知的障害者が「奴隷労働状態」 牧場と北海道恵庭市に賠償求め提訴

新谷千布美
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 住み込みで働いていた牧場(北海道恵庭市)で長年虐待されていたとして、知的障害のある男性3人が24日、牧場の経営者家族と恵庭市を相手取り、札幌地裁に提訴した。代理人弁護士は「奴隷労働だ」と指摘。受け取れなかった障害基礎年金や慰謝料など計9千万円を支払うよう求めている。

 訴状によると、いずれも60代の3人は18~45年間、個人経営の牧場「遠藤牧場」で働いていた。だが、賃金は支払われず、個人口座に振り込まれる年金はほぼ全額引き出されていた。手渡されたとしても月に1~2回、2千円程度だったという。

 3人は牧場内のプレハブ小屋で生活していたが、水道や風呂は無く、暖房は一部屋にしかなかったと主張。飲用水を保管するペットボトルは、ボウフラがわく不衛生な状態だった、としている。午前3時半に起床して日没まで牛のえさやりや農作業をこなし、休日は無かったという。

 訴状では、恵庭市は遅くとも2017年1月に状況を把握していたのに、経営者が元市議会議長だったことから詳しい調査をせず、隠蔽(いんぺい)したと主張した。

 提訴後に会見した船山暁子弁護団長は「牧場はもちろん、市の責任も強く問われるべきだ」と語った。

 経営者の元議長は20年2月に死亡し、3人は22年夏~秋ごろに牧場を退去した。退去後の支援者が、障害年金の入出金の不自然さに気付いて弁護士に相談。弁護士の調査で実態が発覚したという。

 恵庭市は朝日新聞の取材に「現段階では十分な情報を把握できておらずコメントはできない」とした。

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    木村裕明
    (朝日新聞記者=企業、経済、働き方)
    2023年8月25日5時43分 投稿
    【視点】

    原告の主張が事実であれば、極めて深刻な人権侵害であり、知的障害者に対する虐待の事実を担当職員が把握しながら放置していた恵庭市の責任も重大です。  すでに亡くなっている元市議会議長の経営者は、恵庭市内の障害者支援団体の会長も務めていたとのこ

    …続きを読む