トランプ米大統領と中国の習近平(シーチンピン)国家主席が29日、大阪市で開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて首脳会談を開き、米国側は対中制裁の追加関税措置「第4弾」の発動を見送ると表明した。中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への輸出制限については米企業による輸出を認め、頓挫していた通商協議も再開する。

 トランプ氏は29日に記者会見し、「素晴らしい会談だった。今後も協議を続ける」と説明。追加関税をかけてこなかった3千億ドル(約32兆円)分の輸入品に対する「第4弾」の発動について見送りを表明した。交渉期限は設けていない。

 さらに、5月に発動した華為への輸出制限について一転、米企業による輸出を認めると説明。米IT企業への就職を念頭に中国の優秀な人材が米国に滞在したり、永住権を得たりしやすいよう配慮するという。中国外務省によると、習氏は首脳会談で「中国企業と留学生に公平に接し、両国企業の正常な貿易投資や人的交流を保証してほしい」と要求していた。

 トランプ氏の説明によると、中国側は米国産の農産品の輸入拡大を改めて受け入れた。ただ、これは昨年に合意済みで、もともと中国が譲歩しやすい争点。知的財産侵害などの中核的争点で米側が得た中国側の譲歩は明らかでなく、火種が残り続ける可能性が高い。

 米中首脳会談は、昨年末にブエノスアイレスで開かれた前回のG20以来、約7カ月ぶり。前回は、追加関税「第3弾」の引き上げについて当面の延期を決め、高官級の協議を続けていた。

 しかし、今年5月、中国による知財侵害や産業補助金など「構造問題」を巡る対立が顕在化し、協議が決裂。米政権は第3弾の税率引き上げに踏み切り、中国側も報復。米側は第4弾の発動準備を進めつつ、これを交渉カードとして首脳会談に臨んだ。

 習氏は首脳会談でトランプ氏に対し、「誠意をもって通商交渉を続ける」と強調した。一方で、「中国の主権と尊厳に関する問題で、中国は核心利益を守る必要がある」と主張。米国が求めてきた合意内容を履行するための国内法改正などについて、依然としてかたくなな態度を貫いている。

 一方、両国首脳は北朝鮮問題についても議論した。習氏は「米朝首脳が対話を維持することを支持し、すみやかに対話を再開するよう希望する」と述べた。そのうえで「中国側も建設的な作用を果たしたい」と述べた。これに対し、中国外務省によると、トランプ氏は中国側が朝鮮半島問題で果たす重要な役割を重視し、協調を保ちたいと述べたという。(福田直之、青山直篤)