手塚先生から藤子先生に贈られた生原稿

 2人の藤子不二雄先生がプロ漫画家デビューする前からデビュー間もないお若いころ、藤子先生は手塚治虫先生から描き損じの生原稿やコマの切抜きをよく贈られていました。そのことは『まんが道』でも描かれています。

 たとえば、『まんが道』立志編の初めのほうの回「夢への旅立ち」や「手塚先生よりの手紙」でそういうエピソードを読むことができます。

 『まんが道』によれば、満賀道雄才野茂は手塚先生から贈られた生原稿を2人共有のトレジュアボックス(宝の箱)と呼ばれる小さな金庫にしまっていました。2人にとってこのうえない宝物だったことでしょう。

 

 そんな、手塚先生から藤子先生に贈られた生原稿のうちⒶ先生が保存されていたものが、6月末に藤子スタジオから手塚プロに返却されました。

 その出来事を最初に明かしてくださったのは、手塚るみ子さんです。Ⓐ先生の姪御さんで藤子スタジオ代表取締役の松野いづみさんが手塚プロに来社し原稿をお返ししたいと申し出があった、ということを7月初めにSNSで報告してくださったのです。

 

 るみ子さんによるこの報告に触れたとき私は、Ⓐ先生がこれらの原稿をずっと大切に保存されていた事実に(Ⓐ先生ならずっと大切に保存されるに決まっていると思っていても)思わず感涙しました。そして、Ⓐ先生がこれらの生原稿を手にしたときの絶大な喜びやⒶ先生が生涯にわたって手塚先生に抱き続けた敬意が時空を超えてこちらの胸に届いたかのような感覚になり、非常に感銘を受けました。

 

 そんな“手塚先生から藤子先生に贈られた生原稿”についての記事が、本日(8/13)付の読売新聞朝刊に大きく掲載されています。

 なんといっても、1面トップで掲載されているのですから、すごいです。

 そのうえ27面にも関連記事が載っており、マンガ界を超えたビッグニュースの扱いとなっています。

 

 

 手塚治虫の未発表原稿、藤子(A)さん保存…長女に返却「師弟関係に胸が熱くなる」2022/08/13 07:52

 https://www.yomiuri.co.jp/culture/subcul/20220812-OYT1T50279/#r1

 

 

 ■仕事で煮詰まった時、気持ちが沈んだ時…藤子(A)さんが初心に戻れた「手塚先生の生原稿」2022/08/13 09:55

 https://www.yomiuri.co.jp/culture/subcul/20220813-OYT1T50067/

 

 上掲のようにデジタル版でも読めますが、私は記事の大きさを実感したくてコンビニで紙の読売新聞を買ってきました。個人的に紙で保管しておきたくなる記事ですし。

 「仕事で煮詰まった時、気持ちが沈んだ時…藤子(A)さんが初心に戻れた「手塚先生の生原稿」」という記事では、『まんが道』立志編「手塚先生よりの手紙」に登場した手塚先生の生原稿の現物が紹介されています。

 満賀道雄は、手塚先生から届いた封書を開けたら出てきたこの生原稿を目にしたとき、こう思いました。

「中から出てきたのは、なんと手塚先生の生原稿の1ページだった!手塚先生が描きそんじの原稿を送ってくれたのだ!だが、その原稿のどこを描きそんじたのか、何度見ても、満賀道雄にはわからなかった!」

 

 私が10代のころ『まんが道』立志編を初めて読んだとき、この「その原稿のどこを描きそんじたのか、何度見ても、満賀道雄にはわからなかった!」というフレーズがとても心に響きました。手塚先生の生原稿の神々しさや描線の美しさがありありと伝わってくる気がしたのです。

 

 NHK総合でドラマ『まんが道』の再放送が(まだ第9話までのオンエアですが)あったばかりですし、本日の記事はとても良いタイミングでの報道だなと感じ入っております。