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国内最大規模の医療データベースを扱う開発本部が徹底する“守り”と“攻め”のハイブリッド環境

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JMDCのCTO 兼 開発本部長の小森谷です。
今回は、JMDC開発本部の事業内容や技術スタック、開発体制についてお伝えしていきます。特に、技術スタックに関しては、医療分野の特殊なビッグデータを扱っていることから、当社ならではのインフラや開発環境を構築しているのが特徴です。

小森谷 一生(こもりや かずなり)株式会社JMDC CTO 開発本部長
営業・SIerを経験した後、Web系エンジニアへ転向。livedoor社およびGREE社において大規模コンシューマー向けサービスの中で基盤開発から事業KPIの推進など幅広い業務とエンジニアチームのマネジメントに従事。その後、メタップス社にて執行役員としてデータ統合管理や開発組織構築を経験。2018年にJMDCに参画し、2021年より現職。

医療システムの最適化を目指して

1000万人のレセプトデータが最大の強み
JMDCは「データとICTの力で、持続可能なヘルスケアシステムを実現する」をミッションに、医療ビッグデータを活用した事業を幅広く展開しています。

具体的には、製薬会社、保険会社向けのデータ分析ソリューションやプロダクト開発、健康保険組合や自治体の保険事業サポート、医療機関の診療サポート、ヘルスケア関連のプラットフォーム等を提供しています。JMDCの開発本部では、これらの事業に沿ってさまざまなデータ分析や開発を担当し、事業の根幹を支えています。

JMDCの大きな特徴といえば、レセプト(※)や健診データを蓄積した1000万人超の保険者データベースを保有していることがあげられます。2002年の創業以来、約300の健康保険組合から独自にデータを収集・蓄積。この大規模データベースが、他の追随を許さないJMDCの優位性となっており、安定した事業基盤につながっています。

当社以外にも、国民健康保険や病院データの収集を得意とする他企業が存在し、昨今はスタートアップによるヘルスケア領域の進出も活発化しています。医療業界で活動するプレーヤーが増えていくなか、製薬会社や保険会社もデータを活用していく機運が高まっています。医療系データ市場は、まさに活況を呈しているといえるでしょう。

(※)レセプト:医療機関が健康保険組合に医療費を請求するために、行った処置や使用した薬剤等を記載した診療報酬明細書

医療分野の社会課題にチャレンジする
JMDCは、医療データ業界で一定の地位を確立してきましたが、開拓の余地はまだまだあると考えています。医療業界のDXといった医療システムの最適化は、その最たるものです。医療の世界では、デジタル化やデータ活用がまだまだ進んでいないのが現状です。病院では紙の問診票や報告書などを使うなど、古くからの習慣がいまも続いています。

システムもオンプレが中心で、サーバーは十数年、技術が変わっていないケースが多いです。医療は人命に直接関わる分野ですので、安全性へのガイドラインが厳しく、保守の観点からシステムを容易に入れ替えるのは難しいからです。

とはいえ、医療業界も変わっていく必要があります。特に、社会課題である「医療費の増大」や「生活習慣病の増大」を解決するためには、DXが必要不可欠になってきます。

JMDCでは、これら社会課題の解決に向けて、医療の全領域でのデータ収集・活用をしていく構想があります。医療ビッグデータを基盤としたサービス開発に積極的にチャレンジしていきたいと考えています。

レガシーとモダンを組み合わせた技術スタック

データの特性に合わせてオンプレ・クラウドを使い分け
医療ビッグデータを扱ううえで、システム構築やインフラ整備はJMDCにとって非常に重要な要素となります。ここでは、開発本部のインフラや開発環境の特徴をお伝えしたいと思います。

各システムは、オンプレとクラウドのハイブリッドな環境で運用しています。主要なものは以下になります。

構成管理: Terraform, CloudFormation
CI/CD: CircleCI, GitHub Actions
実行環境: Amazon ECS, AWS Elastic Beanstalk
運用監視: Datadog, AWS CloudWatch
AWSアカウント管理: AWS Organization, AWS SSO
ハイブリッド接続: AWS DirectConnect

保険者レセプトデータを扱う「保険者データ基幹システム」では、個人のレセプトや健診データを匿名加工するというJMDCのコア事業を担当しており、大規模な個人情報のローデータを扱っている以上、情報が漏洩するようなことがあってはなりません。厳重に取り扱う必要性から、堅牢なオンプレミスを使用しています。

それ以外では、AWSをメインにクラウド化を急速に進めています。医療機関データの基幹システムは、今年度ちょうど切り替えしている段階で、AWSのS3を起点とするデータレイクアーキテクチャ設計に準拠して移行を進めています。他のオンプレも数年以内には、すべてクラウドに切り替えしていく予定です。

開発環境についてもお伝えしましょう。
オンプレは基本、.NETですが、一部のシステムやサービスでは、Reactなど、リニューアルのタイミングで新しいものを導入しています。今後も、適切なタイミングで新しいものへリプレイスしていきたいと考えています。

クラウドは、AWSがメインではありますが、製薬会社向けのRWD分析ツール「JMDC Pro」では、複雑な分析条件のSQLをLookMLという言語で構築することが可能で、ソースコードもGitで一元管理できるエンジニアフレンドリーなGoogleのグループ会社の米国Looker社のBIツールをベースにしています。

オンライン教材や資格取得補助でクラウド知識の習得を後押し
開発本部の技術スタックは、レガシー&モダンの両方が共存しているのが特徴です。しかし、クラウド化を急ピッチで進めている関係で、今、重視するのが「リスクオンとリスクオフの切り替え」を柔軟かつスピーディーにおこなうこと。つまり、安全性を軸にしたSler的な開発スタイルと、Web開発のアジャイル的なスタイルの両方が存在するなか、領域によって両者を柔軟に切り替えていくのが大事だと考えています。
現在、オンプレに携わっていた開発本部メンバーの4~5割がクラウドに触れ始めています。社内でもクラウドについて学ぶ環境を整備しており、勉強会を実施したり、AWS・GCPなどの資格受験費用の補助、Udemyなどオンライン学習サービスの利用補助など、さまざまな取り組みを進めています。

巨大データのクラウド化といった技術的なチャレンジは、開発者にとって非常にやりがいのある、おもしろい部分だと思ってます。これまで、オンプレで開発をやってきたけれど、AWSを主体とするクラウドシステムに挑戦したい方にとっては、スキルアップしやすい環境を提供できると考えています。

SIerと自社開発、2つの性質が交わる組織

開発本部の組織体制
開発本部は、「データ基盤開発部」「プロダクト開発部」「ユーザープラットフォーム開発部」の3つの部門で成り立っている、約50名の組織です。

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データ基盤開発部では、医療データ基盤を開発。各種サービスを展開するためのデータを収集・加工し、各事業で使いやすいように整備しています。プロダクト開発部は、主にtoB向けに分析サービスやプロダクト開発を担当し、ユーザープラットフォーム開発部は、toC向け健康増進プラットフォームの開発を行っています。

Sler出身者が、活躍できる素地がある
主にデータ基盤開発部とプロダクト開発部には、幅広い業種からのSler出身のメンバーが在籍しており、それぞれの持ち味を活かして活躍しています。

入社6年のあるマネージャーの例をお話しましょう。
前職では、独立系のSlerで大手広告会社の受託開発を担当していましたが、自社システム開発を希望してJMDCにジョインしました。

彼は、もともと既存の考え方ややり方にとらわれない柔軟なタイプの人材です。医療データ基盤システムのクラウド化を進める際も「AWSの得意なエンジニアを外部から集めてチームを作ろう」と、自らフリーランスのWebエンジニア3名をアサインしてチームを結成、マネジメントしています。契約先の数百の病院から集めたデータをAWS上でデータレイクを構築し、分析可能なデータに加工して各プロダクトチームに展開しています。

開発本部では、彼のように柔軟な発想やスピード感を持って、レガシーからモダンなシステムへと橋渡しできるような人にぜひ活躍してほしいと考えています。

一方で、Slerの方が積み重ねてきた経験や知見も活かせるのも特徴です。先端のWebサービス開発よりも、大規模データの処理速度を高めたり、開発の自動化をいかに進めるかといった、バックエンド寄りの仕事にやりがいを感じる人には適しているでしょう。

金融機関などで機密性の高い基幹システムを開発してきた経験とも親和性が高く、医療システムの知見を身に付けて、社会貢献性の高いサービス開発に取り組むことができます。

これまでの経験を活かしながら、クラウドや新しい技術にもチャレンジしていきたい。自社サービス開発をしたい、医療業界に貢献したい。そんな方たちとともに、JMDCの未来を作っていけたらと思っています。