世界トップレベルの技術力、年々磨かれる表現力。3年前には大英帝国勲章に輝いた吉田の踊りは、今が絶頂期とさえ言われる。しかし去年、突然、吉田はバレエ団を引退すると発表した。背景にあるのは、自らの踊りに対する厳しい批評家の目だ。常に高みを目指し、理想を追求してきたからこそ、自分の踊りに妥協はできない。踊りに陰りが見える前に、トップのまま退く。それがバレエ団引退を決意した吉田のプライドだ。
世界トップレベルの技術力、年々磨かれる表現力。3年前には大英帝国勲章に輝いた吉田の踊りは、今が絶頂期とさえ言われる。しかし去年、突然、吉田はバレエ団を引退すると発表した。背景にあるのは、自らの踊りに対する厳しい批評家の目だ。常に高みを目指し、理想を追求してきたからこそ、自分の踊りに妥協はできない。踊りに陰りが見える前に、トップのまま退く。それがバレエ団引退を決意した吉田のプライドだ。
吉田は英国ロイヤルバレエ団の最高位プリンシパルを15年務めてきた
日々の練習の中で、指導者が踊りにOKを出しても吉田は簡単に納得しない。自分自身が納得できるまで、ミリ単位で精度にこだわり、踊り込み続ける。何があるか分からないのが本番の舞台。キャリアを重ねても本番の怖さは変わらないという。その舞台で100%の力を出しきるために、日々の練習で120%の準備を重ねていく。
9歳からバレエを始めて35年間。吉田はこれまで少しでも理想に近づきたいと日々、努力を続けてきた。英国ロイヤルバレエ団最後の公演を前に吉田が目指す境地は、ただ「楽しみたい」という気持ちだった。
本場ヨーロッパで高く評価されてきた吉田の美しい踊り、その背景には知られざるこだわりがある。インナーマッスルを鍛えるために「ピラティス」と呼ばれるトレーニングを欠かさない。軽やかなジャンプを実現するために足の指先まで鍛え上げている。
また、こだわりの局地はシューズ。最も大切な仕事道具だ。長年研究を重ねたオリジナルの方法でペンチや金づちなどを使ってシューズを改良していく。
素人がシューズの改良をするのは危険です。
世界三大バレエの一つと言われる英国ロイヤルバレエ団。世界のトップダンサーたちがしれつな闘いを繰り広げ、常に緊張感に満ちている。 そこで長年にわたり吉田が周囲から認められ愛されてきたのは、技術や表現力と共にその人柄にも理由があるとバレエ団のスタッフたちは言う。吉田は厳しい現場でも常にユーモアを持って周囲に接する。緊迫した空気が吉田の一言でふっと和らぐ。そうした人柄が表現の深みとなって舞台にも現れると言われている。
吉田は、裏方のスタッフにも愛されてきた