iPadを分解し、その無線関連実装を分析する今回の企画。分析を依頼した大手携帯端末メーカーの技術者との会話形式で話を進めていく。最後の第4回は、無線LANアンテナを取り上げる。iPadがサポートする無線LAN方式はIEEE 802.11a/b/g/nで、2.4GHz帯と5GHz帯に対応する。このアンテナは、同じ2.4GHz帯を利用するBluetoothとアンテナを共用している点が特徴だ。11nの実装については、MIMO(multiple-input,multiple-output)をサポートしていないと推測され、中途半端な印象を受ける。

複雑なパターンで2.4GHz帯と5GHz帯に対応

 無線LANアンテナ1は、アップルのロゴマークのところに配置されています(第1回を参照)。このアンテナの共振周波数を測ってみると、2.4GHz帯にドンピシャに合ってました。今回は3GHzまでしか測定していないので、5GHz帯で共振が出ているかどうかは確認していません。

 給電点とグラウンドを見ると、逆Fアンテナ(導体を折り曲げ給電点と接地を設けてFの形をしたアンテナ)のように思われます(写真1)。パターンとしては、3Gアンテナと同様、スリットを入れて大きい部分と小さい部分に分け、2.4GHz帯と5GHz帯の2共振を持たせるようにしていると推測できます。

 無線LANアンテナ2は、この部品単体では共振が出ませんでした。しかし、この金属の端子部分に銅箔をペロっと貼ってみたら、共振が出てきました。この端子に触っても、共振の波形が見えるので、ここから給電されているのは間違いありません。アンテナを取り出す前の写真を見ると、白い金属箔が写っています。実は、これがアンテナのエレメントの役割を果たしているように思われます(写真2)。

写真1●厳重に隠されているアンテナの実装
写真1●厳重に隠されているアンテナの実装
この無線LANアンテナ2をはじめとして、iPadのアンテナはすぐにはわからないように、金属やプラスチックなどで何重にも覆われており、アンテナのエレメントが見える状態にするのに苦労した。
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写真2●アンテナ以外の部品もアンテナ機能の実現に利用
写真2●アンテナ以外の部品もアンテナ機能の実現に利用
無線LANアンテナ1について、写真にある金属箔がない状態で共振周波数を測定したところ、まったく共振が現われなかったという。しかし、これと同様の金属箔を付けた状態で測定すると、共振が見られたとしている。
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