目指せ!投票率75%プロジェクト」というプロジェクトがある。これはNPO法人キッズドア理事長の渡辺由美子さんら8人を実行委員会として発足されたもの。任意でアンケートを取り、多くの国民が興味を持つ「争点」を明確にすることで自分以外の人が何を大切に思っているのかを浮かび上がらせた(1位はハラスメントの撲滅だった)。そしてその争点に対して候補者にアンケートを取り、政党や候補者がそれらに対しどのように考えているのかをまとめ、「わかりやすい選挙」の一助として情報発信していくという。

そのアンケートの一つが、「どのような制度やきっかけがあれば、投票に行こうと思いますか。次の選択肢の中から、当てはまるものをすべて選んでください(複数回答)」というものだ。例えば、海外では、インターネット投票や郵便投票も実現しつつある。エストニアでは2005年よりインターネット投票が導入され、投票率の上昇に大きく貢献していると報じられている。

では日本ではどのような制度やきっかけを必要としているのか。その結果をふまえ、評論家でラジオパーソナリティもつとめる荻上チキさんに寄稿いただいた。

 

選挙は「おでかけイベント」の一つだった

いよいよ衆議院選挙の日程が決まりました。10月19日に公示され、10月31日に投開票となるスケジュールです。

衆議院選挙は、政権を選択する選挙にもなります。「現政権でいいかどうか」「どの政党に発言力を持ってほしいか」などを吟味した上で、投票を行うことになります。

私は選挙権を持ってから、毎回投票に行っています。自分が「若者」だった頃から、「若者の選挙離れ」の理由を、「若者の意識の低さ」に求めようとする報道が多くありました。

そうした報道に触れると、少しだけ「ふふん、自分は投票に行ってるもんね」などと思う一方で、その分析の仕方については、違和感を抱いていました。まるでそれは、「交通事故が起きるのはドライバーのマナーが悪いからだ」と主張しつつ、いつまでも「事故が起きにくい道路設計にしよう」という結論に辿り着かないような、床屋談義的なあさはかさを感じていたためです。

まず自分は、「意識が高いから」選挙に行っていたわけではありません。特に何もすることがない日曜日に、家族が車で投票所に行き、ついでに買い物するというので、共に投票に行っただけでした。

投票のついでに買い物でもいくか、そんな家族も少なくないだろう(写真の人物は本文と関係ありません)Photo by iStock

2002年にリリースされた、モーニング娘。の「ザ☆ピ〜ス!」歌詞に、「選挙の日って ウチじゃなぜか 投票行って 外食するんだ」という歌詞がありました。この歌詞のリアリティは、当時大学生であった自分にはよくわかりました。自分にとって投票というのは、強い意識を持った政治参加というよりも、「おでかけイベント」の一つだったのです。

子どもからしたら外食が楽しみで投票に行きたくなるかも Photo by iStock

この歌詞は、日曜日に家族の休みが重なることや、外食に行ける程度の所得があることが見て取れます。また、「ふるさとには再来週帰ろう」という歌詞もあるように、家族仲も良好であることもわかります。

実際、「親と投票所に行く」「親と政治についてコミュニケーションする」というような体験は、その後の投票行動に影響を与えるという研究があります。こうした観点から考えると、私が投票に行くようになったのは、生育環境によって与えられた文化資本であったとも言えるでしょう。