想定外の3党合意 首相「よかった…」
赤字国債発行法案の成立が確実になり、菅直人首相に対する退陣包囲網が一層狭まった。首相はこれまで「自分の言葉に責任を持つ」として退陣に向けた3案件のメドが整えば辞任する姿勢を示してきた。約束を守るのか、破棄するのか。首相は決断を迫られつつある。
「これまで自分が言ったことについてはちゃんと責任を持ちます」。首相は9日夜、民主、自民、公明3党合意を受けた自身の進退について記者団にこう語った。だが、長崎出張から首相官邸に戻った当初は「よかったね」の一言。枝野幸男官房長官からの報告にも「よかった」と繰り返し、岡田克也幹事長には「自民党もよくのんだ」と驚いてみせた。ただ記者会見の要請は「日程が窮屈」(周辺)と拒否した。
首相側近はお盆前の土壇場での3党合意を「予想外の進展だった」と明かす。首相サイドには自民、公明両党の足並みがそろわず赤字国債法案の今国会成立は厳しいだろうとみていたフシがある。事実、周囲は「赤字国債法案が通らないなら、こっちはやりたいようにやる」と漏らしていた。3党合意は首相にとっては「想定外」といえた。
首相周辺には「残る退陣案件である再生エネルギー特別措置法案はまだ予断を許さない」との見方がある。原発行政見直しなどを理由に延命を探る動きを加速させる可能性もある。しかし、最難関と思われた赤字国債法案が事実上、決着したことから「3案件がそろえば退陣する」との声は首相周辺からも出始めている。