【7月11日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は10日、国有地に放火した罪で禁錮刑に処された農場主親子に恩赦を与えた。この親子に有罪判決が下ったことがきっかけで、2016年には武装した市民らがオレゴン州の鳥獣保護区を占拠し立てこもる事件も発生した。

 ホワイトハウス(White House)は、トランプ大統領がドワイト・ハモンド(Dwight Hammond)受刑者(76)および息子のスティーブン(Steven Hammond)受刑者(49)に恩赦を与えたと発表。両受刑者は、2人が牛の放牧権を保有していた国有地に放火したとして、2012年に有罪判決を受けていた。当初5年以上とされた禁錮刑に弁護団が異議を申し立て、判事はより軽い量刑を言い渡したものの、連邦検察当局の上訴で両受刑者の5年以上の禁錮刑が確定した。

 これに対しアモン・バンディ(Ammon Bundy)氏率いる武装集団が、連邦政府が一線を越えたとして抗議。オレゴン州のマルヒュア国定鳥獣保護区(Malheur National Wildlife Reserve)を40日以上にわたって占拠した。

 サラ・サンダース(Sarah Sanders)大統領報道官は恩赦の発表に際し、検察側の上訴は「行き過ぎ」であり、量刑は「不当」という見方を示した。そして「ハモンド親子に対する第一審の判決で判事は、同親子が地域社会で尊敬されていると指摘しており、5年以上の禁錮刑は『良心に衝撃を与える』ものであり、親子の行為の深刻性の度合いに『全く見合わない』」と指摘した。

 これまでに、父のドワイト受刑者は刑期のうちほぼ3年を終え、息子のスティーブン受刑者は4年間収監されている。

■恩赦権限を誇示するトランプ氏

 トランプ大統領は今回また、恩赦を与える自らの大統領権限を誇示して見せた。トランプ氏は自らが連邦検察の「魔女狩り」の被害者であると訴えており、これを強調する狙いがあるとする見方もある。

 これまでにトランプ氏は、選挙資金法違反で有罪となった保守派評論家ディネシュ・ドゥスーザ(Dinesh D'Souza)氏、移民への強硬な取り締まりで有罪判決を受けたアリゾナ州のジョー・アルパイオ(Joe Arpaio)元保安官らを恩赦した他、人種問題の絡んだ裁判で1913年に有罪となった黒人初のボクシングのヘビー級チャンピオン、ジャック・ジョンソン(Jack Johnson)氏に死後恩赦を与えている。

 トランプ氏はインサイダー取引事件で偽証した罪で有罪となり禁錮刑に服したライフコーディネーター・ クリエーターのマーサ・スチュワート(Martha Stewart)氏の恩赦や、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領の後任上院議員の指名をめぐる不正で有罪となったロッド・ブラゴジェビッチ(Rod Blagojevich)元イリノイ州知事の減刑も検討しているという。(c)AFP