反イスラム小説「悪魔の詩」著者 ラシュディ氏襲われる

12日、米ニューヨーク州で襲撃され、介抱されるサルマン・ラシュディ氏(AP)
12日、米ニューヨーク州で襲撃され、介抱されるサルマン・ラシュディ氏(AP)

【ニューヨーク=平田雄介】反イスラム小説「悪魔の詩」を執筆し、イランの最高指導者だった故ホメイニ師から「死刑宣告」を受けた作家、サルマン・ラシュディ氏(75)が12日、米東部ニューヨーク州で男に襲撃された。AP通信などが伝えた。同氏は病院へ搬送され、手術を受けている。男は会場を警備していた警察官が拘束した。

ラシュディ氏は「芸術の自由」をテーマに講演する直前、壇上に上がってきた男に首や腹を刺され、大量に出血したという。男は東部ニュージャージー州のヘイディ・マタール容疑者(24)。警察は動機や事件の背景を調べている。

ラシュディ氏はインド出身。1988年に「悪魔の詩」を発表し、イスラム教預言者ムハンマドを風刺した。その内容は「反イスラム的」と批判され、イランなどで出版禁止となった。故ホメイニ師は89年にラシュディ氏の「死刑宣告」を出した。

ロイター通信によると、ラシュディ氏は英国での逃亡生活を経て、2016年に米市民権を取得、現在はニューヨーク市で暮らしている。12日の講演では各国で迫害され、亡命を余儀なくされた作家らについて話す予定だった。

米国のペンクラブ「ペン・アメリカ」は事件を非難する声明を発表し「公の場で作家がこのように襲われるのは米国で過去に類例がない」と指摘した。

「悪魔の詩」をめぐっては、日本でも91年に邦訳を担当した筑波大学の五十嵐一助教授=当時(44)=が同大の構内で首などを切られ、殺害される事件が起きた。

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