お伊勢参り描く江戸期の屏風、根津美術館で展示
東京・青山の根津美術館が所蔵する2つの屏風が江戸時代のお伊勢参りの道中を描く貴重な作例であることが分かり、同館で開催中の「尾形光琳の燕子花(かきつばた)図」展で5月12日まで展示中だ。画中の図像や文字が近年の修復により鮮明になり研究が進んだ。このうち六曲の「伊勢参宮図屏風」は名古屋市博物館が所蔵する六曲の同名屏風と対であることも明らかになり、合わせて3点をお披露目している。
「お伊勢行きたや伊勢路が見たい」と伊勢音頭にうたわれたお伊勢参りは江戸時代に庶民に広まり、多数の参拝客が大挙して伊勢神宮を目指す「おかげ参り」と呼ばれる現象が何度も起きた。「伊勢参宮図屏風」はそんな道中のにぎわいを活写する。名古屋所蔵の右隻では宮川の渡しを経て、おしろいや火縄などが並ぶ土産物屋をひやかしつつ外宮へ向かう旅装の人々が描かれる。根津所蔵の左隻には参拝後に精進落としをする歓楽街や参拝客が投げる賽銭(さいせん)を網で拾おうとする人々の姿も見える。
六曲一双の「伊勢参宮道中図屏風」も京都から伊勢神宮までの道のりを描いていることが裏付けられた。名古屋市博物館の津田卓子学芸員は「伊勢参りを題材にした19世紀以前の屏風はこれら3作品以外は見つかっておらず、貴重な作例」と話す。
(窪田直子)