高校教員から新横浜ラーメン博物館に入社 東大の図書館司書の経験生かし歴史を調査「ラーメンを突き詰めたい」

2020年11月30日 10時03分
<かながわ未来人>高校社会科教員から転身 新横浜ラーメン博物館に入社・新垣孝弥(しんがき・たかや)さん(40)
 全国各地のラーメンの名店を集めた新横浜ラーメン博物館(横浜市港北区)に昨年入社し、歴史調査や宣伝活動を担当する。高校教員と図書館司書の職歴と学芸員の資格を生かし、同館が取り組む「ラーメンを学問として研究する」作業を進める。
 横浜市鶴見区出身。幼少期から周囲に「先生に向いているよね」と言われ、いつの間にか教員を志すようになっていた。明治大で中学・高校の社会科教員免許を取得したものの、社会科教員の採用は少なく、二〇〇三年に明治大中央図書館の司書になった。
 翌年、東京都内の私立高校の社会科教諭へ転じた。「授業の冒頭五分は雑談すると決めていた」。時事問題のほか、普段食べ歩いているラーメンの話題を持ち出すことが多く、地図や写真を用いて説明する力の入れように「生徒やほかの教員からは、ラーメンに恋していると思われていた」と苦笑する。
 ラーメンにはまったのは大学時代。通学途中に途中下車して食べ歩くうちに「味の多様さ、種類の多さに驚いた」。当初は「動物臭いだし」が苦手で、味玉(煮卵)や、横浜で生まれた「家系」にも苦手意識があった。しかし、「おいしい店に当たると、そのたびに固定観念を崩された」。
 ラーメンの奥深さを知りたいと一日二、三軒は回り、社会人になっても一軒は訪れるようにした。「全国のラーメンを一カ所で楽しめてありがたい」というラーメン博物館も、年に三回以上通う人が入れる「ラー博倶楽部(くらぶ)」の会員になり、足しげく通った。
 「得た知識・経験を広く伝える」「ラーメンを仕事にする」を両立させるため、一八年度まで勤めた教員を辞め、東京大総合図書館の司書を経てラーメン博物館に入った。これまでの食べ歩きと教員の経験から自信を持って転職したが「多くの社員が世界各地に食べに行っている。本気度に圧倒された」という。
 ラーメンの発祥時期は諸説あり、具体的な記録が残る明治期以降も情報の信頼性が不明なものも多い。「ラーメンの歴史を整理する時代に来ている」。老舗店の創業者やその一族の話を聞きに行ったり、全国各地の図書館を訪れて文献を集めたりしている。
 年齢を重ねたこともあり、食べ歩いた分だけ体重が増え、「入社してからかなり太った」。今後はジムに通いながら、ラーメンの研究を重ねる。「日本史や世界史と関連させるとか、独自の切り口でラーメンを突き詰めたい」と語った。 (志村彰太)
<新横浜ラーメン博物館> 1994年にオープンし、館内は昭和30年代の街並みを再現している。年末年始を除き毎日午前11〜午後9時に開館し、入場料は大人380円。話題店が期間限定で出店するフードテーマパークの側面だけでなく、各地のラーメン店の丼やはし袋、雑誌・書籍などの資料収集や歴史研究も担う。近年は外国人観光客の来館が多かったが、新型コロナウイルス感染拡大やその後の政府の消費喚起策により、現在は近隣からの来館者が多いという。

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