安倍政権下の政策減税 6割が巨大企業に 13年度以降3兆8千億円 優遇くっきり

2020年9月16日 05時50分

 法人税の一部を政策的に減税する「租税特別措置」(租特)で、資本金100億円超の巨大企業が受けた減税額の総額が第2次安倍政権発足以来、少なくとも3兆8000億円に上ったことが分かった。全体の6割を超える。財務省資料から本紙が集計した。専門家は「巨大企業ほど優遇されており、企業間の不公平感を招いた」と指摘。安倍政権の継承を掲げる菅義偉すがよしひで氏による次期政権でも、巨大企業への優遇姿勢が続く懸念がある。(大島宏一郎)
 本紙は、租特の利用状況についての財務省資料を分析。納税額から一定額を差し引ける「税額控除」による減税額を抽出し、資本金別に足し合わせた。

◆巨大企業6割超、中小2割以下、中堅1割以下

 第2次安倍政権下で租特が始まった13年度から、18年度までの減税額の合計は約6兆円。減税額を企業規模別で見ると、企業数では0.1%に満たない巨大企業(資本金100億円超)向けが63%を占めていた。中小企業(1億円以下)向けは約20%、中堅企業(1億円超~10億円以下)向けは約6%だった。
 また、税理士の菅隆徳すがたかのり氏が企業の利益に対して納めた法人税の割合を「負担率」として試算したところ、18年度では中小は18%、中堅は20%なのに対し、巨大企業は12%にとどまった。本来、法人税は利益の23%分(地方分を除く)を支払うが、租特による減税効果が巨大企業ほど大きいことを示している。同氏は「巨大企業は利益に見合った税負担をしていない」と指摘する。

◆最大は「研究開発減税」3兆7000億円

 租特の項目別では、研究開発を積極的に進めた企業を優遇する「研究開発減税」が、13~18年度で計約3兆7000億円と最大。安倍政権は経団連の要望を受け13年度に同減税を拡大しており、「巨大企業に有利な状況がさらに広がった」(立正大の浦野広明客員教授)との見方も多い。
 財務省は、中小だけが対象の減税もあるとして「大企業優遇に当たらない」とする。しかし、租特の多くは、研究開発費や設備投資額などに応じて納税額を減らす仕組みで、日本総研の立岡健二郎氏は「資金の少ない中小・中堅は減税の恩恵を受けにくい」と話す。租特には税額控除方式以外の手法もあり、それらの減税も合わせれば巨大企業の減税額はさらに膨らむ。

◆租特の政策目的、達成検証進まず

 租特の数も第2次安倍政権下では85前後と高止まっており、立岡氏は「政策目的を達成したかどうか検証が進んでいない」と指摘。浦野氏は「企業規模によって減税の恩恵が偏るのは公平性に反する」と訴える。

 租税特別措置 国の政策目的に沿って、特定業界や企業への法人税を優遇する制度。時限立法が原則だが、業界団体の要望を受けた与党の圧力で、延長が繰り返されているものも多い。財務省は、納税額から一定額を免除する「税額控除」以外の手法を含めた全体の減税額は2018年度で1兆9000億円に上ると試算。安倍政権は法人税の実効税率(国税と地方税を含む)自体も、14年度は34%台だったが、16年度から29%台に引き下げた。

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