フリーマーケットアプリ大手のメルカリが鹿島アントラーズの経営権を取得することが30日、決まった。この日、親会社の日本製鉄が保有していた株式72・5%のうち61・6%を、16億円でメルカリに譲渡する契約が結ばれた。日本製鉄、メルカリ、鹿島の3社は都内で会見を開き、鹿島の今後の方針について説明した。

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今回の発端は、12年10月に新日鉄が住金を吸収合併し、新日鉄住金(現在は日本製鉄)が鹿島の親会社となったことだ。野球やラグビーを応援してきた新日鉄に対し、47年に住金蹴球団設立から72年間も鹿島を運営した住金。スポーツ事業の主導権は新日鉄側が持ち、住金側の意見は反映しづらくなった。鹿島担当の窓口は、役員クラスから部長クラスに下がった。

鹿島は地道な経営努力もあり、年間の営業収益を70億円超にまで伸ばした。親会社の支援なしでもクラブ経営ができるまでに成長したが、その規模を維持するには親会社の支援は無視できない。将来を見据えた親会社からの投資が見込めなくなり不安も募った。そこで新たにサッカーへの理解がある企業を探した。

外資系会社の日本法人も含み、複数の会社から打診を受けた。中には100億円単位の資金を投資する代わりに、地元を東京に移転し、ホームスタジアムを新国立に移すことを要求する企業もあった。そこで一昨年4月にスポンサー契約を結んだメルカリが、地元を維持することを第1条件にバックアップすることを提案した。結局、鹿島経営陣は巨額の資金より地元優先の選択をした。【盧載鎭】