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高槻かなこが押井守と強力タッグ ”脱ラブライブ!”で飛躍へ

河嶌太郎ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)
フォトセッションの様子。左から2番目が声優の高槻かなこ、右から2番目が押井守監督

 アニメ「機動警察パトレイバー」、「攻殻機動隊」などで知られる押井守監督。彼の新作アニメ「ぶらどらぶ」の発表会が6月26日、都内で開かれた。

キャラクターラフを用いて新作の発表がされた
キャラクターラフを用いて新作の発表がされた

「ぶらどらぶ」は原作・脚本・総監督が押井守氏、監督に「逮捕しちゃうぞ」、富山県南砺市を舞台にした「true tears」「恋旅」などを手がけた西村純二氏が務める。「吸血鬼の少女と彼女を匿うことになった女子高生を中心に展開されるドタバタコメディ」になるといい、既に脚本までは完成しているという。押井守監督は会見で、「『ぶらどらぶ』は基本的に女の子しか出てこない物語。ガール・ミーツ・ガールな女の子の物語を真面目にやりたい」と力強く語った。

監督として制作の現場を取り仕切る西村純二氏
監督として制作の現場を取り仕切る西村純二氏

 また、「ぶらどらぶ」は全12話を予定しており、劇場作品を中心に手がけてきた押井守監督にとっては、20年ぶりのシリーズ作品となる。これについて「シリーズものは『うる星やつら』以来30数年ぶり。以降シリーズはやらないと決めていたが、ここ2,3年で気が変わった」と打ち明けた。「ぶらどらぶ」は2020年春の放映を目指すという。

 主題歌を担当するのが、5人組のユニット「BlooDye(ブラッディー)」だ。6月10日に結成されたばかりで、メインボーカルを人気声優の高槻かなこが務める。

Aqoursでは国木田花丸役を務める高槻かなこ
Aqoursでは国木田花丸役を務める高槻かなこ

 高槻は、静岡県沼津市を舞台にしたアニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」に登場する9人組のスクールアイドルグループ「Aqours(アクア)」の国木田花丸役としても活躍する。Aqoursの人気は国内屈指で、博報堂調べの「2018年支出喚起力ランキング」では、嵐、アイドルマスターシリーズに次いで3位につけているほどだ。昨年のNHK紅白歌合戦にも出場している。

 Aqoursはその高い人気ぶりから、国内外で頻繁にライブを行っており、その回数も年20回以上に及んできた。そのためメンバーの仕事も基本的に「ラブライブ!」関係のものに限られてきた。

 だが、ここにきてAqoursの“副業”が解禁されつつあるという。あるアニメ業界関係者はこう明かす。

「これまでAqoursの声優は他の音楽活動がNGで、他作品の出演にも厳しい制約がありました。それが今年に入ってからその制約が緩和されたと聞いています」

 高槻かなこは6月10日に「BlooDye」として他ユニット活動を開始。渡辺曜役を務める斉藤朱夏も、12日にソロデビューを発表している。また、この2人に先駆ける形で、桜内梨子役を務める逢田梨香子も今年3月にソロアーティストとしてデビューを果たしている。

 前出の関係者はこう解説する。

「『ラブライブ!サンシャイン!!』は、2回のテレビアニメと劇場アニメまで終了し、今後の作品展開は未定となっています。言ってしまえば先が見えてない状況だからでしょう。今年予定されているAqoursのライブ回数を見ても、去年に比べて目に見えて減っています」

 声優としてヒット作に巡り会えたとしても、それがその人の活動を一生支えられるわけではもちろんない。アニメに限らず、AKB48やモー娘。などの国民的アイドルグループであっても、“卒業後”の進路に悩むこともある。大ヒットアニメのグループの一員であっても、現状に満足せず、次なる一歩を自分で踏み出さないといけない事情があるようだ。

高槻かなこ率いる5人組の「BlooDye」
高槻かなこ率いる5人組の「BlooDye」

 高槻をはじめ、今後のAqoursのメンバーの活動はどうなるのか。前出の関係者はこう続ける。

「Aqoursのメンバーは厳しいオーディションを突破しただけあり、歌唱力はお墨付きです。高槻さんのように個々の音楽活動を通じて、作品の役ももらうというのが一つの戦略になりそうですね」

 とはいえ、Aqoursの人気が衰えたというわけではないだろう。6月8日と9日に埼玉県所沢市の西武ドームで開かれたライブでは立ち見も現れる満員御礼となり、動員観客数も国内外のライブビューイングも含めて2日間で計12万人を記録した。

 このライブには筆者も参加したが、最後の挨拶で「Aqoursのことが大好きかー?」としきりにファンに問う姿があった。もしかすると、Aqoursの一人一人がそれぞれの新しい道を歩み出したとしても、それでも好きでいてくれるかというメッセージが込められていたのかもしれない。

 高槻が率いる「BlooDye」にもその人気は受け継がれているようで、26日夜に開かれたファンミーティングのチケットが10秒で完売したという。紅白出場歌手がリーダーを務めるとあれば、宣伝にも役立つことだろう。

 ともあれ、Aqoursメンバーの飛躍の先鞭を高槻らがつけてくれるのであれば、ファンの一人として幸いである。

(撮影・全て筆者)

ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどメディアコンテンツを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「withnews」「AERA dot.」「週刊朝日」「ITmedia」「特選街Web」「乗りものニュース」「アニメ!アニメ!」などウェブ・雑誌で執筆。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。

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