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 再崩落した乗鞍スカイラインの復旧方法について、岐阜県は有力視していた桟橋形式を断念し、トンネルで迂回(うかい)ルートを建設すると決めた。現地の地盤を詳細に調査した結果、地下の深い箇所まで岩盤の風化が進んでいることが判明。恒久利用する構造物の建設は望ましくないと判断した。県が2023年1月20日に明らかにした。

西側から見た崩落現場。北側の区間では、2020年7月の被災箇所よりも山側から崩れ落ちた(写真:岐阜県)
西側から見た崩落現場。北側の区間では、2020年7月の被災箇所よりも山側から崩れ落ちた(写真:岐阜県)
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 再崩落したのは、北端の平湯峠ゲートから1kmほど離れた路肩だ。20年7月の豪雨で崩落した後、仮復旧して21年7月から山側の1車線で片側交互通行を続けていた。全ての復旧工事を終え、対面通行への移行を翌日に控えた22年9月9日に再び崩れた。

 県は再崩落を受け、有識者などでつくる対策検討会(委員長:沢田和秀・岐阜大学工学部付属インフラマネジメント技術研究センター教授)を設置。23年1月20日に開いた第3回会合で復旧方法などを明らかにした。

 22年10月28日の第2回会合では、崩落箇所の谷側に張り出すよう桟橋を架ける案を最有力候補に挙げていた。しかし調査の結果、亀裂が多く、著しく風化の進行した地盤だと分かった。さらに、付近では崩壊跡地が多数存在していることも確認した。

2022年10月28日の第2回会合で示していた桟橋形式による復旧方法の概要(出所:岐阜県の資料を基に日経クロステックが作成)
2022年10月28日の第2回会合で示していた桟橋形式による復旧方法の概要(出所:岐阜県の資料を基に日経クロステックが作成)
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被災箇所のボーリング調査結果。地下深部まで風化が進行していた(出所:岐阜県)
被災箇所のボーリング調査結果。地下深部まで風化が進行していた(出所:岐阜県)
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 新たに建設する迂回ルートの延長は約800m。トンネルの延長は約600mで、両端にそれぞれ約100mのアプローチ部を設ける。

新設する迂回ルートの平面図。被災箇所前後の脆弱(ぜいじゃく)な区間を避け、現道との接続を考慮して坑口の位置を決めた(出所:岐阜県)
新設する迂回ルートの平面図。被災箇所前後の脆弱(ぜいじゃく)な区間を避け、現道との接続を考慮して坑口の位置を決めた(出所:岐阜県)
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