春先に消える院生「人生がかかっている」 就活長期化は誰のため

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藤波優
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 毎年、春先になると大学の研究室から修士学生が消える。

 国立大学工学系大学院の男子学生(修士2年)も、「消えた院生」の一人だ。

 「3、4月は正直言って研究どころじゃなかった。就活は自分の人生がかかっているので、研究よりも優先せざるを得ない」

 学部のころは、「研究」できる期間がほとんどなかった。研究をしてみたいと大学院へ進学した。理系就職は、修士が優遇されやすいため、就職しやすくなるという思いもあった。

研究をするために進学したが…

 修士に進学して早速、夏のインターンシップに向けた説明会や選考が始まった。夏休み期間中だった8、9月を中心に、5社ほどインターンに参加した。

 その後もインターン先の会社から社員との座談会などに呼ばれた。今年3月になると、毎日のようにエントリーシートの提出やwebテストに追われ、4月になると面接が続いた。

 その間、7社に応募した男子学生が研究室に顔を出すのは週に1回程度に。数時間のすきま時間では、データまとめなどの単純作業はできても、じっくり考える時間が必要な研究方針の検討や実験はできない。「就活が終わるまではなかなか次のステップに進めなかった」と話す。

 男子学生の研究室では、週に1回、研究の進捗(しんちょく)報告会があった。資料を準備して発表し、教授らからの質疑もある。「就活中は報告会を負担に感じた。面接で休んでしまったこともある。3月は発表できるものがなく、少し前の実験成果を小出しにしてなんとか乗り切った」

 男子学生によると、多くの修士学生は、1年の前期で単位をそろえようと授業を詰め込み、その後はだんだん就活で忙しくなる。単位をほぼ取り終え、就活が終わった2年の春ごろから、ようやく研究に専念できる状況だという。

 就職活動は年々前倒しになり、期間は長期化している。2年間しかない修士課程のうち実質、研究に専念できるのは、半年~1年弱だと言われている。

 男子学生も最近ようやく就活…

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この記事を書いた人
藤波優
科学みらい部
専門・関心分野
研究環境、アカデミック・ハラスメント