「当選させて」なんて一切言わない 38票差の勝因はマーケティング

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島脇健史
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 駅立ちしない、有権者に電話をかける「電話作戦」もしない、「私を当選させて」なんて一切言わない――。4月の統一地方選で、異色の選挙スタイルで初当選した市議会議員がいる。最下位の当選で、次点とはわずか38票差。「薄氷の当選」の裏には、考え抜いたマーケティング戦略があった。

 西村由美市議(40)は、4月に投開票された高槻市議選(定数34)で初当選。選挙に立候補したのは初めてで、得票は2166票、次点とは38票差だった。

 日本航空の客室乗務員を務めた後、知人らとコンサルタント会社を立ち上げた。小学3年の全盲の長女がいる。

 長女と友人のふれあいなどを描いたエッセーが昨年末、NHK障害福祉賞優秀賞を受賞した。読んだ人たちから「社会を変える活動をしてほしい」と市議選への立候補を打診された。

 迷ったが、「同じように困っている人たちの声を届けたい」と、政党の支援は受けずに無所属で市議選に出る決意をした。

 この時、すでに選挙戦まで2カ月を切っていた。

西村さんは初めて挑む選挙で、自社商品を売るために日頃から使っている「マーケティング」の知識をフル活用します。具体的な作戦は、記事後半で紹介します。

 そこで自身が役員を務めるコンサルタント会社のメンバーらと、自社の商品を売り込むときに活用している「マーケティング」をいかした作戦を立てた。

 ①何を政治家としてやるのか…

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この記事を書いた人
島脇健史
神戸総局|選挙・震災担当
専門・関心分野
地方行政・選挙、気象・災害、地域医療
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    奥山晶二郎
    (サムライトCCO=メディア)
    2023年7月10日18時49分 投稿
    【視点】

    西村由美市議のマーケティング戦略を駆使して当選を果たした〝異色の〟選挙を振り返る記事。 私が新聞社の編集という職場から移って、今、働いているのがまさにコンテンツマーケティングの会社になります。 気がつけば1年くらい経ちますが、マ

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  • commentatorHeader
    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2023年7月10日20時55分 投稿
    【視点】

    読者を政治の消費者と考えると、批判する記事ばかり書いているとこんな商品いらないってなるだろうなとよく思います。でも読者は政治の生産者でもあるので、その産物を批判する記事で直視してほしいとも思うわけです。民主主義と報道のそうした緊張関係の中に

    …続きを読む