コールセンターの「極限3密」苛酷実態、非正規雇用の不安が追い打ち写真はイメージです Photo:Bloomberg/gettyimages

「職場は3密の極み」――。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、コールセンターで働くオペレーターたちが怒りの声を上げている。会社員の在宅勤務が進んだのに、非正規雇用が多いオペレーターは今も、多人数がひしめく密閉空間で顧客対応に追われているのだ。24日にはKDDI子会社のオペレーターが3密環境の改善などを求め、労働組合に加入した上で会社側に団体交渉を申し入れた。深刻なのは、コロナ感染対策が不十分なコールセンターがまだまだあるということだ。(ジャーナリスト 藤田和恵)

窓の開かない密室に
100人がひしめいている

 緊急事態宣言の後も、スーパーマーケットやドラッグストアなど生活に不可欠な物資を扱う店舗では、従業員が出勤を余儀なくされている。透明なビニールカーテン越しにレジを打つ姿を見て、ありがたい気持ちになった人も多いのではないか。こうした目に見える職場に比べ、“密室”で働くコールセンターの勤務実態は、一般の人の目に触れることさえない。3密職場の現状とは――。

コールセンターの「極限3密」苛酷実態、非正規雇用の不安が追い打ちKDDI子会社にコールセンターの3密環境改善などを申し入れた契約社員の女性(中央)。ソーシャルディスタンスが確保されない職場で、新型コロナに感染する不安を抱えているという Photo by Ryuko Sugimoto

 ある大手企業の関連会社でコールセンター業務に就いている兵庫県在住のAさん(30代、女性)は、職場の実態を次のように説明する。

「コールセンターは高層ビルのワンフロアにあることが多いので、窓は開けられません。個人情報を扱うため出入り口にはセキュリティーシステムがあり、部屋の扉も基本的に閉まっています。

 室内には100人以上のオペレーターがいて、前後左右、手を伸ばせば隣の人に触れる距離。ソーシャルディスタンスどころじゃない。

 私の職場では、パソコンやヘッドセットは使い回しのうえ、座席も決まっていません」

 Aさんの雇用形態は3カ月更新のアルバイトで、時給は1350円。3月に入ると職場からは、スーツ姿の会社員が目に見えて減った。親会社である大手企業の正社員らが在宅勤務に切り替わったからだ。見渡せば、セーターやスニーカーといったカジュアルな服装の非正規労働者と思われる人たちがほとんどとなっている。「いつクラスターが発生してもおかしくない環境に、私たちだけが放置されたと感じました」と話す。

 4月7日、7都府県に緊急事態宣言が発令された時は、職場でもなんらかの対策が講じられるはずと期待した。しかし会社からは「(コールセンターは)通常通り営業することが決まっているので出勤してください」と言われただけ。Aさんは「座席を固定するとか、朝礼の唱和を中止するとか、すぐにできることはあるのに。(正社員である)管理者からそういう提案がないことに、絶望を通り越してあきれました」と怒る。

 緊急事態宣言発令から数日後、Aさんはついに“自主欠勤”を決断した。これにより、収入は激減した。「お金か命か――。最後まで悩みました。でも感染したら、周囲の人にうつす可能性もある。自主欠勤の後悔はありませんが、家賃をいつまで払うことができるのか、不安です」。Aさんは欠勤と同時にツイッターを始め、オペレーターの働かされ方がいかに危険かを発信している。