「私の職場の昼休みは45分だけ。しかも時間が固定でまったく自由がないんです」
大手製造業に常駐するITエンジニアのAさんはため息交じりに職場環境の不自由さを嘆く。
昼休みが45分しかないものだから、社員食堂で食事するしかない。混雑した階段を使って社員食堂に向かうと長蛇の列。ただでさえ短い休憩時間がどんどん奪われる。食事のスピードも「待ち人たち」の圧力で早くなる。健康にも悪影響だ。
昼寝したりスマートフォンを触ったり、ゆっくりトイレに行ったりする時間などない。銀行やコンビニなどでプライベートな所用を済ませたくても無理だ。
いわば「レガシー製造業型」のIT職場である。筆者も経験がある。画一的かつ強制労働的な職場環境はIT人材の生産性やモチベーションを大いに下げる。実際、そんな職場にいたときは、モチベーションもエンゲージメント(帰属意識や仕事に対する誇り)もだだ下がりしたものだ。
「昼休みは45分でいいから、その分早く帰りたい」。そうしたい人は、そうすればよいだけだ。皆が横並びである必要はない。それ以前に、そもそも1日の労働時間を固定するのが正しいのか。週5日も働く必要があるのか。
「DXだ!」「イノベーションだ!」と叫ぶトップ
休憩時間だけではない。次のようなレガシー製造業型の職場環境や制度は、IT人材のように本来クリエーティブな仕事をする人たちの足を引っ張る。
・外出も出張もさせてもらえない
(出張費用をケチる。出張申請承認プロセスが煩雑で果てしなく面倒臭い)
・執務は固定席で、会議は会議室で
(フリースペースや休憩スペースすらない)
・オフィスが暑い/寒い、薄暗い…
(設備や電気代をケチる)
一方で経営トップはこう叫ぶ。
「DXだ!」
「イノベーションせよ!」
「生産性を上げろ!」
いやいや。この旧態依然のけん怠感しかない環境では、DXどころか、業務の生産性向上すら無理でしょう。