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2010年9月3日(金)

【CEDEC 2010】『アイマス2』ではココまでこだわる! かわいいアイドルの作り方

文:電撃オンライン

 パシフィコ横浜・会議センターで、8月31日~9月2日にかけて開催されたゲーム技術者向けカンファレンス“CEDEC 2010”。そのメインホール最後のセッションとして“次期アイドルマスター グラフィクス&アニメーション プログラミング プレビュー”が行われた。

 ここでは、来春に発売が予定されているXbox 360用ソフト『アイドルマスター2』で、どのような技術が使われ、どのようにグラフィックが進歩しているかが語られた。登壇したのはバンダイナムコゲームスの開発スタッフ2人で、グラフィックとアニメーションのそれぞれについて解説した。

 まず最初に、2005年度半ばより『アイドルマスター(以下、アイマス)』シリーズに関わりグラフィックのプログラミングを担当している前澤氏が登壇。氏からは、キャラクターの表現やステージ演出といったグラフィックについての話を聞くことができた。

『アイドルマスター』 『アイドルマスター』
▲前澤圭一氏。株式会社バンダイナムコゲームス第1スタジオプログラムディビジョンプログラム2部プログラム6課。▲竹内大五郎氏。株式会社バンダイナムコゲームス第1スタジオプログラムディビジョンプログラム2部プログラム6課チーフ。

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■かわいいアイドルの育て方――“グラフィクス”キャラクター編

 前澤氏はまず最初に、『アイマス』5周年記念ライブで初披露された『アイマス2』の2nd PVを上映。その上で自身を「バンダイナムコゲームスの第1スタジオプログラムディビジョンプログラム2部プログラム6課……と、これでもかというほどプロがついてるんですけど(笑)。頭の先から尻尾の先までアンコぎっしりのたい焼きのようにプログラミングでできているんですが、プログラムとかがわからなくても楽しめるように話しますので最後までお付き合いください」とあいさつし、聴衆の笑いを誘った。

 『アイマス2』での進化を解説する前に、前澤氏はXbox 360『ライブフォーユー!』のグラフィックと『アイマス2』のステージシーンを並べ、「人数が違う、衣装が違う、髪型が違う、響は俺の嫁――といったことなどがあると思いますが」と前フリ。両者のシーンで大きく異なる点と、細かな差異を分けて解説した。続けて『アイマス』のやよいと『アイマス2』のやよいをスクリーンに映し、見た目の変化が比較的少ないキャラのやよいが、実は多くの部分で進化している点を説明。

『アイドルマスター』 『アイドルマスター』 『アイドルマスター』

 『アイマス』シリーズに限らず、多くのゲームでも使われているトゥーンシェーディングとは、光源と対象物の距離によって明るさの違う影を3Dグラフィックに落としこみ、2Dグラフィックに近い印象を持たせる技術だ。『アイマス』では、この影の明るさの差に色調変更ハイライトの効果を用いている。これにより、より2Dのイラストに近い影の配色を、キャラクターごとに異なる色味で表現。そこにソフトフォーカスの効果を加え、影の配色の境界がイラストになじみやすくなるような工夫が施されているという。さらに、浮いた前髪の影がおデコに映し出されるなどの、自身の影が自身に投影されるセルフシャドウによって、より説得力を持った影を生み出しているとのことだ。

 また前澤氏は、『アイマス』シリーズの究極の目標を「いかにアイドルをかわいく魅力的に見せるか」と熱く語る。その手段として、アイドルたちがなるべくステージ上の光の領域に包み込まれるように、光源がカメラに付いて回るView追従光源を取り入れたそう。ここまでがXbox 360版『アイマス』の表現方法だ。

 では『アイマス2』では、どのような部分が進化しているかというと、髪ハイライト、照り返し、グラデーションの3つが挙げられるとのこと。髪ハイライトは文字通り、髪の毛の上の明るく光る部分を、より自然に表現する仕組み。また、照り返しとグラデーションの効果によって、先に紹介した影のカラーモデルも、シェーディングの段階で、より細かく幅の広い色の差を生み出すことができるようになったという。

『アイドルマスター』 『アイドルマスター』 『アイドルマスター』
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 このような苦労を重ねて生み出された『アイマス2』のグラフィック。前澤氏は「昔のでもイイじゃんと思われるかもしれませんが、今日みなさんにお伝えしたいポイントはトゥーンの新たな可能性――どうですか? この俺の嫁」と語り、『アイマス2』の響のグラフィックをスクリーンに映し、より繊細な陰影を生み出すセンシティブトゥーンと名付けた手法を紹介。同じモデルを使い、センシティブトゥーンのオンオフのみを切り替えた2つの画像を用意して、この手法の持つ可能性を解説する。

 前澤氏は「『アイマス』が動いているとかわいいのはわかるから、止まっている静止画でもかわいく見えるようになんとかしてよ!」とアーティストスタッフに求められたことを明かし、それを「センシティブトゥーンによって達成できたのではないか」と話した。さらに「従来のトゥーンというものは平面、フラットなものだとイメージされてきましたが、センシティブトゥーンを用いることによって、まだまだ進化は止まらない。トゥーンシェーディングには未来があるんです」と続けた。

 一方、従来のセルフシャドウをはじめとする技術も進化しており、影同士がケンカせずに自然になじむようになっているという。さらに、顔にかかる影については、斜めぐらいの顔の角度まではあえて影の表現を控えめにし、横顔になったときに影の表現をするなど、「どこから見てもアイドルがかわいく見える」ように調整が施されているとのことだ。

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→ステージ演出のこだわりって?(2ページ目へ)

(C)窪岡俊之 (C)NBGI

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