仕事の価値が「倒錯した」世界に生きる―「クソどうでもいい仕事」と「クソ報われない仕事」が増えつづける社会に言いたいこと

「シット・ジョブ」(クソみたいな報われない仕事)

昨年からのインフレの影響で、世界各国で労働者たちの怒りが噴出している。渦中の国の一つがイギリスだ。鉄道、高速道路、交通、港湾、郵便など公共サービス労働者が全土でストライキを敢行。その波は医療従事者にまで波及した。

2022年12月15日にはNHS(国営国民保健サービス)の看護専門職による労働組合「王立看護協会」(RCN)が「待遇改善」を求め、創設106年にして初のストライキを断行したのだ。人命にかかわる仕事がストにより滞る。さぞ、一般市民の抵抗があるかと思いきや、実はそうではなかった。

『私労働小説ザ・シット・ジョブ』を上梓したブレイディみかこさん 写真/永井浩
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国際的にデータ収集と分析を行っている英国YouGov社が発表した統計によれば、年齢、性別、社会階層、地域を問わず6割以上の支持が得られたという。

「今労働者をめぐる社会のありかたは大きな変化を見せようとしています」

そう語るのは作家のブレイディみかこさん。ブレイディさんはイギリスで暮らし、失業者や低所得者向けの託児所などで働く傍ら、階級間、人種間、性別間など、多様性のはざまの中で尊厳を求めて闘う人々の姿を作品にまとめて発表してきた。

新作『私労働小説 ザ・シット・ジョブ』(KADOKAWA)は、ブレイディさんが経験してきた「社会に不可欠なのに報われない仕事」をテーマにした小説だ。シット・ジョブを直訳すれば「クソみたいな仕事」だが、意味としては「低賃金できつい仕事」である。何故いまシット・ジョブなのか、ブレイディさんに話を聞いた。

(取材・文:小林空 藤岡雅)

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