「いくら投手としても野手としても非凡な才能を持つ大物ルーキーでも、普通はすぐどちらかに決まるはずなんですよ。決めないとやっていけないとも言える。でも大谷の場合、試合に出れば出るほど、どちらでも『超』がつく大物選手に成長する未来がはっきりと見えてきてしまう。いっそどちらかでつまずいていれば、ファンも夢をみずにいられたんでしょうが……。
僕らから見ても、160km超の球を投げる投手としてはもちろん、バッターとしても間違いなく10年以上トップ選手として活躍できる選手に映りますもの」(野球解説者・西山秀二氏)
現在、二軍で実戦と練習に励んでいる大谷の指導にあたる西俊児二軍監督も、大谷のタフさと、順応性の高さに舌を巻く。
「前例のないことに挑戦しているわけですからね。我々コーチ陣ですら、スケジュールを立てるだけでも大変なんです。それを彼は、まったくバタバタすることなく、しかも疲れた顔をほとんど見せずこなすでしょう。しかも試合ではもれなく結果を出す。だから私たちも、彼の夢にどんどん巻き込まれていっている状態です(笑)」
キャンプ以降の約2ヵ月、二刀流への挑戦を今まで続けられているだけでも、大谷は規格外なのだ。しかも誰よりもひたむきなその姿勢によって、周囲にまで「夢」をみる喜びは伝播していく。
「スター性」が違う
「本当に久々に、『この子はスターだな』と第一印象で思った」
そう興奮交じりに証言するのは、毎年3月に日本野球機構が行う「新人合同研修会」で、長年「プロに相応しい話し方」を指導してきた元ニッポン放送アナウンサーの深澤弘氏だ。
「スターになる選手というのは、話し方がきれいだし、うまいんですよ。大谷は非常に丁寧にしゃべるし、言葉使いもいい。話にテンポもある」
そう絶賛する深澤氏が特に感心したのは、「怪物」と呼ばれた先輩たちをも凌ぐ好感度の高さにある。
「大谷は、身を乗り出すようにしながら相手の目をしっかりと見て話すんです。初対面の相手でも、自分から距離を縮めてきてくれるような印象がある。それはテレビや新聞を通じてファンにも伝わっているでしょうね。
こうした姿勢は、長嶋(茂雄)さんや王(貞治)さんにも通じる、大スターの条件なんです。(菊池)雄星(西武)も同じ花巻東の出身だけど、彼はせっかく魅力的なのに、ボソボソとしかしゃべらないから『田舎の子』という印象が強かった。大谷は洗練されていますよ」