懐かしの「赤チン」、ついに市販品1社のみに 製造も2020年で禁止 最後の赤チン製薬会社が語る思い

赤チンこと「マーキュロクロム液」が5月31日をもって日本薬局方から削除。関連してTwitterでは赤チンへの思いを振り返る声が相次いでいます。

» 2019年04月15日 20時20分 公開
[黒木 貴啓ねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 年配の方の中には、保健室でひざ小僧に塗ってもらった人も多いかもしれません。“赤チン”の俗称で知られる薬「マーキュロクロム液」が、2019年5月31日をもって日本薬局方(厚生労働大臣が定めた医薬品の規格基準書)から削除されます。2020年12月31日には「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」によって国内での製造も規制される予定で、最盛期には100社ほどが生産していたという赤チンが、手に入れられなくなるのも時間の問題となってきました。

国内メーカーによる最後の赤チンとなった三栄製薬「サンエイ-S」

 日本薬局方から外れた薬は現行の「日本薬局方」を記載したパッケージでは売れなくなり、あらためて承認審査を通さなければなりません。それでも2020年まで、マーキュロクロム液を局方外医薬品にリニューアルして製造販売し続けることを決めた製薬会社が、日本に1社だけ存在します。1953年に創業した三栄製薬(東京都世田谷区)です。国内最後の赤チンメーカー、その思いを取材しました。


5月で局方品の赤チンとさよなら Twitterで懐かしむ声

 マーキュロクロム液は、有機水銀剤「マーキュロクロム」の1〜2%水溶液。粘膜・傷口の消毒に使用され、薬品の色が緑がかった赤褐色であったため「赤いヨードチンキ」の意で“赤チン”と呼ばれました(※ヨードチンキと化学的組成は全く別物)。

 内藤記念くすり博物館の公式サイトによると日本薬局方に初めて収められたのは1939年。明治以降に衛生教育が進んで消毒や殺菌の重要性が認識されるや、家庭や小学校の保健室に手軽な消毒薬として常備されるようになりましたが、水銀公害が問題となった1960年代以降は製造過程で水銀の廃液が発生することから敬遠され、1973年には原料の国内生産が中止されます。

 それでも原料を輸入することは禁止されていなかったため、愛用者に応える形で平成に入っても一部企業は製造販売を続けていました。2015年に政府が行った製造事業者2社へのヒアリングによれば、1社の年間製造量は1万6500〜3万本程度。薬局や保健室で赤チンを見る機会は激減しましたが、年配者を中心に多くの一般使用者がいたのです。

 しかし2016年6月に公布された「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」で、マーキュロクロム液が2020年12月31日をもって製造禁止になることが決定。さらに2017年12月、厚生労働省は「マーキュロクロム」「マーキュロクロム液」の2つを2019年5月31日をもって日本薬局方から削除することを発表しました。


 マーキュクロム液「コザカイ・M」を販売してきた小堺製薬(東京都墨田区)は局方品でなくなることが決定打となり、2018年12月に同薬の製造を中止。その後も出荷分は市場に出回っていましたが、外箱に「日本薬局方」を表記したままなので2019年6月以降は販売できなくなります。

2018年12月に製造を中止した小堺製薬のマーキュクロム液「コザカイ・M」

 これに伴いTwitterでは4月半ばから「赤チンが販売できなくなる」「5月に返品で棚から消える」と報告したツイートが注目を浴びることに。厳密には日本薬局方を掲げる赤チンのみが販売中止となるわけですが、Twitterではこれをきっかけに「まだ赤チン売っていたのか」「そうか、完全に無くなるのか」と驚く声や、「幼少の頃の膝はいつも赤チン色に染まってた」「ABCの替え歌懐かしい」と思い出を振り返る声が相次ぎました。


愛用者のため最後まで製造を決意

 小堺製薬の製造中止によって、国内の赤チン製造事業者はマーキュロクロム液「サンエイ-S」を扱う三栄製薬のみとなりました。代表の藤森博昭さんに取材したところ、今後「サンエイ-S」は「日本薬局方」の表記を外した新しいパッケージにリニューアルし、2020年いっぱいまでは原料がある限り製造し続けるといいます。すでに4月から出荷も始め、各店頭では順次入れ替えている段階。

 三栄製薬は戦後となる1953年に渋谷で創業、1958年に幡ヶ谷に工場を設置し、「サンエイ-S」を主力商品として製造販売してきました。最盛期となる1965年ごろは月10万本。現在は主力工場を長野県に移しながらも、赤チンは本社工場で月3000本ほど作り続けています。主な販売ルートは薬局への取り寄せ、Amazon.co.jpでのオンライン販売など。

「サンエイ-S」のパッケージの変遷。左から右へと新しくなる

 現在は医療機器、化粧品などが主力で、赤チンの売上は1%にも満たないとのこと。それでもリニューアルしてまで期限ギリギリいっぱい販売し続けるのはなぜなのでしょうか。

 「やはり60代・70代の赤チンファンのみなさんから、電話や手紙で『いつまでも作ってください』と激励をいただくからです。2020年12月の規制はしょうがないな、とは思いますが、これだけファンがいるのに作れなくなるのは大変さみしいです。それでも規制が始まるまでは愛用者のために製造し続けようと思います」(藤森さん)

参考:内藤記念くすり博物館「医薬品 いつもこどもの膝小僧に−マーキュロクロム−」北多摩薬剤師会「昔はこんな薬もありました 10」



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/18/news134.jpg 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  2. /nl/articles/2404/18/news025.jpg 生後5日の赤ちゃん、7歳のお姉ちゃんから初めてミルクをもらうと…… 姉も驚きの反応がかわいい
  3. /nl/articles/2404/18/news057.jpg 9カ月の赤ちゃん、バスで外国人の女の子赤ちゃんと隣り合い…… 人生初のガールズトークに「これは通じあってますね!」「ベビ同士の会話、とろけます」
  4. /nl/articles/2404/17/news037.jpg 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  5. /nl/articles/2404/17/news034.jpg 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
  6. /nl/articles/2404/18/news155.jpg 大谷翔平選手、ハワイに約26億円の別荘を購入 真美子夫人とデコピンとで過ごすかもしれないオフシーズンの拠点に「もうすぐ我が家となる場所」
  7. /nl/articles/2404/17/news179.jpg 「ケンタッキー」新アプリに不満殺到 「酷すぎる」「改悪」の声…… 運営元「大変ご迷惑をおかけした」と謝罪
  8. /nl/articles/2404/16/news192.jpg 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
  9. /nl/articles/2404/17/news129.jpg 「ハーゲンダッツ硬すぎ!」と力を入れたら……! “目を疑う事態”になった1枚がパワー過ぎて約8万いいね
  10. /nl/articles/2404/16/news175.jpg 「そうはならんやろ」をそのまま再現!? 「ガンダムSEED FREEDOM」のズゴックを完全再現したガンプラがすごすぎる
先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」