とファーストコンタクトする話として描かれる。ファーストコンタクトSFを逆から描くことで
〈異質な知性〉との接触によって生じる変化を、アニメとしてのキャラクターの魅力と結びつけて描くことに成功している作品。フル3DCGアニメを従来のセルアニメのように違和感なく見せたという意味でもSF的成功を見せた作品かと思う次第。
FM:三田誠、P:虚淵玄、奈須きのこ、紅玉いづき、しまどりる、成田良悟〈レッドドラゴンプロジェクト〉地上最後のマリ本D
フィクションマスターとして、『レンタルマギカ』や『クロス×レガリア』の三田誠氏がいちから世界観を作り上げ、『魔法少女まどか☆マギカ』の虚淵玄氏、〈Fateシリーズ〉や『空の境界』の奈須きのこ氏、『ミミズクと夜の王』の紅玉いづき氏、『バッカーノ!』や『デュラララ!!』の成田良悟氏といった実力派が
参加して、それに負けないキャラクターを作り上げ、その世界を縦横無尽に駆け巡る。そこに、しまどりる氏の華麗なイラストが彩られた。他にも豪華すぎる面々が進行をサポートしたTRPGである。思えば、数々のSF、ファンタジーの傑作を送り出してきたライトノベル、
その黎明期の代表作の一つである『ロードス島戦記』(著:水野良)も、TRPGのノベライズであった。書籍版の最終巻は選考期間範囲内での刊行だが、複数のメディアミックス計画もあるようで、これからも楽しみである。TRPGの再評価と知名度の上昇にも貢献した点も
踏まえて、今回推薦した次第。
劇場版 魔法少女まどか☆マギカ新槇
あえて、魔法少女モノではなく、
SFの本懐だからこそのSF大賞への推薦です。

魔法少女モノに対するカウンターテーゼという
取られ方もするかもしれませんが、
アーサー・クラークの2001年宇宙の旅や
スティーブン・スピルバーグの未知との遭遇
富野由悠季のガンダム以来の、大革命であるとぼくは思っています。

まどマギに、もし、SF足る根拠を求めるなら
キューベーは宇宙人から派遣された存在であり、
魔法少女の使う魔法は科学であるからです。

そして、宇宙の物理法則も超えて新しく宇宙を
再構築してしまうのは、もはやSFの本懐であると言えます。


もしこの作品に星雲賞だけ授けるという形で
SF界が納得するというのならSFとは何なのでしょうか?

ぼくはこの作品で、SFの底力を見ました。
小学校の時に2001年をみて「この映画には神がいる」って思った時以上の衝撃でした。
葦原大介『ワールドトリガー③』霜月
異界からの侵略を背景に人々の織りなす様々な関係が描かれる本作の、その中心となる少年・遊真の過去が明らかとなる巻。その死と再生はちりばめられた布石を見事に回収し、大きなうねりをもって
次の展開へと物語を進めてゆく。驚くことに、この波が寄せ返すかのように描かれる本作は週刊連載されている少年マンガなのだ。最新話で明らかになった情報が過去話まで遡って破綻なく収まる様は、タイムトラベルを実体験しているとさえ思える。
笹本祐一〈ミニスカ宇宙海賊シリーズ〉sss
笹本祐一〈ミニスカ宇宙海賊シリーズ〉を推薦します。2014年8月刊行の12巻で(第一期)完結となったので再開の期待を込めて。女子高校のヨット部員たちが部活動で宇宙への練習航海に出るところから、銀河帝国と渡り合うまでの大冒険。
宇宙海賊との戦闘や帰還の方法が定かでない過去への時間跳躍まで好奇心のまま突き進む。地上に縛られなくなった世代はいまの人類よりも意識レベルで進化していることが予想出来るが、その期待に応えるように不利な状況を知恵をあわせ
て乗り越えていく。様々な問題の解決は思索的に科学的に実行されるが、その困難も活躍の舞台もスケールが大きい。科学の進歩が時間移動やワープ航法に否定的な近年、フィクションの世界も狭い宇宙に閉じ込められることが多くなったが、超光速航法で飛んでいくことが出来るこの世界と、怯まずに進んでいく女子高生たちの姿は希望に満ちた未来そのもの。
安堂ロイド A. I knows Love ?Yomi Kunitomo
TBSで昨年放送された「安堂ロイド」を推薦いたします。
テレビでよくこれだけの映像を見せてくれたと驚きました。
話も、現在と未来を繋ぐ愛の物語をベースに、SFの魅力を最大限に活かしていたと思います。
テレビアニメ『ラブライブ! School idol project』自然界におまえは存在しない
アイドルアニメであるが、明らかにニューウェーブSF(Speculative Fiction)である。ニューウェーブSFは、従来のSFが志向した外宇宙(アウタースペース)に対し、
内宇宙(インナースペース)を志向したものだが、本作でもその志向が徹底されている。二期の一話では、主人公の気持ちの高揚が肉体の制限を超え、外界に発揮され、雨を止める。このように登場人物の内宇宙と外宇宙がダイレクトに結びつく現象は数多く起きる。
これは演出ではなく、この作品の物理法則が内宇宙と外宇宙を区別していないということだろう。自然科学は人間と自然の独立性を強調するが、本作はその垣根を破った宇宙を描く。これは『アイカツ!』や『プリパラ』といった比較的低年齢向けアイドルアニメと比べたら
興味深い。それらは内宇宙と外宇宙が結びついた人間中心的なセカイを科学技術の力によって創り出しているからだ。
すべてのコメントを開く
すべてのコメントを開く
テレビアニメ『アイカツ!』自然界におまえは存在しない
本作品はアイドルアニメであるが、明らかな情報SFである。本作において、観客の脳を計測しその情報をリアルタイムでAR投影するという『アイカツシステム』技術が確立している。この技術はデジタルネイティブ世代の世界観を垣間見さ
せてくれるため興味深い。ニコニコ動画に代表される双方向性メディアに慣れ親しんだ世代には、自分の脳情報が機械を通じて場に影響を与えるという発想は自然なのだ。本作はまた、非常に売れており、長年女児アニメのトップにあった『プリキュア』に勝るほどだ。
自己と機械、物質と情報に本質的な差をつけないということが若い世代においては一般化しているのであろう。このような傾向が続けば、次世代は『自我』というものがそれほど確固たるものとは感じなくなっていくのかもしれない。
テレビアニメ『プリパラ』自然界におまえは存在しない
アイドルアニメであるが、明らかにサイバーパンクである。サイバーパンクとは、機械化が日常となった世界で、反体制的な作品を指すが、本作はその定義に当てはまる。本作において、少女たちは電脳世界に身体をスキャン
して入り込む。そこでは身体はデータ化され、変化させることができる。これでサイバーパンクのサイバー部分は完璧だ。また、本作は反体制的である。主人公の学校は子供たちが電脳世界に行くことを禁止しており、
電脳世界にての活動が大人が関与しない自主的なものとなっているからだ。本作品のサイバーパンク度の強さは、他作品を見てもわかる。『攻殻機動隊』は機械化しているが、主人公は体制側だ。これではただのサイバーだ。
一方、『AKIRA』は反体制的であるが、身体の変容は超能力によるものだ。これではただのパンクである。このように、オリジナルな意味でサイバーパンクである本作品は、エントリーにふさわしいものなのだ。
ドラマ『BORDER』匿名希望
テレビ朝日で放送された、金城一紀氏原案&脚本による刑事ドラマ。「臨死体験により死者が見える」という設定は古今東西のSFで見られたアイデアではあるが、そうした設定を、テレビ朝日が得意とするリアリティ重視の刑事ドラマに持ち込むと果たしてどうなるか。かくして若手刑事である主人公は「自分だけが見えてしまう」=「事件の真相を知りえてしまう」という重責に苦しみ、それを刑事として法的・物的に証拠立てる難しさにもがき、死者の悲嘆が呪いのように彼を縛りあげ、どんどん奈落の底へと落ちていく。宮藤官九郎ゲスト回では刑事と死者とのバディもののような軽妙なやりとりを見せ、ヒューマンドラマとして秀逸な回も挟みつつ、視聴者は彼が踏み越えてはならない「境界」へと一歩ずつ近づいていることを、少しづつ変わっていく行動や表情から読み取り、先に待つ破滅を予感する。連続ドラマであるからこそ成し得る構成の妙を久々に感じたドラマだった。
テレビ東京ドラマ24『なぞの転校生』匿名希望
眉村卓原作小説の再映像化作品です。今回のドラマ化では3.11以降の社会問題が並行世界での悲劇として暗示されています。しかし本作はともすると粗製コピーになりがちなリメイク作品ではありませんでした。全編を通じて、本作を企画し脚本を手がけた岩井俊二氏のセンスが光っています。また映像の隅々まで長澤雅彦監督の美意識が行き届いており、その入念な画面作りは、異次元から逃れてきた余命幾ばくもない少女の「この世界は美しい」というセリフの重さを支えています。そして1975年放映のNHKドラマは本作の並行世界であるという設定に驚かされました。これは並行世界を扱うSFドラマならでは。SF大賞にふさわしい傑作です。
乾緑郎『機巧のイヴ』山岸真
ロボット工学が異常に発達した江戸時代的改変歴史世界を舞台にした、時代SFミステリ連作。時代小説、SF、ミステリそれぞれとして読みどころがあり、さらにそれがなめらかに融合され、とくに時代SFを語る際には今後欠かせない一作。後半では新たな視点が加わり、改変歴史ものとしても大きな背景(あるいはより複雑な設定)を示唆する。
田中ロミオ《人類は衰退しました》シリーズ山岸真
一見のどかで"ゆるい"世界と語り口の中に、SFの設定・大道具小道具を次々と投入した中篇及び長篇の連作シリーズ。さらに各話の理屈や展開もかなり凝ったりひねりが効いていて途中巻まででもユニークなシリーズだったが、最終盤で基本設定の真相が開示されてひとまわり以上大きなSFとして完結した。
柴野拓美(牧眞司編)『柴野拓美SF評論集 理性と自走性――黎明より』山岸真
現代日本SF黎明期から数多くの作家・翻訳家などを生んだ同人誌〈宇宙塵〉編集長にして翻訳家・作家であり、世界のSFファンダムでも広くその名を知られてきた故人の論考やエッセイなどを、SF論、作家・作品論、ファン活動等のテーマ別にまとめ、その足跡と業績を示した大著。SF大賞特別賞に。
仁木稔『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』山岸真
ヒト型知的人造生物の存在によって生まれた改変歴史世界が舞台の連作。異なる現実の姿を通して、現在の世界・日本の社会・文化・世相等をまざまざと見せられる。とくに第二話は長篇の物語になる要素をいくつも濃縮した傑作。
瀬名秀明『新生』山岸真
「岬にて」トリビュート、『虚無回廊』の公式スピンオフ、さらに日本SFオールタイム・ベストでしばしば長篇・短篇それぞれの1位になり、SF的ヴィジョンの高みと目されてきた『果しなき流れの果に』「ゴルディアスの結び目」をも取りこんだ小松左京SFオマージュ/継承であり、そのすべてを現在(東日本大震災後)の延長上にある世界として設定し、加えて未来の可視化を具体的なガジェットを通して提示して、SFになにができるかを問い、描いた連作。
藤井太洋『オービタル・クラウド』山岸真
全世界を揺るがす軌道上でのテロ計画をめぐる頭脳戦を、多視点多プロットで描き、サスペンスとカタルシスを存分に満喫させてくれる超弩級エンターテインメント。極近未来のWeb社会や宇宙開発、国際社会を迫真的に描きだし、そのすべてをさらに超えた力強い未来像を提示する。
六冬和生『みずは無間』山岸真
人工知能、人格転写など、近年のSFでアイデンティティ・人間とはなにかを問うのに多く用いられてきた題材を、その問いを含めて宇宙探査SFに投入し、さらにそれをパーソナルきわまる物語と絡めることで、逆に果てしなく壮大なイメージに到達した、過去に類例のない長篇。
大橋博之編著『少年少女昭和SF美術館』山岸真
現在の広い世代のSF読者(送り手を含む)が影響を受けた昭和30年代(20年代も少し)から60年代の児童むきSF叢書を、大量のカラー書影を中心に、各叢書や主要画家の紹介文とともに年代順・叢書別にまとめた1冊。巻末に全点リストつき。この種の出版物の全体像と戦後ジュヴナイルSF史とを一望できるようにした意義・資料性は特別賞に値すると思います。
菅浩江『誰に見しょとて』山岸真
メガネをかけるのもサイボーグ化のうち、というのと同様に化粧という行為を第一歩にしたポストヒューマンSF連作。美容と医療の融合を軸に、多角的・段階的にこれまでにないかたちで身体から種のレベルにいたる変容のヴィジョンを描いていく。
谷甲州『星を創る者たち』山岸真
太陽系の各天体・星系で非常事態に対応する現場の人間たちを臨場感と現場感覚たっぷりに、かつ抑えた筆致で描いた工学(宇宙土木)SF連作。この種のハードSFとして最高レベルの個々の短篇をしだいに結びつけて作品世界に厚みを持たせていった上で、飛躍的という言葉では足らないほどに物語のスケールを時間的空間的に拡大させて作品世界すべての意味を一変させてしまう最終話に驚愕。
東山彰良『ブラックライダー』山岸真
大災厄後に人口が激減、倫理観も激変した世界の北米・中米を舞台に、西部劇として開幕する第一部、ラテンアメリカ小説的な場面やイメージも頻出する第二部、両者が合流する第三部、全600ページをすさまじいパワーで読ませ切る。
STAP細胞をめぐる科学者コミュニティ及びサイエンスライター各位によるサイエンスコミュニケーション匿名希望
日本科学史上まれにみる不可解な事件として、多くの人々の記憶に間違いなく残るであろう「STAP細胞」を巡る一連の騒動は、登場人物達のキャラクター性の高さ・発見の革新性・次々と明らかになる事実の奇怪さ等様々な「これまでにない」様相を持っていた為、科学誌は勿論一般紙からゴシップ誌はてはNHKドキュメンタリーまで様々なメディアが飛びついた。しかし、疑惑の発見と提示から謎解き・一般人への解りやすい解説に至るまで、もっとも重要な役割を果たしたのは科学者コミュニティ及びサイエンスライター各位によるSNSを通じたアプローチだった。まるでSF小説のような展開を見せたこの事件を契機に、日本における科学研究と科学コミュニケーションの在り方は明確に変わるだろう。これを記憶に留めるため、大賞に推薦する。特に、騒動の発端から一貫して科学の言葉で事件を読み解いた遠藤高帆研究員に差し上げたい。
アニメ「スペース☆ダンデイ」松本規之ジャパンカップ観戦中
SF大賞の作品にアニメ「スペース☆ダンデイ」を推薦します。SF的要素をベースに各話ごとにアニメーション作画的にも音楽的にもチャレンジしておりSFの鍋料理的面白さがあります。
小川一水「天冥の標」だいぶつ
小説から小川一水「天冥の標」を。完結していないが、いまだ衰えることなく面白さを保ち、現在最も続巻が楽しみな作品であるため。小説の通りに2015年にパンデミックが起こってしまったら受賞を見られないかもしれないので(笑)
市川春子「宝石の国」だいぶつ
コミックから、市川春子「宝石の国」を推します。
独特の絵柄で架空の世界を美しくリアルに描いている。
人間の末裔が宝石や月人、海中の生物になっているという設定の奇抜さも去ることながら、能天気な主人公が苦しみや悲しみを知り成長してゆく過程が胸に迫る。まだ連載中だが是非。
六冬和生『みずは無間』かん
お腹いっぱい食べたはずなのに、まだまだ食べ物を求めてしまう業と言うか欲と言うか、それをSFとしてうまいことまとめた一作
すべてのコメントを開く
すべてのコメントを開く
業田良家「機械仕掛けの愛」ども( ˘ω˘ )スヤァおじさまです
業田良家氏の「機械仕掛けの愛」を推薦します。星新一氏を漫画で継承している現在進行形の作品です。成人向け雑誌掲載ですが、子供からお年寄りまで広く受け入れられる作品です。愛に溢れています。
山本弘「BISビブリオバトル部 翼を持つ少女」九郎政宗
山本弘「BISビブリオバトル部 翼をもつ少女」 http://www.webmysteries.jp/special/biblio-01.html を推薦します。単行本一冊文をまるごと無料公開、「本を全力で紹介しあう競技」ビブリオバトルが題材、そしてなによりサンリオ文庫やハヤカワ・ファンタジィなど
古くて熱いSFの夢と魂を21世紀に甦らせた、これらの点で稀有な作品だと思います。推薦(@∀@)
安堂ロイド A. I knows Love ?匿名希望
安堂ロイドを推薦します。

昨今、SF作品は少なく
ターミネーターの様な
未来を想像出来る壮大な
世界を思わせる作品でした。
谷甲州『星を創る者たち』地上最後のマリ本D
宇宙進出を描いたSFにおいて、宇宙の広大さに対して小さな人間たちのイデオロギーが対立するものは数あれど、進出の基礎の基礎、「土木建築」を主題に選んだものはそうそうないのではないか。地球とは遥かに異なる環境下で、想定外の事態に直面しながら、それに対応する
技術者たちには、確かな技術と、それに裏打ちされた矜持がある。「いぶし銀」との形容もあるが、個人的にはハードSFの中に現れた「ハードボイルド」と言い表したい。技術者としての、そして何より人間としての矜持を描いたハードSFとして、あの着地点は相応しかったと
思う。
片瀬二郎『サムライ・ポテト』地上最後のマリ本D
SFにとっての新しさとは、まったく新しい世界観を作り上げるか、既存の世界を思いがけない視点から捉えなおすかの二通りがあると思うが、さしずめ、本書は二つ目の新しさがつまった傑作短編集である。ロボットに芽生えた自我が動作不良として処理され(表題作)、時間が
(ほぼ)止まった世界では狂気が生まれる(「00:00:00:01pm」)。オープンソースデータとテロの戦いがあれば(「三津谷くんのマークX」)、宇宙に漂うコンビニでのサバイバルも描かれる(「コメット号漂流記」)。乾いた印象を受ける文章と、ホラー系出身故
の生々しい(時に、過剰なグロテスクな)描写は好みの分かれるところかもしれないが、本書が優れていること自体は揺るぎないことだ。期待の「大型新人」の再デビューに期待したいと思う。
立川ゆかり「是空の作家光瀬龍」マンシェン駆動系ブドヴァイゼル男
SFマガジンに昨年10月まで連載された評伝。日本SFの巨匠光瀬龍の人となりと心情を、豊富な資料を基に詳らかに掘り下げた。この評伝の後に光瀬作品を読むと、作品理解は作者の人間性を知ることで一層深まるものだと改めて教えられる
アニメ『機動戦士ガンダムUC』ジュール
ガンダムがSFであるか否か、そうした論争があったため、今回最後までエントリーするかどうか迷った一作。しかしながらガンダムが日本のSFアニメ市場において与えた効果は多大であって、その点を見過ごすことはやはりできない。何よりも、現在の日本において、あれだけの経済効果を持つSF作品はほかに類を見ない。今回のユニコーン完結を一つの契機として、日本SFにおけるガンダムの、引いては日本SFアニメの現状について見直す、そうした観点から、本作を日本SF大賞候補作としてエントリーしたいと思う。
(特別賞として)創刊700号記念アンソロジー SFマガジン700 国内篇 海外篇ジュール
本作はこれまで日本SF史を支えてきた雑誌、SFマガジンにおいて発表されてきた作品群の中から、貴重な作品を集めたアンソロジーである。神林長平や桜坂洋などの書籍未収録作品群、ファンが読みたいと切望していた作品が数多く収録されている。その中でも特に秋山瑞人の海原の用心棒。陸海空の三部作として、長年書籍化が待たれていたが中々、最後の空が発表されず、長らく読むことができなかった。そうした近年、ファンになった読者に作品を読める機会を与えたという点を評価して、本作を特別賞に推薦したい。
(特別賞として)鈴木いづみジュール
これまでの日本SF大賞において、特別賞は評論作品や日本SF史において功績があった人、もしくは死去者に与えられるものだった。そのため鈴木いづみは1986年に亡くなっているため、本来であれば受賞対象者ではない。しかし、鈴木いづみが現代SFに与えた影響は大きく、特に現在を見つめるという点において彼女のSF小説群は素晴らしい。今年出版された、契約 鈴木いづみSF全集においてその編者である大森望氏は彼女を、『サイバーパンク以上の速度で現代を描き、その速さと切実さによって自分自身を文学史に刻みつけた。』と記している。そうした文学史的側面から、SF的側面から、彼女のSF全集が出た今年、今一度、鈴木いづみという作者について考える必要があると思う。
作詞・作曲・編曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND 歌:KMM団『ウィッチ☆アクティビティ』ザビエル・コーエン(曖昧さ回避)
2003年、クラフトワークは死んだ。否、『ヨーロッパ特急』『ロボット』『電卓』―狂乱し高騰する20世紀の科学技術を謳歌した彼等は、エコなるテクノロジーの後退に背を向け自転車で走り去った。だが2011年、冥く世界を覆った大災害が、この眠れる伝説の巨人を呼び覚ました。そして彼等は歌った―「フクシマ」と。甦る巨人の威容に心打たれたであろうTECHNOBOYSは、高度に発展した魔法によって崩壊する世界の物語の最終楽章に、『レディオ・アクティヴィティ』へのオマージュを捧げた。「魔女と魔女でコンガラがっちゃうかもね?」―それは、魔法と見分けの付かない詭弁と科学と見分けの付かない迷信が跋扈する世界への痛烈なアイロニーであると同時に、クラフトワークと云う20世紀最高のSF的ガジェットが今世紀に於いても尚語り継がれるべき存在である事を、我々に思い起こさせるのだった。―キミの世界はドッチモコッチモWitch! Witch!
永井均『哲おじさんと学くん』節足原々
SFにおいてはセンス・オブ・ワンダーが重視されるが、では、最もセンス・オブ・ワンダーなものとはなにか? それは〈私〉である。この宇宙がいまある宇宙と全く物理的に同じであるが、そこに〈私〉がいないような宇宙を想像せよ。そのようなことは可能だ、しかし、なぜここに〈私〉がいるのか?もっと驚くべきことに、このような驚きは他者と共有することができる。いったい他者は何を驚いているのだろうか?

(本作の単行本は2014年9月に刊行されていますが、エントリーは連載に対してのものとなります。日本SF大賞運営委員会)
出来事「ハヤカワ文庫でのディック作品刊行ラッシュ」節足原々
ディックが帰ってくる!2014年初頭ごろからハヤカワはP.K.ディックに力を入れ始めた。絶版であった『ディック短編傑作集』を『アジャストメント』『トータル・リコール』『変数人間』など統一デザインの新装版にしてこの世に送り出す。更にはサンリオSF文庫で一度出たきり絶版であった『時は乱れて』や、ハヤカワ・SFシリーズで刊行されていた『宇宙の眼』などを復刊。なんと、驚くことに『聖なる侵入』までもの刊行が予定されているという。創元SF文庫にての『ガニメデ支配』刊行により残る未翻訳ディック作品は"Vulcan's Hammer"一つとなった。喜ばしいやら悲しいやら。これからも、ディック旋風は終わらないだろう。惜しむらくは、いまだディック作品のアニメ化が行われていないことだ。近年のアイドルアニメ流行の波に乗り、『流れよわが涙、と警官は言った』をアニメ化する猛者はいないだろうか?
Niantic Labs「Ingress」ex_hmmt
https://www.ingress.com/ 2013年12月15日に正式運用開始の、スマホ向け位置情報ゲームであり、謎のエネルギー"XM"を利用して人類を進化させようとする側と、それを阻止する側の戦い
日常的に存在する世界が、スマホを通す事で別の世界へと変貌するその感覚、それを手に取り体験できる事が、実にSF的である。惜しむらくは、プレイしていると必然的に健康になってしまう事であり、少々そこはSF的ではないかもしれない。
今井哲也『アリスと蔵六』地上最後のマリ本D
対象期間に発売されたのは2巻と3巻だけであり、また今なお連載中であるが、あくまで作品全体での投票であることをまず先に。こういう「少し・不思議」系の作品は、不思議さを際立たせるために、まったく不思議さのない日常を描く力が実は一番必要とされていると思うが、
その点において、作者は比類ない力を持っている。コマの中に描かれた細かい描写しかり、しっかりと作り込まれた設定しかり。そんな、リアルな世界だからこそ、物語が「動」の時だけではなく「静」の時であっても面白い。そして、そんな世界だからこそ、主人公の少女が徐々
に人間性を獲得していく様が、リアルなビルドゥングスロマンとして胸に迫るのだ。
『All You Need Is Kill』のハリウッド映画化地上最後のマリ本D
日本人が書き上げた作品が日本内での映像化を経ずに、いきなりハリウッド映画化されたことは、一つの事件だと言ってもいいと思う。宣伝などではその点が強調されなかったことが残念でならないが、これがエポックメイキングとなり、日本人が作り出した作品が、ハリウッドで
映画化されることが当たり前になる時代がくるかもしれない。その先駆けとなるであろう作品に、桜坂洋氏の傑作SF長編が選ばれたことを記念して。
藤井太洋『オービタル・クラウド』YOUCHAN
デビュー作の『Gene Mapper』から一貫して、この作者のテクノロジー描写には、これまで読んだことがないような絶対的な安心感があるが、『オービタル・クラウド』でひとつの完成形を見たように思う。そこに描かれるほんの少し先の未来は、どちらかというと絶望的だ。しかし、たとえどんなに絶望的な社会であっても、人は生きていかなくてはならないし、新しい価値観は生まれ続ける。『オービタル・クラウド』で、世界を文字通り股にかけて全力疾走する若者たちの取捨選択のひとつひとつには、大いなる希望がある。平易で、読みやすい文体で丁寧に描きだされた藤井作品には、リアルでシビアで、かつポジティブだ。これこそが、ようやく現れた21世紀SFの姿だと思う。SFは、希望だから。
創土社〈クトゥルー・ミュトス・ファイルズ〉シリーズYOUCHAN
クトゥルー神話をモチーフにした、書き下ろしアンソロジー・シリーズ。2014年10月現在で20巻を超え、内容も小説にとどまらず、ゲームブックや漫画など、様々な形式を展開。朝松健、菊地秀行、山田正紀、牧野修、図子慧ほか、脂の乗り切った、いま最もイキのいいSF・ホラー作家陣が新作を提供している点に注目したい。また、シリーズの中核をなす、三人の作家によるアンソロジー巻には、テーマとなるクトゥルー神話が制定されている。その元となったラヴクラフトの原作冒頭の翻訳を、荒俣宏・増田まもるが手がけ、海外文学を愛好する向きにもアピールした。短篇アンソロジーから長篇まで、幅広く「触手」を伸ばし、読者を増やし続け、「クトゥルー神話」というマイナーなジャンルの周知・啓蒙に当レーベルが果たした功績は計り知れないと思う。
スペース☆ダンディZERO
アニメ作品の中でも特異な試みを多数しており、ただ毎回楽しく見ているだけで他の作品には無い軽い雰囲気のままSFの深みに誘われて行く不思議な体験をしました。
アニメ『みならいディーバ』節足原々
現実がSFに追いつき始めた一例。おそらく史上初であろう『生放送アニメ』である。声優にモーションキャプチャーセンサーをつけ、そのデータでCGキャラクターを動かすという番組。内容は、ツイッターからお題を募集するなど、視聴者参加型のバラエティーである。この企画は、おそらく後に多作されるバラエティーアニメのさきがけになるだろう。ストーリーアニメのキャラクターがバラエティーアニメに出るなどのことも行われるかもしれない。現実と仮想の垣根はもう壊れているのだ。
テレビアニメ『Wake Up, Girls!』節足原々
え?SFじゃないじゃん!?というなかれ。本作品は、一般的なアニメ世界よりも現実世界に近い可能世界について書いたアニメである。東日本大震災の描写もあるが、もっと現実世界に近いなと思ったのは作中でキャラクターが『這いよれニャル子さん』のテーマソングを歌っていたこと。他作品に言及することにより、この作品はそれよりも現実世界に近いということを示す手法はもっと一般化してよい。
すべてのコメントを開く
すべてのコメントを開く
節足原々『神を左手に移植する』節足原々
小説投稿サイト「小説家になろう」に連載している自作をどさくさにまぎれて自薦。http://ncode.syosetu.com/n5783cf/ で読むことができる。
最新の科学的知識を総動員し、この宇宙の謎について探求する記念碑的作品になる予定だが、作者多忙により更新が遅い。
鈴木生朗・秋葉剛史・谷川卓・倉田剛『現代形而上学 分析哲学が問う、人・因果・存在の謎』節足原々
SFはScience Fictionの略であることから、比較的、文系カテゴリーに属する知識は省みられることはなかった。そのようないまだSFが有効利用できていないネタの源の一つが哲学であろう。例えば、量子論における多世界解釈やインフレーション宇宙論においての多宇宙などに比べて、分析哲学における可能世界論はあまりSFの材料とされない。現実のテクノロジーがSFを追い越し始めたいま、SFが飛びつくべきなのは哲学の方向なのかもしれない。
小林泰三『アリス殺し』節足原々
『不思議の国のアリス』をモチーフにしたグロ童話SFミステリ。夢の世界と現実世界の二つの世界を行き来し、連続殺人事件の謎を解く。ミステリとしても完成度は高いが、SFとしても何度もの『どんでん返し』が起こる。驚くのは本書が売れていることで、2014年度の『このミステリーがすごい!』国内編4位に選ばれている。SFの拡散が進行しているのだなあと実感できる一冊。
小林泰三・林譲治・山本弘『超時間の闇』節足原々
宇宙上の種族で唯一、時間移動の技術を確立したもの――"イースの大いなる種族"。本書では、三人の作家が大いなる種族について三様の短編小説を書いている。なかでも白眉は山本弘の『超時間の影』であろう。この作品は、ゲームブックとなっている。ゲームブックではゲームオーバーになったとき最初に戻るというのが一般的だが、本作品はこの手法をメタ的に使い、作中人物が時間操作によって最初の時点に戻るという設定をしている。そのため、何度も最初に戻らなければクリアできないループ作品だ。難易度もすさまじく、もう20回以上ループしているが全くクリアできる気配がない。
戸田山和久『哲学入門』節足原々
SFにおいて、しばしば人々が形而上学的に保持していた前提が、形而下され、モノ化され、自然化される。伊藤計劃作品もその一種であった。本書はその自然化のマニフェストだ。各章では『意味』『機能』『情報』『表象』『目的』などが進化論を武器に次々と自然化され、ついには『自由』『道徳』『人生の意味』までがその刃にかかる。これらの企てが成功するがどうかわからないが、考え方が社会に浸透すれば大変な変化を引き起こすだろう。そのような意味で、本書はポスト伊藤計劃作品なのかもしれない。
朝日新聞出版『週刊 地球46億年の旅』節足原々
地球誕生から人類文明の発展まで、46億年のなかで起こった主な事件150を週刊で送るという雑誌。『週刊』というところが大きなポイントで、本屋で見かけるごとに「あ~もう中生代か」と時の変化を感じることができる。スマホアプリを使い、表紙にスマホをかざすと動き出すというAR技術を使っていることもSF度が高い。
谷山浩子『Amazonで変なもの売ってる』節足原々
『まっくら森の歌』で有名なシンガーソングライター谷山浩子さんの小説。寝入る直前に見る夢のように、脈絡も、論理もぶった切り異様な事柄が起き続ける。はじめはシュールなファンタジーであったのだが、最終的にはあなたの存在の謎にたどり着くのだ。はたして、液体は液体を飲めるのか?このことを知りたいあなたは是非ともこの本をAmazonで買うべきだ。
矢部崇『〔少女庭国〕』節足原々
デスゲーム小説というものを知っているだろうか?ある人々が、密室に閉じ込められ、そこで生死をかけたゲームを強制させられるというあれだ。この小説でも、そんなデスゲームが遂行される。しかし、それは巨大化していき一つの"世界"への行き着く。わたしは世界を見るのが好きなのだ。この小説では、あたかも、瓶にいれた蟻の巣を見るように、世界を見ることができる。
小野田整『テキスト9』節足原々
昔から、究極の答えは42であると言い伝えられていたが、この本の帯によると違うようだ。なにしろ、あの神林長平が『この本には、およそ言語化しうるすべての謎の答えが、書かれている』と記しているのだから。そんな答えが1900円で買えるとは世の中便利になったものである。いますぐ書店に行かねばならない。
映画『思い出のマーニー』節足原々
宮崎駿なき後のジブリに現れたのは、本格時間SFだった。『思い出』を聞く事で時間移動する超能力をもつ少女、杏奈は、その能力を使い過去の少女マーニーと出会い、恋をする。しかし、そのことは因果律を破るという禁忌であった。超形而上学的存在である時間検閲官は、杏奈の記憶を操作することで因果律を保とうとする。少しずつ、マーニーのことや周りの世界のことについて忘れていく杏奈。はたして二人は、宇宙へ叛逆し、愛を貫くことができるのか!? その結末をブルーレイで確認しよう。
藤井太洋『オービタル・クラウド』Ta.Miyoshi
実在の人物やガジェットをネット上でがんがん調べて新鮮なネタを作品に仕上げていく手腕はまさにネット時代の作家だと思います。物語は、暗い側面もありながらポジティブな視点で物語に昇華され、未来に希望を灯してくれます。
藤井太洋『オービタル・クラウド』タニグチリウイチ
現在あるテクノロジーを少し先へ延伸したところに現れる世界のビジョンを見せてくれる物語。人類が新たな可能性を得て外へ、未来へと飛躍する可能性を示唆する展開が、読み終えた者の心を感嘆へと導く。小松、クラークのその先を探れ。
アニメ『シドニアの騎士』Ta.Miyoshi
フルCGアニメとして精緻なSFビジュアルを原作の雰囲気を損なうことなく映像化しました。それが通常のアニメスタジオでは無く、CG製作会社の手による物と言うこと。セルアニメからCG化してさらに担い手が変化したこともエポックです。
遠藤淑子「プラネット」Satoru Akimoto
少女と従者のロードムービー的ファンタジーのように始まる。設定が少しずつ明らかにされSF要素に深みが増す。絵が下手だからとで読まないのは勿体ない。トライガンからアクションを抜いて新井素子分を加えて感じ
北野勇作『社員たち』佐賀通
非日常の中にいる登場人物たちはまるで日常の中にいるように考え、行動する。でもその登場人物たちにとってもその世界が普通なのかそうじゃないのかもよくわからない。
読み終わると自分が作品に対して笑ったのか怖いと思ったのかもよくわからなくなる。だから面白かったです。
安堂ロイド A. I knows Love ?kyoko
SFはどちらかといえば苦手でした。木村拓哉さんが「安堂ロイド」を演じることによってSFの世界の扉を開けてくれました。日曜9時という時間帯にオリジナルでのSFドラマをお茶の間に送り込んだTBSスタッフ、木村さん達は凄い挑戦をされたと思います。人間科学の進歩は使い方を間違えれば世界を変えてしまうこと、アンドロイドが人間を支配することも不可能ではないこと、そしてそれを阻止し、救うことができるのは家族や友人、恋人への想いや人類愛であることに気づかせてくれました。「未来に誇れる今を作れ!」この言葉が胸を打ちます。そして、SFという未知だった世界がこれほどまでに面白いのかも教えてくれたドラマでした。木村さんはじめTBSスタッフに心から感謝しています。争い事が絶えない昨今、本当に100年後の未来は幸せなのでしょうか?そんなことまで考えさせてくれたドラマでした。
大屋雄裕「自由か、さもなくば幸福か?」gryphonjapan
非小説の論考書ながら、オーウェルらが描いた「監視社会ディストピア」が現実化した今、でどんな思想問題を孕むかの論考は小説以上に「SF的」。
http://www.amazon.co.jp/dp/4480015957
脚本・監督 福田雄一(主演・柳楽優弥)ドラマ『アオイホノオ』一本木蛮
漫画家島本和彦の自伝・同名漫画作品のドラマ化。30分11話完結。第20回日本SF大会冒頭DAICONⅢオープニング映像から始まり、原 作12巻分を一気にまとめオリジナルのラストを加え完結。何かを目指していた実在人物達の、まだ何者でもなかった・何者かになろうともがいて いたかつてをこれでもかと描いた本作。後にガイ ナックス主要メンバーとなる山賀・赤井・武田・庵野秀明らが好敵手役。約35年前の1980~81 年を舞台に、21世紀へ続く日本SF大会やSFファンダムの礎をきちんとヒアリングを行った上で、丁寧に描いた。「時代劇」「コメ ディ」といった枠に収まらない。観る者全ての「若気の至り」を思い出させてくれる。
あえて「フィクション」「大人も子供も楽しめる娯楽作品」として「ドキュメンタリー」を描いた点は非常に評価が高い。なかなかこれだけの熱量 を持った実写作品には出会えないとハッキリ言える作品です。
上田早夕里『妖怪探偵・百目』nyapoona
近年ライトノベルと一般文芸のあわいで乱立する妖怪ものだが、本作は妖怪とサイバーパンクという異色の取り合わせで迫る。萌えありサスペンスありとバラエティ豊富な連作集で、中でも鎌鼬とアンドロイドの恋を描いた短編が出色。
人間と非・人間の恋愛や交流を描いたSFは数多くあれど、人間・妖怪・アンドロイドという三重構造になった作品はあまりないのでは。妖怪を弄ぶ人間の身勝手さでは処理しきれない哀切と、わずかな希望を感じられるエンドが染みる。
山口優『ディヴァイン・コンクェスト 小惑星帯のヒロイン』タニグチリウイチ
一連の著作と同じ世界線上で、人工知能と人間の境界を探り越境を模索する物語。人工知能を超えて人格を持った"人工精神"を生み出す展開がスリリング。人工知能に対する著者の思考の最先端を楽しみたい。
すべてのコメントを開く
すべてのコメントを開く
籐真千歳『θ 11番ホームの妖精 鏡仕掛けの乙女たち』タニグチリウイチ
遠隔地を結ぶ技術が使われた鉄道網が発達した世界、東京駅上空2200メートルにある11番ホームで一人働く全身義体の少女を主人公に、近未来の技術や政情、過酷な運命を強いられた少女たちの苦悩が綴られる。
矢部嵩『〔少女庭国〕』タニグチリウイチ
密室で殺し合い誰かが生き延びるデスゲームと思うのも最初だけ。やがて始まる悠久の歴史は人類が、生命があらゆる困難にどう挑み乗り越えていくか、或いは阻まれ滅びていくかが示され過去を思わせ未来を思考させる。奇作にして傑作。
綾崎隼『未来線上のアリア』タニグチリウイチ
方程式物を知らず書かれたという方程式物の最新作は限界の設定に特徴を持たせ生存への戦いに一方通行の思いを絡めて、テクニカルにもメンタルにも複雑な"謎"を作り上げた。解き明かして噛みしめよ、その情動を。
田辺青蛙「あめだま」apple
豊崎社長の番組で紹介されていたので知りました。今は懐かしい古き良き幻想小説の集大成といった内容。最初は地味に感じたのですが後でじわじわきました。円城塔と通じる部分もありますね。
市川春子「宝石の国」apple
人類がいなくなってしまった地球で中性的な躯体の登場人物による物語。宝石の生命体達と月人のキャラデザインの線は市川春子にしか描けないものでしょう。
梅田阿比『クジラの子らは砂上に歌う』タニグチリウイチ
星を覆う砂上を行く船には異能を持った者たちが暮らしている。そこに起こる変化。来襲者によって虐殺が行われ、船に生きる者たちの過去が浮かび上がる。萩尾望都『スター・レッド』に迫るSFコミック。
スペース☆ダンディapple
終わって久々に寂しいと思えるアニメでした。参加しているスタッフの豪華さと滅茶苦茶さは他に類を見ないでしょう。円城塔氏が脚本として参加されたという驚きもありました。もっと評価されて欲しい作品です。
日本人工知能学会「人工知能Vol.29 No.1 表紙」と一連の騒動Tz
学会による「未来の表現」の改革に対して、現代芸術家がポリティカルコレクトの視点から批判するという構図は、権威者と反抗者の安定しない(あるいは早いサイクルで入替わる)未来を感じさせた。
安堂ロイド A. I knows Love ?匿名希望
「安堂ロイド」は人間と物とA.I.の違いを吟味することによって、人間の在り方を問い直し人間とA.I.の関係の再考を促した哲学系SFである。特に、人間を凌ぐ肉体・知性・感情・意志を備えたA.I.を登場させることにより、現代の人間の在り方が物的でないかを問いかけている。2066年人口調整の為の虐殺器として権力者に利用された後、意志に目覚め権力者を襲撃するこのA.I.は、意志が芽生えた途端反逆者の烙印を押される。物であるが意志を持つA.I.は、人が考えず沈黙し利用されるだけの物の如き存在に堕していないか顧みさせる。無人兵器との関係や迫り来る食糧難に今後いかなる倫理的責任と自覚を負うべきか深慮を迫ると同時に、既成概念から解き放たれ意志と良心に目覚めた生き方をすべしと訴えかける意欲作。娯楽として第一級のドラマであるだけでなく、科学技術や人命に対する倫理的省察を直ちに促す意図を明確に示した本作は、映像SFとして他に類を見ない。
篠田 節子著、牧 眞司編『ルーティーン 篠田節子SF短篇ベスト』 曽根卓
多くのジャンルに渡って活躍する篠田節子の作品から、特にSF読者への親和性が高いものを選び出し、篠田節子の、優れたSF・幻想小説の書き手としての側面に光を当てる好短編集。オールドタイプなアイデアを、卓越した文章力で美しく/力強く描き切る作品、先端的なガジェットを家庭という枠組に投入し、意外な結論を導く作品など、「篠田節子にしか書けないSF」が揃い、小説のみならずエッセイやインタビューからもセンス・オブ・ワンダーへの理解がうかがえる。1997年発表の『斎藤家の核弾頭』が、年度ベストSFの4位に選ばれてから20年近く。改めてジャンルSFからの評価を求めたい。
小野寺整「テキスト9」高槻真樹
 これは、活字という形を取って、私たちの現実の中に突如出現した「怪物」である。書物という形を取ってはいるが書物という器に到底収まり切るものではなく、2014年は「テキスト9」が顕現した年として今後永く記憶されることになるだろう。一度読んだだけではなかなかその全体像をつかみづらい作品ではあるが、今では幸いデジタル版も刊行されている。冊子版とデジタル版で違う読み方・楽しみ方ができるという点だけでも、本作品の際立った独創性は注目に値する。本当かと疑う方はぜひ、登場人物の名前が作品中のどの部分に使われているか、デジタル版で検索にかけていただきたい。最初から普通に読み進める形では決して見えてこなかった本書を形成する別の骨組が立ち現われる。これだけ
重層的な構造を併せ持っている作品でありながら、表面的には極めてベタなSFであり、大変に読みやすいのも魅力的だ。
夢枕獏『大江戸恐竜伝』嶋田洋一
夢枕獏さんの『大江戸恐竜伝』を推薦します。
 江戸時代の鬼才、平賀源内が南海の孤島に生き延び
る恐竜の謎をめぐり、八面六臂の活躍を見せます。入
り組んだストーリーが結末に至ってパズルのようにあ
るべき位置に収まっていくのは快感。「物語」として
のSFの魅力を最大限に引き出した傑作だと思います。
「伊藤計劃以後」の先鋭的なSFの魅力とはまた違っ
た、「物語性」を前面に押し出した作品であり、今後
のSFはこの二つが両輪となって牽引していくものと
確信しています。
安堂ロイド A. I knows Love ?あこちゃん
TBSドラマ「安堂ロイド」を推薦します。子供の頃 夢中で見た NHK少年ドラマシリーズ以来、久しぶりに毎週楽しみに見たSFドラマでした。愛する人を守るために時空を超えるストーリーは、究極のラブストーリーでもあったと思います。
アニメ「ノーゲーム・ノーライフ」ざいろ
個人的には壮絶で鳥肌ものだったのはアニメ「ノーゲーム・ノーライフ」、で特に第6話「一手 インタレスティング」での 壮絶な神様との「現実化するしりとりゲーム」が強烈だった。他にも数々の優秀な話が多く、SF&ファンタジー物として強く推奨したい作品である。
ゆうきまさみ『白暮のクロニクル』かん
この社会に不死者が当たり前にいたらってのをゆうき節でペーソスを交えながら描く作品
アニメ「蒼き鋼のアルペジオ」ssS
「蒼き鋼のアルペジオ」(アニメ版)(2013年10月から12月放送の全12話)を推薦します。ストーリー展開が異なる原作(漫画版)の方も素晴らしいのでどちらを推薦するか迷ったが、アニメ版がオリジナルの結末で一区切りついているのでこちらを。
人類の戦略を学習するために人類を模した身体をまとうようになった人工生命(?)たちが、感情を獲得して変化していく。「我々は何処から来て何処へ行くのか」という疑問を人類ではない存在に託している。原作ではこの作品独自の解答はまだ見えていないが
アニメ版では感情と存在理由とプライドのぶつかり合いで、敵に手を差し伸べたり同士討ちをしたり使命そっちのけで暴走する様子が原作より過剰に描かれていて、テーマに対する解答が垣間見えた感じが。単純にSFアクションとして見ても文句なしに面白く感動的。
藤井太洋『オービタル・クラウド』かん
SNS社会のスピード感と、地球全体が一つの世界として動くちょっと先の未来をアクションも交えて描いている
あなたのSFコンテスト茶林小一
SFを幅広い意味で解釈することをコンセプトに有志により開催されたSF小説競作企画です。2014年5月5日より募集を開始し、10月5日に閉幕しました。参加人数208名、参加作品全170作品。
有志企画でこの規模でSFのすそ野を広げたことは大いに価値があると思うので推薦させていただきます。
小野寺整「テキスト9」つおるあ
非常に優れた言語学SFであり、鋭い論理がユーモアをまじえて語られる。ずいぶん遠くまで出かける物語だが、それがただ遠いだけでなく、ちゃんと全体の構成として適切な配置によって絶妙の物語構成となっているのも着目したい。
岩井俊二プロデュース長澤雅彦監督「なぞの転校生」きくこ
2014年1月〜3月に放送された
岩井俊二プロデュース長澤雅彦監督の「なぞの転校生」を推薦します。
映像作品では脚本、役者、映像において近年で最高傑作だと思います。
最終回のアンドロイドの少年ととお姫様それぞれのシーンは場面を頭の中で思い出すだけでも
涙が出ます。
眉村卓さんの傑作原作を現在、これからの未来の問題として、願いとして
見事に昇華した作品だと思います。
大好きです。
すべてのコメントを開く
すべてのコメントを開く
安堂ロイド A. I knows Love ?真珠
ラブストーリーというオブラートにくるんであったがSFに馴染みのない層には難解な世界。 ありがちなタイムスリップ物ではなく映画でしか集客が成立しそうにもない内容で真っ向勝負した本作。
しかも単なるエンタメ作品ではなく、今そこにある危機、そして来たるべき未来に起こるであろう危機をも示唆していた。人間が制御できない化物、人口爆発による大量虐殺がいつ起きてもおかしくない現実。2045年問題を見てもドラマが絵空事ではない事を考えさせてもくれた。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
ロボットが感情を持つというテーマは昔から様々な作品で描かれてきたが、一般視聴者の中にはそれを知らない層もいる。SF離れが進む今、本作が地上波の看板枠でBigネームを主役に置いて制作されたという事がSF作品の未来も感じさせたと思ってもいいのではないだろうか?
藤井太洋『オービタル・クラウド』桐島雄大
この小説は至近未来の宇宙開発を軸にしながら、国際的な陰謀とそれに対処する組織・人物を描いています。とにかく様々な立場の人間が登場するので、プロットは複雑に入り組んでいるのですが、作者はそれを見事に捌ききった上で、各人の立場や環境が異なるがゆえに起こる問題にアプローチしています。本書には幾つかの対立軸が設定されており、それは例えば宇宙開発における先進国と後進国、プロフェッショナリストとジェネラリストといったものです。これらの対立が提示する問題は深刻なのですが、強力な楽観主義に支えられたこの物語は、あくまでも希望のある未来像を見せてくれます。日本SF大賞が求める「SFの歴史に新たな側面を付け加える作品」という点では、評価がやや分かれるところだと思いますが、かつてのSFが示していた科学への信頼を、現代的な形で更新したことを私は高く評価しています。以上が推薦理由になります。
安堂ロイド A. I knows Love ?匿名希望
私は、今まで一度もSFの小説、映画、ドラマなどを見たことがありませんでした。

むしろ、避けてきました。しかし、安堂ロイドを見てから、受け取り方が、大きく

変わりました。今、起きていないことを想定し、未来を考えていくことの大切さを

痛感しました。入り口は、木村拓哉さんでしたが、その後、3Dプリンターの出現

ペッパーなど、ロボットと共存する社会がやってきたことを見て、今出来ること

未来に向けて出来ることを考えるようになりました。安堂ロイドの、ドラマの中にある

沢山のメッセージは、子供たちに向けて、大きな意味があると思います。

素晴らしいドラマでした。
下永 聖高『オニキス』ジュール
第一回ハヤカワSFコンテスト最終候補作である本作は、塩澤快浩氏が選評において、SFを読む喜びをもっとも味わえた、と語るように非情にSFとして面白い作品だ。SF的なギミックにおいて非常に優れており、魅力的なガジェットに満ちている。そうしたガジェット的、SF的側面から見るにおいて、本作は日本SF大賞を受賞するに足る作品である。
安堂ロイド A. I knows Love ?ジュン
安堂ロイドA.I.knows LOVEを推薦いたします。私のようなSFに全く縁が無かった者が 木村拓哉さんがするというので 初めてSFの世界に足を突っ込みました。結構 そういう人がいらしたのではないでしょうか?ただその一点だけでも 或る意味SFに対するこの作品の功績は大きいと思います。そして 作品が目指した未来に対する現在の在り方の問題提起。大人と呼ばれる者が どう生きるべきかのメッセージをアンドロイドを通して ラブストーリーを絡めながら 私達に伝えてくれました。作品のメッセージ性も高く、続きを期待しています。地上波のしかも日曜9時枠というドラマ枠で敢えてアクション SFというこの作品を企画放送という挑戦をし、SFの世界に無知な私達を振り向かせてくれたこの熱い作品を私は応援したいと!
思い、推薦いたします。
安堂ロイド A. I knows Love ?aya
未来からある女性を護るために現れ、彼女を襲う未来からの敵と戦い続けるアンドロイド。こんな挑戦的な設定の作品と、日曜9時に、しかも国民的な知名度があり、長きにわたって日本のドラマをけん引してきた木村拓哉さんで作り出したことに先ず、制作陣の強い志を感じます。設定こそSFですが、そこに込められた漫然と来る未来を受け入れるのではなく、自分で未来を創る。そして、そんな未来に誇れる今を生きる・・・というメッセージはとても深く心に響きました。
安堂ロイド A. I knows Love ?はるる
思春期、SFものに夢中になった世代です。あれからウン十年を経て安堂ロイドにハマりました。第1話を見て人類初の月面着陸を目指した先達のような意気込みを感じました。今後子供騙しのSFものは創れないですね。2013年TBS地上波放送「安堂ロイド」推します。
下永聖高「オニキス」梨花
あの時、何故手放してしまったのだろうと、後悔したことはありませんか?そんな時に戻れたら・・・後頭部に差し込まれた記憶保持装置によって、「書き換え」が起こる。今までのつながりが突然消え、別の道がスタートしている。

  SFだけどロマンチックさがある。第1回ハヤカワSFコンテスト最終候補作です。お薦めします。
日本SF作家クラブ編『日本SF短編50』礒部剛喜
すぐれたSFアンソロジーは、SFを読んでいこうという若い読者には必読のもの
だ。私自身、福島正実編『海外SF傑作選』、筒井康隆『日本SFベスト集成』、
ジュデイス・メリル『年間SF傑作選』を少年時代に愛読したことで、現代SFが
何かを理解できた。本書はそれらの名アンソロジーの後継者だと断言できる。
主催者たる(いま批判にさらされている)日本SF作家クラブが、その組織内で編
集された本書を候補作としてノミネートすることは、SF作家の仲間受け、あるい
はお手盛りだとさらなる批判を受けるかもしれないが、本書の文学史的な価値を考
えてここにノミネートしたい。
スペース☆ダンディKASUKA
回毎に異なる監督や脚本家の起用によって同じキャラクタを使ったSFアンソロジー的な楽しみができるアニメ。
六冬和生『みずは無間』KASUKA
第1回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。無人探査機のAIに転写された主人公の語りで構成される、圧倒的飢餓の物語。
結城充考『躯体上の翼』KASUKA
遠未来で繰り広げられる活劇SF。描かれる異形のキャラクタたちの14バイトの交流が、硬質な文体を通しても、とても切なさを募らせる。
今岡正治編『夏色の想像力』鬼嶋清美
第53回日本SF大会なつこん記念アンソロジー。創元SF文庫のパロディという遊びでありながら、プロの17名の作家が寄せた短編の数々は、これだけで年間ベスト級のものであり、本家『原色の想像力』を脅かすだけのエネルギーを込めた一冊。日本SF第一世代が「宇宙塵」「NULL」といった同人誌から出発したように、日本SFはアマチュアリズムのパワーが支えていることを改めて世に示したといえる。本音で言って、今年読んだどのアンソロジーよりも面白かった。よってこれを日本SF大賞にエントリーしたい。
高畑勲監督『かぐや姫の物語』鬼嶋清美
日本アニメーション界の巨匠のひとり、高畑勲監督の新作は、日本のSFの源流といっていい『竹取物語』を長編アニメーション化した『かぐや姫の物語』。水彩画がそのまま動くかの如き映像表現や、原典にはなかったかぐや姫の心情をリアルに描くなど、『竹取物語』を新しい芸術性と現代的なテーマを持ったアニメーション作品にまとめ上げた高畑作品の集大成といっていい作品である。『太陽の王子 ホルスの大冒険』にはじまる高畑監督のこれまでの功績全体と、監督のビジョンを具現化したスタジオジブリのスタッフの皆様への敬意をこめて、日本SF大賞にエントリーしたい。
安堂ロイド A. I knows Love ?mom
『安堂ロイド A. I knows Love ?』を推薦いたします。

壮大なスケールで描く世界観。ブレずに貫き通した「伝えたいもの」が 圧巻で深い感動を覚えます。
このドラマ主演俳優が背負う大きなもののために 数字云々でしか語られてしまうのは残念でなりません。


素晴らしい作品でした
安堂ロイド A. I knows Love ?ぐりーん
安堂ロイドを観るまでは、SFは苦手だと思っていました。観たきっかけは、木村拓哉さんですが、一話を観終わった時の興奮、久しぶりでした。すっかり忘れていましたが、子供の頃に観たアニメやSF映画を観た時の興奮だったと思い出しました。安堂ロイドは、SFが苦手だと思い込んでいた自分に、子供の頃よく観て感動した作品がSFだったと気付かせてくれた作品です。
SFの定義とか難しいことはわかりませんが、一話観終わる度に夢中になって考察したり、もっと知りたくて何度も繰り返し観たり、とても楽しかったです。作品の世界に夢中になってドキドキワクワクさせてくれた、「安堂ロイドA.I knows Love?」を推薦します。
安堂ロイド A. I knows Love ?KEIKO☆
日曜夜9時のゴールデンタイムの枠で完全オリジナル、一般受けするとは思えないSFというジャンルに挑戦した異色作。現代に生きる私たちにとても大切なメッセージを送ってくれた。SFという形を取ってはいるが根底にあるテーマは愛。身近な家族や恋人、友達、全世界の人類に対する愛があれば未来をも変えることが出来るということを教えてくれた。色々な伏線が張られ内容が難しかったせいか、賛否両論あり批判もされたが熱狂的ファンも多く話題になった作品。また木村拓哉さん始めたくさんの人気キャストのおかげでSFには興味なかった人も観始めてすっかり嵌ったという人も多かった。これがもし深夜ドラマなら元々のファンしか取り込まなかったと思う。そういう意味で日曜夜9時に放送した意義は大きかった。敬遠して観ていなかった人たち、特に若い人たちに是非とも観てほしい。
安堂ロイド A. I knows Love ?たっくんLOVE
テレビという枠で映画に通用する映像の美しさ、
音響の素晴らしさ、アクションシーンのスピード、パワーに加え、
CGの素晴らしい技術と美しさ、大道具、小道具などの緻密さ、
全てにこだわり抜いていて、それだけでも凄いと思うのに、
キャストのハマり具合がすごくて、観る者が、心寄せれば、
言葉がなくても気持ちがグッと伝わってくるほど。
SFでありながら、未来への警鐘はリアルで、
ふと「今」を「これから」を考えさせられる。
また、愛が、想いが、強く深く、溢れていたのも素敵。
オリジナル作品で、日曜夜9時にSF作品を持ってきたことは、
革命的で挑戦的だったと思います。
連続ドラマということで、あのクオリティーの高さで、
10回に分けて届けていただいたことは、本当に贅沢でした。
あの人達は、今も私の心の中で生きています。
また、会いたい...大きなスクリーンで...
と思わせるほど、記憶に残る、素敵な作品です。
安堂ロイド A. I knows Love ?まりりん
初めて松本零士アニメに出会った、その時と同じ衝撃と高揚感を感じたのが本作です。軸はごく純粋なラブストーリーですが、TVドラマとしては驚く程壮大な設定の中でごく普通の恋物語が展開される、その振り幅が魅力。そしてそのシンプルなものを包むSF部分が、とてつもない拘りで作り上げられていて、ジワジワとこの世界観の虜になります。
ただ、作品に真に魂を宿らせたのは、主演木村拓哉さんの演技です。無機質ながらやがて愛を知る哀しいアンドロイドと、対人恐怖をもつ天才科学者という対照的な二役を見事に魅せ、この作品に深みと艶を与えました。脇を固める役者さんの芝居もいい。観る程にはまる超エンターテインメント作品です。
言われなき偏見により正当な評価がなされていないと思われる本作ですが、先入観の為観ておられない方々へ、本作の熱烈なファンである太田 光氏の言葉をお借りして強くお勧めします。「可哀想に。こっちへおいで。」
六冬和生「みずは無間」海老原豊
この小説がすばらしいほどに恐ろしいのは、テクノロジーによって私小説的な「悩み」を宇宙規模に拡大・散布し、従来のハードSF的土俵にあげ、宇宙そのものと対峙させたことにある。テクノロジーを信じること。そしてまた人間の本質(悩み、苦しみ)を信じること。この二つの絶妙なバランスをとることに成功しているのが『みずは無間』である。
限界研ブログ(http://d.hatena.ne.jp/genkaiblog/20140717/p1)より一部改変のうえ引用。
すべてのコメントを開く
すべてのコメントを開く
安堂ロイド A. I knows Love ?K.U.
5Dプリンターによって時空を超えて転送されたアンドロイドは元殺人兵器であった。
彼の記憶は単なる記録ではなく悪夢をも見せる記憶である。細胞はナノマシンから成り
人間の細胞のように再生する。100を経て戻ったアンドロイドの身体にはiPS細胞が組み込まれており
順次人間の細胞へと生まれ変わる。現実世界を見れば、戦闘用ロボット、4Dプリンター、
学習する人工知能、iPS細胞、どれもリアリティがないどころかリアルそのものになりつつある。
このような科学とフィクションの融合を検証するような特集が番組や雑誌などで組まれていたら
さぞかし興味深かったろうとSF素人としては勿体ないと感じる。
そのようなアイテムを駆使しながら、物語はあくまでロマンチックで人間臭いエンタテインメントであった。
日曜9時の連ドラでSFファン以外の人にSFのオリジナル作品を届けたことも大きな功績である。
安堂ロイド A. I knows Love ?匿名希望
子供の頃NHKで見たタイムトラベラーが大好きでそれからSFと言われる作品は好きだった。年月を経て見た安堂ロイドは衝撃と感動が混在した。科学は進化を続けドラマにある未來は脳だけが生かされ、簡単に時空も越える。軸はSFだが今現在地球が抱える様々な問題を提議し、それを救うのは人の想いであり未來に誇れる今を作れと訴える。愛がアンドロイドに芽生え想いが人を救うと訴えたドラマの作り手の想いは木村拓哉さんを始めスタッフキャストの皆さんの力で見る側にも確実に伝わった。1年すぎても色褪せる事なくロイドの存在を思わせ又会いたいと思わせてくれる安堂ロイドは正に想いの素粒子は時空を越える作品だと信じたい。
安堂ロイド A. I knows Love ?玉井静香
この作品の作り手側の本気が伝わってきた。演じる方々全ての真摯な姿勢に感銘を受けた。当たり前のことだか、今は未来へ繋がっていると言うことを改めて教えてくれた作品だった。科学を通した未来への警鐘、今を生きる人間のエゴを浮き彫りにしながらもハードとソフトを生かしわかりやすく伝えてくれた稀にみる名作だと思う。
主演の木村拓哉さんの二役も、素晴らしかった。
安堂ロイド A. I knows Love ?あずき
オンエアー前は全く期待してない作品でした。
でも、観ているうちに今この時この作品をTVを通して伝えたいと言う
製作者の大きな想いを感じ取って
背筋をピンとして観出しました。
この作品は、ながら見では作品の奥底に流れる想いは見えません。
本当に重いテーマがアンドロイドって言うSFに置き換えて描かれてます。
毎回、観終わった後色々考えさせられました。
未来を危惧してこの作品を作った
スタッフやキャストの勇気を何時か多くの方々に伝わって欲しいと願ってます。
狼月堂珈琲店「真説・狼男のカフェ」星ヒカル
ライトノヴェルというジャンルに確立された全く新しい獣人系SF小説。とある出来事から狼人間になってしまった主人公の、戦いの後に訪れたささやかな幸せ、愛、友情。そこから更に続く苦悩。壮大なストーリーに繊細で丁寧なエピソードが盛り込まれ、読み応え感満載。挿絵のイラストも、作品の背景やイメージを更に膨らませるのに十分なハイレベルなものとなっており、観てよし読んでよし、笑いあり感動ありで、ファンの心を掴んだら離さない傑作。http://wolfscafe.blog.jp/archives/cat_505996.html
安堂ロイド A. I knows Love ?マミテカ
安堂ロイド A. I knows Love ?を推薦します。主演の木村拓哉さん目当てで見始めた訳ですが、いつの間にか作品に熱中していました。新しいのに、どこか懐かしい。NHK少年ドラマシリーズを見ていた頃のドキドキを思い出しました。(あ、年令がばれる)
田中雄一『田中雄一作品集 まちあわせ』地上最後のマリ本D
年刊日本SF傑作選『さよならの儀式』に「箱庭の巨獣」が収録されたことからも明らかなように、グロテスクなクリーチャー造形の裏には、骨太な設定が組み上がっている。グロテスクなクリーチャーは自然の脅威のメタファーと見るべきで、真に重要なのはすべての短編に共通する、それら自然の脅威を前にして醜いまでの卑小さをあらわにする人間たちのほうであろう。ハッピーエンドと言えるようなラストを迎えられた作品が1つなのも、それを象徴しているかのようだ。思えば、私たちはあの「3.11」で自然の脅威を痛感させられたはずだった。しかし、私たちはそれを忘れ、自然に対して再び尊大な態度をとろうとしてはいないか? そういった自戒もこめて、本書を読んでみてもいいと思う。しかし、悲観的になりすぎてもいけない。そんな卑小さの中でも、表題作が高らかに愛の尊さを謳っているのは、小さいが確かな希望だと、私は思う。
アナログハック・オープンリソースプロジェクトジュール
第34回日本SF大賞候補作になったBEATLESSの設定や世界観を誰でも使用できるようにしたプロジェクト。作者の長谷敏司氏が語るようにSF作品の創作は設定という面において、非常にハードルが高く、気軽に始めることができない。そうした問題点を解消することができるこのプロジェクトは、SF作品の創作者にとっても、SFを読む読者層にも非情に有意義なものであり、これからのSF界に大きな影響を与えるものである。パンツァークラウン フェイセズの吉上亮さんや第二回ハヤカワSFコンテストで大賞を受賞した綿谷翔太さんなど、二十代のSF作家が増えつつあるこの状況に更なる追い風になるものとして、このプロジェクトを日本SF大賞特別賞に推薦します。参考ページhttp://www63.atwiki.jp/analoghack/
キルラキルジュール
衣服と人の関係性を考えさせるSFアニメ。序盤こそ、ただの学園バトルアニメのように見えるが、後半に進むごとに服とは、服を着ることとは、そうした行動の中、人とはなんなのか、といったテーマが浮かび上がっていく。確かに最後はそんなテーマも何もかも、ぶんなげるような言葉で解決を見せるが、そこが爽快であり、本作の魅力でもある。どこかカエアンの聖衣を思い出させるという点でも、本作は非常に優秀なSF作品である。
劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語ジュール
星雲賞メディア部門を獲得した作品の映画作品。魔法少女というファンタジックな存在を扱いながら、ストーリは非常にSF。アニメーション作品において、SFが珍しいことではなくなった現代においても、本作はその中で特に異彩を放っており、エンターテイメントとしても優秀である。特に本作終盤の展開はSF的にも、エンターテイメントとしても非常に面白く、SF大賞を受賞するにたる作品である。
安堂ロイド A. I knows Love ?ayumi-m77.1
木村拓哉の安堂ロイド
推薦します。最近にはない斬新なドラマで、話の内容は素晴らしい! 木村拓哉の完全なる二役も素晴らしい!
もっと、作品の内容を評価するべき!彼の様な完璧に役をこなす人はそういない。
映画化にも是非期待する
安堂ロイド A. I knows Love ?takuya.k1113
アンドロイドの宿命が
凝縮された作品だ。
ロボットがまるで人間と同じ
動きができるようになり
知能も与えられた物から
自分で考え行動する物に
変わる。そんな時代はいつか
必ずやって来るだろう。
麻陽を護る使命を受けて造られたアンドロイド。彼女を護る為なら何をも恐れぬ殺人マシーンだ。
しかし人間と同じ感情を
持った彼は
哀しい目で還元処理を行う。
彼の深い哀しみ苦しみがあふれ
心が時折痛くなる作品だ。
彼が彼女を愛したこと。彼のことを理解する人間が現れたことが
救いになる。人間愛。地球愛。未来に恥じない今を造る。人間は忘れてはならない。と教えてくれるとてもすばらしい作品だ。
木村拓哉さんの演技も切なくて
すばらしい。
安堂ロイド A. I knows Love ?浜菜
フィクションは、ジャンル分けされると、その分野に関心のない人には届かなくなってしまう、特に、SFは。

TBS「安堂ロイド」は、視聴率が一番の地上波テレビ、その日曜9時という伝統ドラマ枠で、真正面から

SF連続ドラマに挑戦した。

SF設定にすることで「我々は未来に誇れる今を創っているか?!」と、愚直に問うた。

若い世代だけでなくテレビ離れが進む中、新しいドラマの可能性を広げた。

訳わからない、意味不明などと否定的なツイや視聴率が低いと揶揄する報道も多かったが、

制作に携わる人・出演者が一丸となってブレることなく、アクション、ラブストーリーとしても創り上げ、

定番ものに飽きドラマを見なくなっていた人達やテレビ離れした人達の視聴熱を厚く熱くした。

TBSの今回の挑戦とその成果「安堂ロイド」は、SFとしての斬新性の評価基準でなく、

SFファンのすそ野を広げた点を日本SF作家協会として評価して応援してほしい。
安堂ロイド A. I knows Love ?satomi
滑らかに動き、無駄なく闘うアンドロイドを描き、ギクシャク動きカクカク喋るというお茶の間のアンドロイド(ロボット?)の概念を根本から変えた。100年後の未来から来たアンドロイドがより人間に近い姿や行動をしていても全く不思議ではないと気づかせてくれた。

現代にダウンロードされ5Dプリンターによりプリントアウトされたアンドロイドであり、自己治癒機能も持つ点など、細かい設定でお茶の間に新鮮な驚きを提供した。

また、アンドロイドが夢を見たり肉を味わったり嫉妬し涙を流す姿を描き、きわめて能力が高い人工知能には、記憶メモリーの蓄積から感情が自然発生する可能性があることを示唆した。

人間よりはるかに進化した人工知能が意志を持って人間を支配し、横暴極まりない独裁者となるさまを描き、科学技術が一人歩きして暴走するともはや人間には制御できない結果となることを現代への皮肉をこめて描き、私たちの未来に重大な警告を投げかけた。
安堂ロイド A. I knows Love ?ぷよくま
すでに人気のでているコミックや小説の原作ありきではなく、完全オリジナルで日曜ゴールデンに連続テレビドラマとして放送した、TBSの意欲作。SMAP木村拓哉さん演じるアンドロイドが、100年の時を越えて未来から一人の女性を護りに現れる。タイムマシンではなく5Dプリンターという概念、人の想いをデータにして未来の世界と交信するという発想がおもしろい。時間やお金に制約のあるテレビドラマなので、語りつくせなかった部分も感じられるが、そのなかで世界感に説得力をもたせるCG効果、一人二役をみごとに演じわける木村拓哉さんの演技力が素晴らしい。アクションあり、恋愛あり、特撮ヒーローの変身を思わせるアスラモードあり。しかし物語の根底に流れる、未来の世界に責任をもつ今の時代の大人たちの在り方にも考えさせられるものがある。SFだがSF初心者でも楽しめるエンターテインメント作品になっている。
安堂ロイド A. I knows Love ?クロイワ
詳細に練られているのに、難しい設定を敢えて説明くさく語らず、クールでスタイリッシュな映像で魅了、納得させてくれた。パロディーやオマージュ散りばめつつギャグに走らず、伝えたいことに真っ向勝負な物語。SFとして小難しいことを説明することよりも、愛を語ることを重視。多くの問題を抱えた現実にも反映される、未来を見据えた強いメッセージ性。 幅広い視聴者層の見る時間帯の枠だからこそ、難解な設定よりも、ストレートに愛を伝えるべきという想いを感じた。 とてもイマジネーションを刺激された作品だった。
安堂ロイド A. I knows Love ?まなみ
日曜劇場という時間帯で、連続TVドラマという枠で、ある意味「魁」とも言える挑戦
をした作品だったと思います。アクションが凄い!CG映像も素晴らしかった!木村拓
哉さん他出演されている方々皆さんの演技にとても惹きつけられました。壮大なス
トーリーから発信されるメッセージ「未来に誇れる現在(いま)を作れ。それが大人の
責任だ。」という言葉は今でも心に残っています。こんなに愛を感じられるSFは素晴
らしい。是非映画でも見てみたいです。
夏色の想像力Ta. Miyoshi
同人誌なのに商業誌に迫る、あるいは制約を超えたようなその存在感に圧倒されてしまいました。
出版社もその辺りの楽しさを理解して協力をしてくれたのも著作が元気な平行世界を感じる。これの存在そのものが昨今世知辛い世の中でSFでした。
近藤ようこ(原作・津原泰水)『五色の舟』若木未生
原作小説のあやしくあかるい心象と、物語ることへの切迫した衝動と執念とを、まるでまったく同一の元素を用いながら再構築したような漫画のありようが、それ自体この世にあらわれてはならない程のおそろしい錬金術に思え、感銘をこえた畏れをおぼえた。
稀代のマリアージュと呼ぶしかない。
現世から外れたフリークスの主人公たちが辿る物語に、読み手であるわたしの心の底に棲んでいる「なにか」が共振し、次第に大きく大きく鳴弦し、しまいには「これはわたしの物語だったのだ」と信じてしまった。
そして、SFとは、あらゆる普遍の人の裡に眠る異形(アウトサイダー)を掘りおこし、ゆめとうつつの境界を掘りおこすものなのだ......と、思い出した。
それゆえに自分はSFを必要としたのだ......とも。
菅浩江「誰に見しょとて」マンシェン駆動系ブドヴァイゼル男
化粧をテーマに人間の内面と外見の関係を架空のテクノロジーで際立たせつつ、化粧による変容が人類の人工進化の可能性につながっていく発想が斬新だった。美容やファッションをSF的思弁の対象として成功した作品はこれが最初だと思う。
すべてのコメントを開く
すべてのコメントを開く
イプシロンロケットの打ち上げマンシェン駆動系ブドヴァイゼル男
イプシロンロケットはモバイル管制やロケット自身による自己点検機能など新機軸を打ち出し、日本の宇宙開発への期待を大きく前進させた。また、多くの少年たちに注目され、次代の科学者とSF愛好者を生むきっかけとなった違いない。
岡和田晃編「北の想像力」マンシェン駆動系ブドヴァイゼル男
SFを北海道文学の立場からとらえた論集だが、忘れられがちな「周辺」にも「中央」に負けない文芸の力強いうねりがあることを気づかせる。「北の想像力」の刊行は、SFに限らず文学への思い込みを改めさせる重要な試みであり事件だった。
荒蝦夷社による西村寿行「蒼茫の大地、滅ぶ」復刊マンシェン駆動系ブドヴァイゼル男
大震災後、数多くの政府の嘘、復興予算の目的外使用、政治家や官僚による暴言、遅々としてすすまぬ復興事業に現地の国民は怒りの炎を燻らせている。SFがその代弁者になりうることを荒蝦夷社は勇気をもって示した。
瀬名秀明「月と太陽」マンシェン駆動系ブドヴァイゼル男
瀬名作品は以前から科学と人々の希望を切なくかけがえないものとして描いてきた。短篇集「月と太陽」は大震災の影を帯びつつ希望を描くと言う難題に挑戦し成功している。SFに震災文芸としての深みを加え、SFの可能性を拡大した。
野崎まど『ファンタジスタドール イヴ』杏仁豆腐
純文学的筆致で紡がれるサイエンス・フィクション。一見相反する二つの要素が絶妙なまでに融け合っており、まさに「SFの歴史に新たな側面を付け加えた作品」といえることから、日本SF大賞にふさわしい。
本作では、一人の天才が苦悩し、葛藤し、絶望の淵に叩き落とされ、そして人と離別するまでを純文学然とした文体で克明に描きながら、人間の手によって人間を生み出せるかという命題を綿密な科学的アプローチに基づいて扱っている。救いのない物語に見えて、傾斜を転がる石のようにページをめくったその先には、晴れやかな希望と奇妙な爽快感が待っている。そんな不思議な作品である。
なお、本作は、アニメ『ファンタジスタドール』の前日譚という位置付けにあり、アニメからあまりにもかけ離れた異色すぎる内容でありながら、メディアミックス全体の世界観を壊すことなく、むしろ、SF的な深みを与えていることも評価したい。
映画『超高速!参勤交代』瀬名秀明
たった5日で江戸への参勤交代を命じられた東北の弱小藩が、知恵と体力を振り絞り、その難問に立ち向かう痛快な奇想映画。とにかく笑って、元気になれる。いまの日本にはこうした奇想天外で愉快な映画がもっと必要だ。監督=本木克英(『釣りバカ日誌』シリーズ)、脚本=土橋章宏(第37回城戸賞受賞作品)。 参考ページ http://www.cho-sankin.jp
今岡正治編『夏色の想像力』瀬名秀明
第五十三回日本SF大会なつこん記念アンソロジー(同人誌出版物)。創元SF短編賞受賞者とその歴代選考委員を中心に、活気溢れる若手の作家陣を多く揃えた本集は、日本SF作家クラブの世界観とは異なるいま現在の日本SFの、確かな基盤と躍動を読者に伝えてくれる。ベテランの山田正紀と堀晃が揃って秀作を寄せているのも嬉しい。本年もっとも素直に楽しめたアンソロジーだった。編者の努力と熱意にも敬意を払う。 参考ページ http://nuts-con.net/ja/sc_imagination
図子慧『アンドロギュヌスの皮膚』瀬名秀明
すでにキャリアの長い作家だが、書き下ろしの本作は著者特有のセクシュアリティに対する繊細な表現と、サイエンス・医療への関心がうまく融合し、読み応えのある作品になっている。しかも著者久々のSF作品である。これらのテーマがタイトルに見事に反映されているのも好ましい。著者のさらなる活躍を願う。 参考ページ http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309622248/
松崎有理『代書屋ミクラ』瀬名秀明
某・北の街に暮らす23歳の青年ミクラを主人公とする連作集。大学の研究活動促進のため3年間で一定数の論文を出さないと退職させられる「出すか出されるか法」ができたために、論文が書けない研究者の手助けをする代書屋家業を始めたミクラの物語。登場する架空の研究がどれも絶妙なさじ加減のワンダーを持ち、著者のセンスのよさが心地よい。いままで日本になかった新しい理系小説の書き手であり、その才能は確かだ。
参考書評=週刊朝日/2013.10.25号/週刊図書館crossover「サイエンス」/「絶妙なさじ加減の科学的発想」p.85
長谷敏司『My Humanity』瀬名秀明
現時点で日本SF作家クラブ会員からの投票が偏っていること、また新刊小説作品へのエントリーが全体的に少ないことから、あえていくつか追加エントリーすることを決心した。本作は中編集ながら著者のキャリアの最高傑作といってよいものである。特に書き下ろし「父たちの時間」の完成度が素晴らしく、この著者がさらに才能を伸ばし、今後活躍することを大いに予感させてくれる。
参考書評=週刊朝日/2014.4.25号/週刊図書館crossover「サイエンス」/「文章から力みが抜けた〝純粋のSF〟」p.93
安堂ロイド A. I knows Love ?こっこ
「安堂ロイド A.I knows love?」を推薦します。この作品は、100年後の未来から現在を護ろうとする愛の物語です。根底に流れるテーマは愛、そして未来へ続く想いの素粒子。今を生きる私たちが未来から今を見つめ、生きていくことを提示した作品です。
岡和田晃『向井豊昭の闘争 異種混交性(ハイブリディティ)の世界文学』藤元登四郎
文学史の闇に埋もれて向井豊昭が復活した。彼はアイヌ民族の立場に立ち、辺境から、グローバリズムと商業主義と総体化する主流文学の暴力に素手で立ち向かった。作品の特徴はアイヌを他者として任じ、アイヌの声を自らの外部にあるものとして認識して成立している異種混交性にある。それは近代日本文学の伝統的なスタイルを内側から瓦解させた。向井の武器はSFで最も重要な奔放な想像力であった。岡和田が発掘した『向井豊昭傑作集 飛ぶくしゃみ』に掲載されている「ヤパーペジ チセパーペコペ イタヤバイ」の奔放でアナーキーな想像力は、「言説空間を脱臼させ、その『おかまを掘る』」試みであった。現在、SFから排除されたものを復活させる異種混交性の力がみなぎっている。SFはもう一度、向井豊昭の想像力に立ち戻るべきであろう。
5Dプリンター(安堂ロイド)amyuon
5Dプリンター(安堂ロイド)を推薦します。ドラマはウルトラマン的で物足りなかったのですが、ひょんなことからタイムスリップしてしまう作品が溢れるなか、5Dプリンターの設定が納得出来るもので、ロイドでなくても、この設定を引き継ぐ作品が見たいです
吉村萬壱『ボラード病』地上最後のマリ本D
「3.11」から約三年半経って、世間は「表面上の」平穏を取り戻しつつある。しかし、それはあくまで「表面上」だ。いまだ問題が山積していることから、非日常に耐えられない私たちが目を逸らしているにすぎない。だからこそ、その問題を不用意に取り上げられると、人々は「不謹慎だ!!」といってそれを叩く。「表面上」の日常を保つため、『民衆の、民衆による、民衆のためのファシズム』が横行する世界。それが、今の日本に他ならない(違うというのであれば、あの『美味しんぼ』騒動はなんだったというのだ)。それを静かに、しかし激烈に告発するのが、まぎれもなく本書である。確かに、最後まで読まないとSFといえないかもしれない(いや、最後まで読んだとしても、本書をSFと分類するかは議論の別れるところだろう)。しかし、SFというジャンルが本来持つ、「危険なビジョン」を指摘する役割を、本書は果たしている。私は、本書をまだ読んでいない人々に、こう言いたい。「不謹慎なものを糾弾したいんでしょう? だったらこれを読んでみろよ臆病者」
岡和田晃編「北の想像力―〈北海道文学〉と〈北海道SF〉をめぐる思索の旅」荒巻義雄

 札幌の小さな出版社寿郎社が社運を賭けて出版した本格評論集。782ページ。執筆者18名の多くが日本SF作家クラブのメンバーである。分厚さも画期的だが、内容も多彩、多角的に論じられている。日本SF界もついにここまで成長したかと、日本SFの盛衰を見守ってきた推薦者は感無量である。北大名誉教授の神谷忠孝氏は北海道新聞で若手の台頭と褒めたたえ、日本芸術院会員の池澤夏樹氏も8月の北海道文学館館長就任式で大勢のマスコミ関係者を前に、この作品を紹介、高く評価した。
 なお、「北海道」とあるが、地域から日本全体へ、さらに世界へその影響を発信していくのが、これからの地方の時代である。
 問題は、評価する側が評価される側の水準に達しているかどうかだが、1960年代からSF評論とその理論構築に従事してきた筆者としては強く推薦するものである。
唐辺葉介『電気サーカス』ジュール
テレホーダイの時代に個人サイトで自己表現を試みた人々を描いている本作であるが、内容から考えるならばSF作品として本作を見ることは難しいかもしれない。しかし、ネットワーク、個人サイト、そういった当時の新しい技術に触れることによって変わっていく人々をえぐく、退廃的に、しかしどこか楽観的に描いている、そういった点を考えるならば、本作は確かなSF作品として考えることができると思う。新しく出てきた技術に関わり、触れていくことで変化していく人間性を描いている一種のSFとして評価することができる作品である。
SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜ジュール
現在の日本の映像作品において、超能力や戦闘モノの映像作品というのはその数が絶対的に少なく、これまでその席を担ってきた特撮作品が仮面ライダー、戦隊ヒーローしかない現状において本作は非常に貴重な作品の一つである。SPECという超能力設定。それを生かすための舞台、シナリオ。さらには堤幸彦による映像演出によって、完全オリジナルでありながら、これだけレベルの高い作品というのはこれから先、日本において作られるのか、わからないほどの素晴らしさを秘めている。これから先の日本の映像作品について考えるうえでも、SFとして日本でこれだけのモノを作れたという点でも、本作は多くの人に知られるべき作品の一つである。
【出版企画】特別賞として 「S-Fマガジン」創刊700号記念特大号(2014年7月号)瀬名秀明
世界でも有数の刊行点数を誇る早川書房の「S-Fマガジン」誌は、(「ハヤカワ ミステリマガジン」と共に)この2014年で700号を迎えた。それを記念した本号は、創刊号からごく近年までの記事を厳選再録して振り返り、日本SFの歩みを俯瞰し、再検討しようとする野心的な試みであった。かつて読んだことのある記事も新鮮な気持ちで読み直すことのできる優れた一冊となっている。編集長は塩澤快浩氏。日本SF作家クラブはもともと作家だけでなく翻訳家・評論家・編集者も含めた集まりとして発足・発展した。今後は編集者の仕事にもさらにスポットライトが当てられてよいと考え、特別賞に推す次第である。
参考ページ
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/721407.html
【出版企画】特別賞として 出版芸術社「ふしぎ文学館」シリーズ瀬名秀明
「ふしぎ文学館」シリーズは、2014.1.25発行の作品集で、刊行開始から21年目、51冊目を迎えた。本叢書は日本における代表的な奇妙・恐怖・幻想小説の書き手の傑作を各一巻にまとめて読者に提供したもので、古くは香山滋や横溝正史から、皆川博子など現代小説の優れた書き手、宇能鴻一郎などの異色陣、また多くのSF作家を収録している。現在アンソロジスト・評論家として活躍する日下三蔵氏の原点といえる企画であり、また日下氏の他に何冊かを担当した他の編纂者もフォーマットを踏襲し、全体として優れたアンソロジーシリーズに仕上げている。若い読者に新鮮な驚きと読書の喜びを伝え、いまなお全冊が新刊書籍として購入できる本叢書がSF・ファンタジー・ホラー愛好家に与えてきた影響は確かなものであり、51冊の刊行を記念して今回の特別賞に推す。
参考ページ
http://www.spng.jp/list/fusigi.html
安堂ロイド A. I knows Love ?kotoko
安堂ロイドを推薦します。このドラマは大人が楽しめる作品です。2113年からきたアンドロイドが愚直な迄に護りぬく安堂麻陽。一人二役、未来と現代の権力の戦い、ラブサスペンスタッチに描かれた時空を越えた物語です。次を観たくなる作品です。アクションも凄い!
すべてのコメントを開く
すべてのコメントを開く
ISISによる湯川遥菜氏の誘拐・監禁、及び解放を求めるツイッターでの呼びかけ匿名希望
昨年『ヨハネスブルグの天使たち』が直木賞候補となった。第三世界を舞台に仮想技術を用いたそのビジョンはSF読者のみならず、文芸シーンに衝撃を与えた。またベストセラーとなった『虐殺器官』は、戦争という遠くの現実とネットワーク、ゲームなど我々の手の届く範囲にあるものを同列的に描いている。現実と「遠い現実」を作中に同居させ、現実の「薄気味悪さ」を浮き彫りにする作品がいまのSFの風潮といえるだろう。本事象は間違いなくその「薄気味悪さ」の極値だ。第三世界に囚われた日本人を救うため、我々が日頃利用するツイッターによって嘆願が為される。それに対するテロリストの反応は、匿名掲示板で我々が行う応酬と同一であり、それが冷めた笑い話として共有されていく。この現実は「いま、ここの物語」「これが私たちの世界」といった、稚拙な常套句をすべて無意味にしてしまっている。
正にこの瞬間、フィクションは現実に追い越されたのだ。
安堂ロイド A. I knows Love ?yokko
SF作品といっても幅広くいろんな作品がありますが、この作品は小さな子供たちからお年寄りまで熱くなれる
作品だと思います。作品の根底にあるテーマは愛、だから心に響くのです。アンドロイドであるロイドを通して
人間の愛、人類の愛、なんだか気持ちを揺すぶられる素晴らしい作品だと思います。家族揃ってSFを観れる
そんな作品に出会えて嬉しかったので推薦させていただきました。
安堂ロイド A.I.Knows LOVE?中村敏子
100年先の未来から今、私たちが生きている時代を考えることができた作品です。2013年の現在が人間らしく、お互いに支えあえる社会でないと未来がゆがむなど
【プロジェクト】特別功労賞として 石ノ森章太郎『サイボーグ009』完結瀬名秀明
石ノ森章太郎(1998年逝去)は生前に自身の代表作『サイボーグ009』を完結させることができなかったが、構想ノートを遺し、「小説用」「マンガ用」ふたつの終わり方を考えていた。石ノ森の死後、この構想ノートをもとに完結編の製作が進められ、「小説版」が2012年に、「マンガ版」が2014年に完結した。石ノ森は日本SF作家クラブへの入会には至らず、生前も死後も日本SF大賞とは疎遠であったが、この『サイボーグ009』完結を機に、生前のSF・ファンタジー分野に対する功績を讃え、また生前の彼の想いを完遂させた関係者らに敬意を表し、今回の特別功労賞に推す。藤子・F・不二雄(1996年逝去)、藤子不二雄Aと併せ、石ノ森章太郎!
を含めた3名は、日本SF大賞特別功労賞授与にふさわしい作家たちであると考える。
参考ページ
http://www.ishinomori.co.jp/009_50th/
http://009ing.com
岡和田晃「『世界内戦』とわずかな希望」山野浩一
伊藤計劃を原点として世界文学としての日本SFの可能性を提示した画期的な評論。
岡和田晃 「向井豊昭の闘争」山野浩一
エスペラント語、アイヌ語といった異世界言語や、空想世界からみた現実のような
優れたSFに共通する視点からの透視が見事です。
安堂ロイド~A・I Knows Love?匿名希望
本格的で新しく、どこか懐かしさも魅力のSFドラマです。アンドロイドのアクションや、科学の悲劇、平等な未来とは何か、タイトルにもあるようにアンドロイドの感情(愛)など、メッセージがたくさん含まれています。細かい舞台設定がありドラマ内では表現しきれない部分が惜しいですが毎回設定を考察する楽しみがありました。非現実的なアンドロイドを木村拓哉さんのアクションや動作が違和感なく、感情を持つ過程の微妙な違いも見事に演じ分けていたのには驚きました。さらに沫嶋黎士も含めて実際は一人何役やっていたのでしょうと思います。キャラクターや演出、設定にワクワクするような中毒性があり、ドラマだけでは勿体無いスケールなのでぜひ映画化をと願っています。TBS日曜9時のラインナップを見て分かるとおり、このドラマは異色の挑戦だったと思います。これを実現したスタッフの熱意とキャストの覚悟は相当なものだったのではないでしょうか。
石川博品『後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール』匿名希望
女装、イスラム風ハーレム、野球という冗談のネタにしかならないような要
素の組み合わせなのに、それらがまるで違和感なく融合している、誰も見たことのない
世界を構築してのけた。ファンタジーってこんなに自由でいいんだ、ということを再認
識させてくれる一作。
ばらかもん(アニメ)少年乃慾望はつねに心澄むゆゑに惡念なくて
傷害事件を起こし囚人惑星に送致された青年が出逢ったのは言葉も文化も全く異なる異星人―ファーストコンタクトSFの定石を踏まえながら、カリグラフィを通じて相互理解を深める件は思弁的でもある。もちろん自己回復の青春物語としても秀逸。
安堂ロイド A. I knows Love ?夏蜜柑76
現在停滞気味とされているテレビドラマ界に一石を投じた作品ではないかと思います。
連続ドラマと言う枠でのアクションやCGの限界に挑戦しつつ、人間への、未来への警告!だけでなく希望!愛!を伝えてくれた深い作品だったと思います。
何より素晴らしかったのは、木村拓哉さんを始めとする俳優陣の演技、毎週ワクワク、ドキドキハラハラそして心をキュッと鷲掴みされ涙してる自分がいました。
今でもロイドのサイドストーリーを是非創って頂きたいと熱望しています。
田中ロミオ「人類は衰退しました 9」santa yamada
『人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀』の地球を舞台に、人間とはなにか? を正面から描くポストヒューマンSF。レーベル的にはラノベですが、中身は間違いなくSFです。
安堂ロイド A. I knows Love ?匿名希望
理由としては

TVでは勿体ないまるで映画の世界の映像、ストーリー、アクションと

すべてがいう事なしの素晴らしい作品でした。

現実の世界でもこれからは良くも悪くも利用できるアンドロイドなどの

開発が現実味を帯びてきている現代において、絵空事ではないし

説得力のある内容でした。

外国に比べSF作品は実写となるとなかなかないのですが、脚本も良く考えられていて

日本の未来を誇りあるものにするよう次の世代に伝えていかなければと思えました。

俳優陣の素晴らしい演技がそれに加わって世界観に引き込まれ続編もお願いしたいと

思っている程です。

文才がなくてもどかしいですが、素晴らしいSF作品だったことは確かです。
安堂ロイド A. I knows Love ? パオン ‏
2013年10月期にTBSで放送された「安堂ロイド A. I knows Love ? 」を推薦します。SFアクションものでもあり普遍のラブストーリー、人間への様々な警鐘が含まれた、これまでの日曜9時にはあり得ない内容を木村拓哉さんで実現した作品です。
長谷敏司『My Humanity』浅木原忍
「allo,toi,toi」に敬意を表して。SFでなければ書けなかった迫真のペドフィリア小説にして、この世界では異常とみなされるものを通して極めて普遍的な「好き嫌いとは何か」と問う。自分自身と世界の見方を変える傑作。
手代木正太郎『王子降臨2 王子再臨』nyapoona
究極の「美」が世界にもたらされたときどうなるのかを真正面から描いた超怪作。前作を遥かに超える宇宙規模のスケールで「美」に支配されたディストピアを描いた本作は、どこの誰にも到達しえない境地に達してしまった。
桜井光『殺戮のマトリクスエッジ』nyapoona
「黄雷のガクトゥーン」「漆黒のシャルノス」などスチームパンクADVを手掛けてきた桜井光女史の初SF小説。少年漫画的バトル+少女漫画的文体+amazonのレコメンド機能に支配されたようなサイバーパンク世界の融合が見事。
【人物】特別功労賞として 藤子不二雄A瀬名秀明
 『@ll(オール)藤子不二雄A〜藤子不二雄Aを読む。』(2014.5.28・小学館)刊行ならびに生誕80周年を記念しつつ、数多くの作品によって後のSF・ファンタジー・ホラー分野に多大な影響を与えた功績、また過去のSF作品も数多く盛り込まれた大河自伝マンガ『まんが道』『愛...しりそめし頃に...』で多くの未来の書き手に希望と力を与え続けたこれまでの功績に対して。(Aの表記は、正確には丸印にA)
参考ページ
http://www.shogakukan.co.jp/comics/detail/_isbn_9784091791962
http://fujiko-a.com/
【全集】特別功労賞として 「藤子・F・不二雄大全集」(『藤子・F・不二雄 まんがゼミナール/恐竜ゼミナール』2014.7.25・小学館にて全巻完結)瀬名秀明
世界の子どもたちへSF・ファンタジーのロマンを与え続けてきたマンガ家、藤子・F・不二雄の生涯にわたる功績と、その全集刊行に挑み、完結させたスタッフの熱意・努力に対して。
参考ページ
http://www.shogakukan.co.jp/comics/detail/_isbn_9784091418104
http://www.shogakukan.co.jp/fzenshu/
【人物】瀬名秀明瀬名秀明
自薦エントリー。彼は「日本SF作家クラブ50周年記念プロジェクト」を興し、新しい日本SF作家クラブと日本SF社会の在り方を問いかけ、様々な形でSF関係者の潜在的な力を引き出した。彼によって日本SFは己のアイデンティティを再考し、変革を迫られた。彼はSFとその社会が何をなし得るのかという根源的な問いをSFファンとSF関係者の心に残し、誰もが明日へと一歩踏み出せる勇気を持っていることを気づかせた。現在の日本SF作家クラブは、もはや彼がいなかった以前の世界を想像できないであろう。SFの歴史に新たな側面を付け加えた人物であり、彼のヴィジョンと活動全般を「SF作品」と考えることは可能だ。彼だけでなく、彼と共に「日本SF作家クラブ50周年記念プロジェクト」を推進し、SFについて深く考えた、全ての人々も受賞対象であろう。ただし彼自身はエントリーだけで本望であり、仮に賞を与えられても受賞は辞退したい。
スペース☆ダンディmakototsax
「スペース☆ダンディ」というアニメを推薦します!

毎回監督...etcが違い、色んなテイストが味わえます。脚本にはなんと、円城塔さん(11話)も担当されています!

今もシーズン2が放送中で、
見ているうちにクセになって、
今期で終ると思うと寂しい気持ちでいっぱいです・・・。
すべてのコメントを開く