やはり「させていただく」が登場した。8月7日に東京・渋谷であったイベント「国語辞典ナイト16」。昨年12月に出版された「三省堂国語辞典」第8版を取りあげ、担当した編者、それに「国語辞典収集家」や「国語辞典マニア」らが登壇して議論を交わした。
第8版は、収められた約8万4000語のうち3500語が新語なのが特徴という。SNS時代にフェイクに惑わせられないためのガイド・豆知識を「!」の印をつけて解説している。その「!」印がついたものの一つとして、スクリーンに映し出されたのが「させていただく」だった。
もはや使用は止められない
「させていただく」はこの辞典によると、(1)許しをもらってするときの、けんそんした言い方(2)許しをもらってするかのように、自分の行為をけんそんする言い方――だという。微妙に分けて説明している。
さらに「!」印をつけた解説では、「『感動させていただきました』のように、相手と関係ないことに使うのは、ていねいすぎる」と注意喚起している。
イベントでは、辞典の編者である飯間浩明さんが、「避けるべきだ」という評価はしないと解説した。「させていただく」の表現が広がり定着しているため、もはや使用を止めることはできないということなのだろう。
装ってけんそんする言い方
私は政治家が「〇〇させていただきます」と言うのを聞くとムカッとする。へりくだる気持ちもないのに、と。今回、辞典やイベントの説明で得心がいった。辞典の分類の(2)、すなわち実際に許しをもらうのではなく、「許しをもらってするかのように」装ってけんそんする言い方だからなのだ。
言語学者の椎名美智・法政大教授は、著書「『させていただく』の使い方」(角川新書)で歴史をたどり、調査した。政治家は特に「させていただき…
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