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「動画で会える」Vチューバー、アイドルより人気-海外進出も

  • キズナアイの登録者数は400万人超とAKB48の236万人を上回る
  • データ主導の事業展開が可能-gumiの国光会長

架空のアニメキャラクターがネット上で現実のアイドルのように活動するバーチャルユーチューバー(Vチューバー)。本物のアイドルをしのぐ人気者も登場する中、ネットを通じてファンと双方向のやり取りができる点が受け、海外進出も始まっている。

  「はいどうもー!」と登場するのは、元祖Vチューバー「キズナアイ」。2016年12月に活動を開始した。得意の歌や踊りに加え、自らがビデオゲームで遊ぶ実況中継などでファンを増やしてきた。ユーチューブ上に持つ2つのチャンネルの登録者数は400万人超。実在の人気アイドルグループAKB48の236万人を上回る。

  3月に配信されたキズナアイのシングル「AIAIAI」のミュージックビデオでは、キズナアイが人間のバックダンサーを従えてダンスも披露し、約772万回再生された。日清食品のカップヌードルやブルボンのチーズおかきのCMにも登場した。

VTuber

キズナアイ

Source: Kizuna AI

  動画制作からテレビ、広告出演のマネジメントまでキズナアイのプロデュースを手掛けるActiv8(アクティベート)。大坂武史代表取締役は、Vチューバーの魅力はキャラクターの「実在感」だと話す。

  これまでアニメなどのキャラクターは決められたストーリーやシナリオに沿って一方向で表現されることがほとんどだった。しかし、ストリーミング技術や仮想現実(VR)により、Vチューバーは動画の中でファンと同じ空間を共有できるようになり、今ではライブコンサートやテレビのクイズ番組にも出演する。

  企業向けにデータ収集・分析を提供するユーザーローカルによると、Vチューバーの数はこの1年で4000増え、5日に9000を超えた。背景にはVチューバーの容姿や声を自在にカスタマイズできるアプリや、VRゴーグルなど関連技術・機器の進化や低価格化がある。

  Vチューバーの発掘やライブ配信アプリの運営を手掛けるグリーの荒木英士取締役は、次世代通信規格(5G)やVR、拡張現実(AR)などに関する技術がさらに普及し、よりイマーシブ(没入感)を持てる体験が可能となれば「身体も含めた表現」がキャラクターに必要になってくると話す。

次世代のディズニー

  グリーは18年4月から最長2年かけ100億円をVチューバー関連のファンドやライブ配信事業に投じる方針だ。荒木氏はVチューバー市場が立ち上がってきており、「技術的にはビジネスモデルの確立が進みつつある」と話した。

  同業のgumiも、15年からVチューバーに関連する企業や、番組や仮想イベント参加の際にファンが使うVRゴーグルなど関連技術を開発する企業など約70社に投資してきた。アクティベートもその一社だ。

  gumiの国光宏尚会長は、Vチューバーは一種の知的財産(IP)だとし、人気キャラクターを発掘・創出した上で、ファンの嗜好も吸い上げながら新たなコンテンツに生かすデータ主導の事業展開が可能だと説明する。当たり外れを予測しにくい過去のIPビジネスの常識を覆し、「エンターテインメントの未来を変えると確信している」と語った。

  キズナアイ人気は海外にも広がり始めた。中国の動画サイト「ビリビリ」では82万人に迫るフォロワーがいる。またユーチューブにもチャイナドレスのような服を着て中国語を話すキズナアイが登場した。

  アクティベートの大坂氏は、世界の誰もが知るミッキーマウスを抱える米ウォルト・ディズニーを念頭に、「次世代のディズニーになりたい」と語った。

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